WAK 日本海軍 特四式内火艇 カツ

今年もカードモデルの苦手な季節、梅雨がやってきた。梅雨から夏にかけての日本は東欧の夏とはケタ違いの湿度。制作も滞りがちだが、ここは水陸両用の涼しい感じの車両の紹介で涼を得ることとしよう。
今回紹介するのは、ポーランドのWAK社の新製品、日本海軍 特四式内火艇「カツ」だ。

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キタッ! まさかまさかのアイテムがカードモデルに登場! しかも、WAKは2012年最初も製品がこれという、もはやゴーギャンでなくても「WAKはなにを考えているのか、WAKはどういう層を狙っているのか、WAKはどこへ行こうとしているのか」と問いを発せずにはいられない。

特四式内火艇は、表紙の絵では魚雷を背負って海岸から発進して上陸してこようとする敵艦隊に肉薄、必殺の魚雷で上陸部隊を大混乱に陥れる決戦兵器のように見えるが、実際にはそういう用途のために作られたものではない。
日本軍では砂浜での物資揚陸に物資、兵員の輸送を大型発動艇(通称「大発」。相互リンク先の藻屑船渠さんで展開図公開中!)で行なっていたが、大発には大きな欠点があった。まず、天井がないので敵の攻撃下では積載している積荷や人員に損害が出る。そして、砂浜に乗りあげて積荷を下ろしても、基本的には自力で脱出できない。
ガダルカナル戦以降、制空権を失った日本軍の攻撃は常に敵の制空下で行わなければならず、揚陸には常に大損害が伴った。
そこで、積荷を空襲や榴弾砲の弾片から守るためにカーゴスペースを密閉型とし、さらに揚陸時に海岸にとどまらずにそのまま前進して密林に入ることで敵空襲を避け、さらに物資揚陸後は自力で海に戻っていけるという自分でなんでもしちゃう凄い揚陸艇として開発されたのがカツだったのだ。

では、なぜ揚陸艇が魚雷を背負っているのかというと、せっかくの水陸両用車じゃけんのー、魚雷積んでクェゼリン環礁にいる米軍艦隊に殴りこみをかけたるけん、という仁義なき「竜巻作戦」というのが突然立案され、そのためにカツに魚雷が装備されたのだ。
計画では夜間にこっそり潜水艦から発進したカツ車が、「まさかそんなところから敵はこないだろう」と警戒が疎かになっているサンゴ礁を履帯で乗り越え泊地に侵入、米軍艦艇に魚雷をぶっ放した上にカーゴスペースに積んだ爆薬で自爆、米軍壊滅、という壮大なシナリオとなっていたが、実際に訓練を開始すると、環礁のような荒れた地形を走ると履帯が外れる、走行音がとにかくウルサイ、そもそも音がしなくてもレーダー持ってる米軍にはバレバレじゃね? というグダグダっぷりで、そんなこんなのうちに米軍が移動してしまったので作戦は中止になった。とほほん。

さて、そんな、本来地味なのに、派手な活躍をさせようと思ったけど、やっぱり地味に終わった特四式内火艇「カツ」の姿をWAK公式ページの完成見本で見てみよう。

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んまー、毎度毎度、とってもしっかりと塗られた素晴らしい完成見本ですこと。お陰様で解説しようがありませんのよ。
九五式軽戦車→特二式内火艇→特四式内火艇と流用された足回りは、まぁ、見ての通り全然車体サイズに合っていない。そもそも、履帯の前後に車体がはみ出ているために極端に凹凸の大きい地形では車体がつっかえて履帯が効かず、このことからも本車が揚陸後の砂浜での走行のために履帯を履いているだけということがわかる。

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迷彩のせいで、なんだか前から見るとカッパみたいな顔つきだ。塗装は旧軍というよりも、なんだかNATO迷彩みたいになっちゃってるが、実際の竜巻作戦の時にはどんな塗装がされる予定だったのだろうか。自衛用の九三式十三粍機銃のディティールにも注目だ。

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そもそもが輸送用のカーゴなので、箱型の車体はとにかく大きい。なお、資料によるとこの車体はあくまでも弾片避けなので装甲板ではなく軟鉄製だったという。
そんなもんで本気で米軍泊地に殴りこむつもりだったのか。

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後付の2本の魚雷は、もちろん載せたまま敵艦にぶつけるわけではなく、発射機構があったという。でも、どう見たって前にスポーンと飛んでいくようには見えないので、スクリューを起動させたら押さえてるバンドを外して横に転がり落とすんだろうか。

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テクスチャは汚しのないスッキリとしたタイプ。版型がA3ということを考えると、パーツの大きさに驚かされる。この展開図だけ見ると、ハマーかなんかの現用装甲車みたいだ。

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組み立て説明書はラインによるクローズアップ方式。図版はなかなか豊富なようだ。なんだか第一次大戦のフランス軍突撃戦車サン・シャモンみたいな側面形状も魅力だ。

WAK 日本海軍 特四式内火艇 カツは陸戦標準スケール25分の1で完成全長44センチというビッグなキット。難易度は5段階評価の「4」(難しい)、定価は65ポーランドズロチ(2100円)とやや強気の設定。細くてこまかいわりに長大な履帯は80ズロチ(約2600円)でレーザー彫刻済みの別売りオプションが同時発売となる。

WAKの日本軍車両ということで、カードモデル通の方ならすぐにわかっただろうが、デザイナーはもちろん一式装甲兵車 ホキなどのマイナー日本軍車両のデザインで知られる”M. Rafalski”氏。氏は以前にも特二式内火艇 カミをリリースし、「紙で作るカミ」という日ポを股にかけたダジャレで日本中のモデラーを笑かしたことも記憶に新しい。
今回、氏の作品の集合写真が公式ページに載っていたので拝見させてもらおう。

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カツでけー! もはやこれは「カツ」は「カツ」でも、「BIGカツ」と言った感じだ。急にリーズナブルな感じになった。
ところで「カミ」は内火艇の「火」と、制作した三菱の頭文字を取って「カミ」になった、という話をなんかで読んだのだが、じゃあ「カツ」はなんなんだろうか。まさか、「敵に勝つ」って縁起かつぎ?


写真はWAK社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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カツ~!

遂に出てしまいましたね~!!
欲しいヨ~!!

しかし何でこんな色なんでしょうか?カミの時は水色でビビリましたが、シンプルに軍艦色が良い(爆)装備されていたのはQ基地だそうですが、お隣P基地の隊員によるとカニみたいだから「ガニ」と呼んでいたり、「色は緑だった~」との証言が有るそうなんで緑でも良いかなあ~?

個人的にはサン・シャモン突撃戦車に似てる・・・とか思っております。

Re: カツ~!

ナオさん、こんばんは!
返信遅くなり申し訳ございません。

いやー、出てしまいましたねー。とりあえず、艦載魚雷ってこんなにでっかいんだ! とビックリしました。
このデザイナーさん、次はどんなとんでもない方向に進んでいくのか、今から楽しみです。

なるほど、色は緑という証言があるんですね。サンゴ礁に溶け込むエメラルドグリーンなんて素敵ですね! 夜襲だから関係ないか。
ナオさんは是非、カツとLWSの日独水陸両用コンビを実現してください! ←(無茶過ぎ)
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