Orlik イタリア軍豆戦車 C.V.35 (L3/35)

巷では、正に卒業式シーズン真っ盛りである。別れの寂しさ、新しい学校への不安などで揺れる若人たちに、筆者はこの言葉を贈ろうと思う。
「カードモデル、楽しいから一緒にやろうよ」

さて、新年度「カードモデル新入生」の大量獲得のために本日紹介するのはポーランドOrlik社の新製品、イタリア軍豆戦車 C.V. 35 (L3/35)だ。

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相変わらず、東欧カードモデル未経験者が見たらこれだけでお断りされかねない、なんとも不安を煽る表紙だ。
だいたい、これはどこなんだ。ナチのUFOで火星に進出したイタリア軍がマーシャン・ウォー・マシーンと戦っているのか。大阪では何体か倒したらしいぞ。

C.V.35(L3/35)は、今更説明するほどでもない超有名車輌だが、一応簡単におさらいしておくと、戦間期、軍事費の大きく縮小された各国陸軍は「戦車欲しい、でも予算ない」状態に突入。そこで、イギリスのカーデンさんとロイドさんが「じゃあ、安い戦車を作ればいい」とピコーンとひらめいて、2人乗り、重量3トン、武装は機関銃、装甲はちょっぴりというお手軽戦車を開発した。軍縮により、爪に火を灯すような耐乏生活を強いられていた各国はこの「カーデン・ロイド豆戦車」に飛びついた。
本家イギリスでは機関銃塔を載せた「ヴィッカース軽戦車」に発展、ソビエトではT-27、ポーランドではTKS、そしてイタリアでは「快速車輌(Carro Veloce/カーロ・ヴェローチェ)」、すなわちC.V.として大量生産が行われる。C.V.35は、その中でも35年型の意味だ。
後にイタリア軍は「最高時速40キロじゃ、それほど高速でもないや」と思い直してカテゴリー分けが変更され、「軽」の頭文字である「L」にカテゴリ分けされたC.V.は重量を表す数字を付けて「L3」に名称が変更となる。ちなみに中戦車の「中」は「M」、「重」は「P」だ。
戦間期のパレードの花形だったカーデンロイド系豆戦車だったが、実戦ではこれがさっぱり役にたたなかった。だって、武装が機関銃で、装甲は下手すりゃ重機関銃でバリバリ撃たれると穴開いちゃううんだもん。あまりに車体が小さいために強化は不可能で、イギリスのヴィッカース軽戦車はダンケルク敗退と共に消滅(北アフリカには少し残ってた)、ソビエトのT-20は開戦前に「悪路走破性能が低すぎて、ソビエトじゃ使い道なし」としてどこかへ消滅(2000輌も作ったのに、本当にどっかいった)、ポーランドのTKSはドイツ電撃戦の「やられ役」になってしまった。
生産数は資料によってまちまちだが、1500~2000輌が生産されたL3戦車だったが、活躍らしい活躍をしたのは、まともな火器を持たない(前装銃や火縄銃まで現役だった)エチオピア軍を相手にしていた時まで。後は、連合軍の本気の戦車に追い立てられて全ての戦場で敗退した。イタリア降伏後は多数がドイツ軍の手に落ちたが、なんでもかんでも自走砲にしちゃうドイツ軍でも、さすがにL3の改造はしなかった。
結局、カーデンロイド系列で最も成功した車輌は、英軍が装備していた非武装のユニバーサルキャリアであった。

そんな、いろいろとトホホな車輌が、Orlikデザイナーの手でカードモデルとして蘇った。
では、さっそく公式ページの写真で完成見本を見てみよう。

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おおー。なかなかカッチリとした好印象の仕上がりだ。それにしても、どうしてイタリア人ってのはフェンダーをケチって途中でぶった切ってしまうのだろうか。
L3の車体は溶接組立のものとリベット組み立てのものがあるが、キットはリベット式となっている。L3系列は/33、/35、/38に大きく分かれる(それぞれ1933年型、35年型、38年型)が、過去の日本語の資料では「/33と/35は主に武装の違いでほぼ同型でリベット組み立て。溶接車体なのが/38」とよく説明されていた。まぁ、溶接車体とリベット車体があれば、普通はそういう経緯だと思うもんだが、最近の資料では「溶接車体が/33。溶接が大変なんで、リベット式にしたのが/35。サスペンションが板バネからトーションバーに変わったのが/38」とされている。溶接からリベット式に戻っちゃう車輌なんて初めて聞いたぞ。

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このキットは/35と/38のコンパチキットとなっており、二種類の足回りが組めるようになっている。
左写真が/35、右写真が/38の足回りだ。作例は多分2個組むのが面倒なので左右で足回りが異なっているが、/38のトーションバーサスペンションは車内の構造も異なるのでこのようなハイブリット車体はおそらく実在しないだろう。
なお、テクスチャも全てで4種類から選べちゃう嬉しい仕様となっているようだ。

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車体が小さすぎて装備はこんなところに。左側にあるものは履帯修理用のジャッキだが、たった3トンの戦車にこんなゴツいジャッキが必要なんだろうか。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。部品貼り付け位置やノリシロが、うっかり見えてしまった時のダメージを最小とするように車体色となっているのが最近のトレンドだ。左ページ右下部分のヤケクソ気味な予備領域もおもしろい。

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組み立て説明書は面をグレーに塗ったラインによるクローズアップ方式。左ページ中ほどを見ると、サスペンションの構造がイージーバージョンとリアルバージョンから選べるようになっていることがわかる。車体が小さいので、かなり工作は細かいようだ。

Orlikの新製品、イタリア軍豆戦車 C.V.35 (L3/35)は陸戦スケールの25分の1で全長わずか12.5センチというなんとも小柄なキットだ。難易度は書いていないが、この小柄な体にぎゅっと詰まったディティールを完成させるのには、それなりのテクニックが要求されるだろう。定価は25ポーランドズロチ(約800円)、またレーザーカット済み芯材用厚紙が9ズロチ(約300円)で同時発売となる。

L3はイタリア軍装甲車輌を語る上で、忘れることのできない存在である。と、言うか、L3を忘れたらイタリア軍装甲車両について語ることなんてほとんどなくなってしまう。なにしろ、イタリアが戦争に突入した時点で一説には4分の3が、L3系列の豆戦車だったのだ。
ちなみに、時々1939年のイタリア軍戦車保有数が「40輌」などのとんでもない数字になっている資料があるが、これはL3系列が戦車と認められず、数に含まれていないからだ。とほほ。
そんなイタリア戦車史で重要な位置を占めるL3だが、なかなかこれまでカードモデルキットには恵まれず、過去にはスペインの「ALCAN」というメーカーがなんとA3版で8分の1というビッグスケールのL3をリリースしたことがある限りだが、このキットはショップで在庫を見たことがない。というか、スペインのカードモデルなんて基本的にノーチェックだった。すまん。
イタリア軍ファンなら、今回やっと発売されたL3をMODELIKのM11/39、M13/40と並べるのもいいだろう。また、MODELIKのT-27、WAKの九四式軽装甲車と並べてみるのもおもしろそうだ。



画像はOrlik社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

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