Orel フランス軍装甲巡洋艦 Chanzy

カードモデルの最新情報をお伝えする、日本で最もHOTなカードモデルブログ!
を、吹聴する割には去年の新製品の紹介をいまだにやっている当ブログ。本日も、ウクライナOrel社の去年の新製品から、フランス軍装甲巡洋艦 Chanzy を紹介する。

111_199.jpg

カードモデルの艦船キットはプラモデルの艦船よりも微妙な艦が数多くリリースされていることはカードモデルファンの間ではすでに常識だろう。中でも、Orel社の日露戦争のロシア艦シリーズは、「誰もいないところで大暴れ」といった感じの存在感を放っている。
しかし、どうでもいいようなマイナーアイテムをキット化することにかけては日本人の想像をはるかに超える東欧カードモデル勢が、この程度で飽き足たろうはずがない。
昨今のカードモデル界を賑わしている、もう誰がこんなキット欲しがるのかさっぱりわからないマイナーさのあまり、むしろ欲しくなってしまうドマイナー路線、それこそが今回紹介するChanzyも属する超マイナーリーグ、19世紀フランス装甲艦隊なのである。

当コーナーでは、以前にMODELIK社の装甲艦「LA HOCHE」を紹介し、その丸っこい形でお茶の間に笑いを提供したが、今回Orelから同時代の装甲巡洋艦がリリースされたのは、「MODELIKだけにマイナー艦路線を独占させてたまるか」というウクライナ魂の発露であろうか。とか言って、実は設計者が一緒の「自作自演」だったりするので、あまり余計な事は書かないほうがいいだろう。

いささか前置きが長くなりすぎてしまったようだ。
今回はアイテムの概要紹介の前に、まず公式フォーラムから完成見本写真を見ていただこう。

01_585.jpg

うーん、すごい形だ。ジュールヴェルヌの小説に出てくる超兵器みたい。
ひたすら丸っこかったLA HOCHEに比べてスラリとした船体は高速性能を暗示していると言えるだろう。
以前の記事の繰り返しとなってしまうが、重装甲、重武装の「装甲艦」は凌波性が低く、そもそも速度が遅く航続距離が短いという欠点があった。
フランスとしても、地中海を守るだけなら、装甲艦をプカプカ浮かべておけば良かったのだが、そうはいかない事情があった。
みんな忘れているかもしれないが、フランスは東洋にベトナムなどの植民地を持っており、それを守らなければならなかったのだ。
航続性能に優れた「巡洋艦」という艦種はあったが、この艦種は装甲が薄く、主砲も小さい。もし、東洋の国家、例えば清国や、あるいは最近台頭してきた小国-日本国が装甲艦の建造に成功するか、あるいは憎き敵国ドイツあたりが装甲艦を譲渡したら? フランスには装甲艦が守る敵国水域に殴りこみをかけることのできる、凌波性に優れ、それなりの防御力、攻撃力を持った艦が必要であった。
そこで建造されたのが、装甲艦よりも小さく装甲、主砲火力では劣るが、船体が細長く速度に勝り、凌波性に優れ長距離航海に適した「装甲巡洋艦」である。

フランスは1888年に世界初の装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の建造に着手する。
しかし、このデュピュイ・ド・ロームは排水量が6600トンもあり、ちょいとデカ過ぎた。こんなデカい艦を何隻も建造する余裕のないフランス海軍は計画を縮小、「量産型装甲巡洋艦」とも言うべき、アミラル・シャルネ級(4600トン)4隻が着工される。
当然、前級に比べ装甲は薄くなり副砲も163ミリから138ミリに小さくなった(主砲は194ミリのまま)が、それでも部分的装甲しかもたないそれまでの「防護巡洋艦」よりは十分に強力であった。
今回リリースされた「Chanzy」(シャンジー)はこのアミラル・シャルネ級の3番艦で、普仏戦争時の陸軍将軍、Eugene Alfred Chanzyにちなむ。巡洋艦に陸軍軍人の名前がついてしまうのが陸軍国フランスらしいと言えばフランスらしいが、シャンジー将軍は植民地アルジェリアの総督を務めたこともあり、そのために世界のフランス領を守る装甲巡洋艦の名前として選ばれたのかもしれない。
1894年12月に完成したシャンジーは1896年、クレタ島で発生した大規模な反乱を鎮圧するための国際艦隊の一員として派遣される。
その後、なんの記録もないままに地中海で薄ぼんやりと過ごしていたシャンジーは1906年、東洋艦隊に編入される。東洋では日清・日露の戦いを経て日本の存在感がぐんぐんと増していた。
今こそ快速を活かす時! と勇躍東洋へ向かったシャンジーだったが、1907年5月20日、濃霧と波浪の中で上海南方の舟山群島に入り込み座礁。10日間に渡る脱出に向けての試みも失敗に終わり、6月12日に艦は爆破処分された。
なんでこんな地味な艦をわざわざキット化するんだか疑問だが、考えてみれば19世紀の装甲艦なんて他の連中も同じぐらい地味なんで仕方ない。

02_127.jpg03_169.jpg

さて、キットのテクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。Orelの艦船キットらしい細かいパーツの大行列が圧巻だ。

05_802.jpg

組み立て説明書はグレーで影をつけたライン表現によるクローズアップ方式。
右ページの上下の図で、シャンジーの特異な平面/側面形を見ることができる。喫水線下に比べて甲板がなんかの間違いのようにぎゅっと絞られているのはこの時代のフランス艦の特徴で、浮力を確保しながら装甲が必要な上部の投影面積を小さくするという効果があったが、甲板が狭いために上部建造物が高層化しやすく、重心が高くなる(転覆しやすい)という欠点もあった。

フランスの人だって、こんな地味な艦覚えてるか疑わしい感じのフランス軍装甲巡洋艦 Chanzy は200分の1で完成全長約50センチというスラリとした艦型。難易度は3段階評価の「3」(難しい)、定価は162ウクライナフリブニャ(約1800円)となっている。
Orelはこれまで、アクセサリーパーツを自社では提供していなかったが、シャンジーではレーザーカット済み厚紙用芯材(95ウクライナフリブニャ、約1000円)とエッチングパーツ(186ウクライナフリブニャ、約2100円)が同時発売となる。

306_0_.jpg

エッチングパーツは本体よりも高い定価となっているが、この写真を見るとそれだけの価値は十分にあると言えそうだ。

当キットは、19世紀末のフランス海軍ファンモデラーには見逃せない一品であることは言うまでもないだろう。
いつの間にか終わっていたフランス艦隊の黄金時代。その一員であったシャンジーを作ることで「あー、フランス海軍が強い時代なんてあったんだー」という感慨に耽るのもいいだろう。MODELOKより発売されている元祖装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」や、Orelから過去にリリースされた同時代の防護巡洋艦「ラヴォアジエ」と作り比べてみるのも面白そうだ。



キット画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

また,マニアックな

これまた,凄まじくドマイナーな船がリリースされちゃいましたね。
丸いんだか細いんだか良く分からん船体の持ち主で,かなりー魅力的ではあるのですが,ここまで縁のない船だと完成させる自信がモリモリと失せていきます。
モデルシップJPさんで伺ったところ,ポーランドのカードモデル・デザイナー達は,売れる売れないという価値観で商品,いや作品を作らないそうです。

ものづくりとしては正しい姿勢かもしれませんが,消費者としてはどうせだったら,もう少し,ほんのもう少しでいいから感情移入しやすいラインナップで攻めてきてもらいたいものです。
フランスの,しかも19世紀の装甲巡洋艦はあんまりだ・・・。

Re: また,マニアックな

azukenさん、今晩は!
いや、ほんとに、もう「道を間違えている」とか、「行き止まりだ」とか言うよりも、もはや「車止めを越えている」「フェンスを突き破った」という感じのラインナップが素晴らしすぎて、目眩がする思いです。
いくら売上度外視とは言え、なにかこの艦を選ぶ根拠みたいなもんはあったんでしょうか。他のデザイナーと被るのがイヤで、自分以外は絶対に選ばない艦にしたとか。それにしたって、まだ先に手をつけるべきものはいくらでもあると思いますが……

やはり日本人としては、三景艦とか、戦艦薩摩とか、金田中佐の50万トン戦艦なんかを先にキット化して欲しいと思うのでありました。

作品化の基準?

modelship.jpさん曰く,日本のメーカーは船の人気で製品化の基準とするが,ポ国のデザイナーさん達は歴史的?な事実を重んじるそうです。
例えば,昨年末に発売された加賀では,開発前にJPさんにも「日本の空母を製品化するには何が良いと思う?」という打診が来たので,「やっぱ赤城でしょ。日本じゃ鉄板よ,鉄板!」と答えたそうです。
しかし,出来上がってきたのは何と加賀!これ如何に?とデザイナー氏に問い合わせたところ,「赤城は元が巡洋戦艦でしょ。加賀は元が戦艦だから,こっちの方がいいに決まってるよ!」と言われちゃったそうな・・・。

もはや,日本的な開発観念では永遠に分かりあうことのできない深~い溝を感じたそうです。
異文化理解の難しさを,趣味世界の袋小路であるぺパクラから感じるとは思いませんでしたよ。

Re: 作品化の基準?

なるほど! それで赤城じゃなくて、加賀なんですね! もとが巡洋戦艦じゃなくて戦艦だから!!
…………全然意味がわからないよ、ママン……
「日本は日露戦争で憎きロシア帝国をやっつけたポーランドの友人です!」と言いながら、日本海軍の艦船キットは太平洋戦争の艦船ばっかりだし。わたしら、第二次大戦では枢軸国だったんですけど?

考えてみれば、ペパクラは完全に実用性ゼロの、純粋な「趣味の世界」なので、返ってお国柄や価値観が出るのかもしれませんね。
そして、かつては鉄のカーテンの向こう側だった国々から届く新製品情報で一喜一憂できるというのも、なんともカードモデル万歳、インターネット万歳なのであります。
azukenさん、耳寄りな情報、ありがとうございました!
展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード