Orel ソビエト製長距離バス ЗиС-127

相変わらず寒波の続く日本列島だが、カードモデルはもともと寒い冬に閉ざされる東欧圏の、暗くて長い夜の友として発達したような気がするホビーだ。ここは一つ、我々も寒さにかじかむ手でカードモデルをとことん楽しもうではないか。
そんな心意気で今回紹介するのは、ウクライナOrel社の過去の新製品、ソビエト製長距離バス ЗиС-127だ。

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最近、耐性がついてきて、これぐらいのアイテムでは驚かなくなってきた。インフルエンザの耐性もこれぐらいついて欲しいものだ。
なお、まるで携帯用コンテンツを何も考えずにスマートフォンに移植した時のような、謎のシマシマゾーンが表紙左右についているのは、このキットがA3リリースなのに表紙絵がなぜかA4サイズだからだ。バスのキットなんて、A3じゃないとパーツがおさまりきらないことは途中で気が付きそうなもんだが、やってしまったものはしょうがない。

戦前、ソビエトではトラックシャーシにバスボディを載せて「バスですよー」と言い張っていたが、戦後いつまでたってもこれというのは、ちと情けない。トラックシャーシはサスペンションが固いのでケツが痛いし。そこで1951年、この手の面倒な試作をいつも押し付けられるスターリン記念工場、すなわちЗиС(ZIS)に「近代的な長距離バスを急いで作れ」との無茶な要求が飛んだ。
重車両ならおまかせのZISは、「あいよー」と1953年にE-127という試作車を完成させ、トライアルに送る。
その結果、E-127は「全然近代的じゃないよ」という結論に達する。たぶん、またトラックシャーシの転用をやったんだろうな。
慌てて再設計が行われ、E-127はボディとインテリアが変更され、エンジンはガソリンからディーゼルに変更、ステアリングにはソビエト車輌としての初のパワーステアリングが搭載され、さらに前後輪に圧縮空気式の独立ブレーキが備え付けられた。
もはや原型をとどめてないこの改良型は、「うん、いいね」ということで1955年(56年とする史料もある)から4年かけて851輌が生産され、主に首都空港から地方都市までの長距離コースで運用された。

そんな、1950年代~60年代にソビエトに行ったことのある人には思い出深いが、それ以外の人には全くわからんZiS-127の姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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ドアがなくてドッキリするが、ソビエトは車は右側通行だからだ。床下のトランクスペースがいかにも長距離バスといった感じだが、真ん中2つには予備燃料タンクを入れているのだろうか。
一部の評判では、アメリカの長距離バス、例えばジェネラル・モータースカーのPD4103あたりのもろパクりと言われることもあるZiS-127だが、まぁ、アルミボディの長距離バスなんて、正直どうやっても似たような形状になるじゃん。なるよね? ってことで、ここでは不問としたい。
ちなみに、ZiS-127にはサブタイプがあり、初期型は窓が6つ、トランクスペースは三分割だった。また、キットでは乗降口は1つだが、乗降口の2つある「市バス」型も存在した。

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ZiS-127を特徴付けているのが、この額の文字通りの「ヘッドライト」だ。これは。凹凸の激しいロシアの悪路を走行するための装備だろうか。
ちなみにこのキットのバスの行き先表示は、ソビエト首都モスクワからラトビア首都(当時ソビエト連邦)のリガとなっている。それって、800キロぐらいあるが、大丈夫なんだろうか。
なお、ZiS-127は暖房、換気システムはある(なかったら死んじゃう)が、たぶん微妙な感じの映画を延々と流すテレビモニターなどはないだろう。

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次にひっくり返してフロント部分のシャーシのメカニズムも見てみよう。スペアタイヤって、こんなとこに入ってるのね。
スペアタイヤを入れるためにフレームが少し曲げてあるのがオモシロイ。右上の箱のようなものは、乗降用ステップの裏側だ。

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一方、こちらはリア部分のディティール。あっさりした構造ながら、180馬力エンジンも再現されていることがわかる。このエンジンと短い排気管の組み合わせのために、ZiS-127は「ひゅーん」と言った感じの独特のエンジン音を立て、「ジェット」の愛称で呼ばれるようになった。
ところで、各扉が思いっきりテープで止めてあるのだが、これって試作だからこうなんだろうか、それとも実際のキットもこういう構造なんだろうか。わかんないからフォローのしようがない。

ソビエトを代表する長距離バス、ЗиС-127は陸戦スケールの25分の1で全長約40センチのビッグなキット。定価は195ウクライナフリブニャ(約2200円)と、Orelのキットとしては高めの設定だ。しかし、難易度は三段階評価の「2」(普通)とやや控えめとなっており、ソビエトバスファンのモデラーには、見逃せない一品と言えるだろう。

ちなみに800輌以上が作られたZiS-127だが、現在は1輌だけがエストニアに現存している。この車輌は数年前に残骸に近い状態で発見されたものを、エストニアの「BusLand」という、バス修理専門メーカーがフルレストアしたものである。同社ではZiS-127のレストアの様子をサイトにアップしているので、キットの制作やディティールアップの参考にすると良いだろう。
また、バスオーナーの読者は「we care for your bus」(我々があなたのバスをお世話します)というキャッチコピーを掲げているBusLandに、自身のバスを託してみるのも良さそうだ。

このキットを組み立てることで、アエロフロートでモスクワに着陸して空港からZiS-127に乗り、偶然隣に乗り合わせた、なぜかロシア訛りの英語を話す妙に目つきの鋭い「観光客」に、ソビエト訪問の目的や、滞在中に会う予定の人物などを根掘り葉掘り聞かれるソビエトの旅に思いを馳せるのも楽しいだろう。



キット画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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