Orel イギリス軍水雷艇 "Boxer"、ロシア帝国試作機 "КПИ-5"

そろそろポーランドのカードモデルメーカー各社から、2012年新製品の情報が届き始めた。本日は、そんな興味深いアイテムの数々は差し置いて、うっかりと紹介するのをずっと忘れていたウクライナOrel社の過去の新製品2品を紹介しよう。
まず紹介するのは、イギリス軍水雷艇 "Boxer"だ。

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なぜ、紹介がこんなに遅くなったのかというと、正直、書くことがあまりないからだ。
Boxerは、英軍の「27ノット級」水雷艇の1隻として1894年に建造された。1894年といえば日本では日清戦争の年。このころの軍艦は速くても最高速度20ノット前後の船が多かったので、27ノットは確かに速い。Boxerは29ノットを出したこともあるそうだ。このクラスは水雷艇としては大きい方で、艦首の12ポンド砲を射ちまくりながら大型艦艇に肉薄し、衝突寸前に横っ腹を向けて艇体後方の魚雷発射管2本から必殺の魚雷をお見舞いする、という男らしい艦艇だ。
スペックは大変男らしいのだが、イギリスは日清戦争、日露戦争にはもちろん参戦してないので魚雷を敵にぶっ放す機会はなく、Boxerは地中海艦隊の一員として波をチャプチャプかきわけていた。
第一次大戦時以前にこのクラスはすでに老朽化しており、「27ノット級」3隻のうち”Ardent”が1911年、”Bruizer”は1914年に屑鉄として売却されている。
1隻だけ残ったBoxerだが、第一次大戦ではもちろん艦隊決戦には使用できず、ポーツマス軍港の防衛艦隊として雲をすいすい追いぬいていた。
1918年2月8日、Boxerは嵐の中で病院船"St. Patrick"と衝突。砂州に乗り上げようとするも間に合わずにワイト島沖合に沈んだ。おしまい。

そんな、とっても地味な軍艦、Boxerの姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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いくら艦が地味だからって、作例までこんな地味にしなくても……
艦首の12ポンド砲、艦尾の6ポンド砲のプラットフォームの周りに防護板のようなものがあるが、写真で見るとこの砲座は吹きさらしとなっており、表紙画像をよく見ると手摺に防水キャンバスが巻いてあるだけかもしれない。
この時代の水雷艇特有の、亀の甲羅のような「タートルバック」形状の艦首が高速性を暗示すると共に、船そのものの形状に水雷のような印象を与えているのがオモシロイ。

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テクスチャは汚しのないすっきりしたタイプ。電信柱のようなひょろんとしたマストには無線の空中線をきっちりと張って精密感を出したいところだ。

Orelのとっても地味なイギリス軍水雷艇 "Boxer"は、スケールは意外にも小艦艇スケールではなく艦艇統一スケールの200分の1でのリリース。完成サイズは全長30センチと手頃なサイズとなる。難易度は3段階評価の「2」(普通)、そして定価も60ウクライナフリブニャ(約700円)とお手頃な設定なっており、艦船初心者にもオススメできる内容だ。

さて、こんだけで終わるとなんだか寂しいので、本日はもう一作紹介しよう。
「魚雷」つながりで紹介する次のキットもウクライナOrel社の過去の新製品。本日二つ目のアイテムはロシア帝国試作戦闘機 "КПИ-5"だ。

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…………なんだ、これ。
こういうワケわからんアイテムが突然リリースされるのがカードモデルの醍醐味、英語で言うとビッグ・ダストだ。
ほとんど手に入らなかった情報を集めると、КПИ-5は「キエフ科学技術研究所」(Киевского политехнического института)、略してКПИ(KPI)で1917年に開発された試作機であり、開発者の名前を取りКасяненко(カシャネンコ) No5とも呼ばれる。
1905年、ロシア帝国でも飛行機作らなきゃ! と思い立った帝国政府によりKPIに設立された航空機部門には、後に世界初の4発機を製作するイゴール・シコルスキー、ソビエト軍の水上機を多数デザインすることになるディミトリ・グリゴロビッチなどロシアを代表する航空技師が集められていた。
この錚々たるメンバーに混じって航空機を設計したカシャネンコ兄弟は、No4までは普通の飛行機を設定していたのに、突如として「空飛ぶ魚雷型の飛行機を作ったら、超絶操縦性能が得られる上にバカ受けだ!」と思い立った。きっと、フランス軍が「これ、いらねーや」とたくさんくれたSPAD A.2には負けられない、と思ったのだろう。
そんなイカすアイデアに沿って、胴体真ん中のエンジンから後方に延長軸を伸ばし、十字尾翼の後ろでプロペラを回すという、クリムゾン・スカイズもびっくりなオモシロ飛行機が完成した。
他にも、ピボットを軸に主翼取り付け角がキコキコと変わるんですよ、凄いでしょう、といった、もうこれ以上笑かさないでください、お願いします、といった新機軸が多数取り込まれたКПИ-5は、驚いたことに一応飛んだが、しばらくして後に着陸時に尻をぶつけてぶっ壊れた。どうやら、重心計算が怪しかったらしい。
その直後ロシア革命が勃発し、KPIの業績は全て失われてしまった。カシャネンコ兄弟のその後についても何も史料がない。

では、そんないろんな意味でスゴい飛行機、КПИ-5の特異な姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

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なるほど、まさしく「空飛ぶ魚雷」と呼ぶにふさわしいスタイルだ。機首にある棒は7.7ミリルイス機関銃(資料によってはブローニング)。この配置だと、パイロットがぶりぶりと弾を撃ちまくって弾切れになっても弾倉交換がしやすいという利点があった。でも1門じゃショボくない?
あと、実戦で使う場合にはこのいかにも壊れやすそうな尻をどうすんだろう、とかいろいろツッコミどころの多い飛行機だ。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。丸いのがいっぱい並んでいるのは、たぶんノームローンエンジンのシリンダーの放熱板だ。
試作機なのでマーキングなどはないが、実戦風マーキングを施してレッドバロンとの空中戦を想像するのも楽しそうだ。

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組み立て説明書はラインによるクローズアップ方式。機首の中に入る機銃にルイス機銃の特徴である円盤型弾倉が載ってないので、このキットはブローニング説を採用しているようだ。機首の内装は意外と細かく、エンジンからプロペラまで入っている長ーいシャフトも再現されていることがわかる。

こんなキットが出なければ、多分、一生その存在を知らなかったであろうOrelのロシア帝国試作機 "КПИ-5"はスケールは航空機統一スケールの33分の1、こってりした感じの内装の割には難易度は3段階評価の「1」、定価は42ウクライナフリブニャ(約500円)と妙に控えめな設定だ。

19世紀のイギリス軍水雷艇と、ロシア帝国の試作戦闘機。どちらも19世紀イギリス海軍とか、ロシア帝国空軍とかのファンとかなら、ま、見逃せないキットだろう。



キット画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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