GPM アメリカ軍観測機 Douglas O-2H

先日、当コーナーではMODELIKからリリースされた、なんかよく知らない地味な飛行機、アメリカ海軍練習/偵察機 Thomas-Morse S-5 のキットをを紹介したが、MODELIKと共にポーランドカードモデル界を支えるブランド、ポーランドGPM社がMODELIKのマイナー飛行機路線の独走を許そうはずがない。MODELIKのS-5にまるでぶつけるように同時期にリリースされた、GPMのなんかよく知らない地味な飛行機のキット、それが今回紹介するアメリカ軍観測機 Douglas O-2H だ。

O-2H_1.jpg

なんだか化学式みたいな名前だが、O-2の「O」というのは「Observation Aircraft」、すなわち「観測機」を表すカテゴリー記号である。「観測機」というのは今では聞かないカテゴリだが、砲撃の着弾などを観測するための軽飛行機で、偵察機よりも、より地上部隊と密接な行動が求められる機種だ(実際には、偵察機や連絡機と兼用なことも多い)。
なにしろ、地上部隊の「ちょっと見てきて」の要請に応じて、「あいよ」っとホイホイと行動できなければいけないので、求められることは離着陸距離が短いこと、不整地での運用ができること、また移動が頻繁な最前線と共に行動するので整備が容易なこと、などである。逆に、長距離飛行や高速性能は求められない。むしろ、じっくりと観察するためには失速速度が遅い方がいいくらいだ。

O-2は、その名の通り米軍で制作された観測機で2番目となる。1番目のO-1はカーチス製だったが競争試作でダグラスのO-2が制式採用となった。
O-2Hは原型に大規模な改修を加えたもので胴体が新設計のものとなり、降着装置とエンジン周りが改良され、主翼配置が上翼が前に出る「スタッガーウィング」と呼ばれるスタイルに変更となった。どの辺に原型が残ってるんだ、これ。
O-2のサブタイプとしては対メキシコ・中華民国向け輸出型のO-2MCというタイプがあり(厳密には「O-2MC」から「O-2MC10」までさらに細かいサブタイプにわかれる)、国産機の生産能力のない両国では貴重な航空戦力として多目的に使用された。
また、せっかくなんでちっこい爆弾を積んだ軽攻撃機仕様の「A-2」も開発されたが、こちらは初代観測機トライアルに負けたカーチス社がO-1を改装したA-3にトライアルで負けてしまい、「初代攻撃機」との二冠とはならなかった。
なお、初代攻撃機のトライアルが「A-2」と「A-3」だったら「A-1」はどこにいったのかというと、うっかり負傷者輸送機を「ambulance」だから、ってことで「A-1」と名付けてしまったために攻撃機A-1は存在しない。いい加減なもんだ。

ちなみに、カーチス社はA-3のためにいろいろとやった改造をO-1にも施したら、なんか性能良くなったんでO-1もやっぱり採用ということになった。いい加減なもんだ。また、O-1/A-3は海軍にも採用されてA-3ヘルダイバー(初代)となり、さらに戦闘機型も開発されF8C「ファルコン」となった。さらに海兵隊もこの機体を採用、やめときゃいいのに観測機型に「O2C」と名前をつけたもんで、「ダグラスO-2」と「カーチスO2C」は全然別の機体、というわけわからんことになった。
せっかくなんでついでに書いておくと、2005年の映画、リメイク版「キングコング」でエンパイヤステートビルに登ったコングを攻撃するために出撃したのがO2Cヘルダイバー(もしくはF8C)である(当然ながらCGとレプリカの合成で、実機ではない)。
なお、オリジナルの1933年版「キングコング」でコングを攻撃したのも、O2Cヘルダイバーだ、と大抵の史料には書かれているが、コングを攻撃するために大きくバンクを取るシーンで上翼の形状がヘルダイバーの特徴である後退翼ではなく、真っ直ぐなのがはっきりと見られるので別の機種である(実際に何なのか確定はできなかった。あるいは民間機を米軍塗装にしていただけかもしれない)。ただし、滑走路から飛び立つシーンではO2Cヘルダイバーのようにも見える。また、コングに肉薄するシーンでは「魔術師」ウィリス・オブライエンの手によるミニチュアワークのコマ撮り特撮となるが、実写シーンでは上翼の方が長かったのに模型は上下の翼の長さが一緒である。

O-2Hは、なにしろただでさえ観測機という地味な機種の上に、第一次大戦後に採用され第二次大戦前に退役したので派手な活躍は全くない(中華民国空軍のO-2MCは日本軍と戦っている)。
なお、長らくO-2は一切現存していない、と考えられていたが、1933年3月16日に士官候補生チャールズ・D・ロジャースが夜間単独飛行の訓練のためにテキサス州ケリーフィールド飛行場から飛び立ち、不幸にも低く飛びすぎて丘に衝突したO-2H「29-163」の残骸が、なんとそのまま放ったらかしにされていたのが2011年になって発見され、この残骸をもとに研究が進んでいるそうだ。

さて、それではこの地味なO-2Hの姿を公式ページの完成見本で見てみよう。

O-2H_2.jpgO-2H_3.jpg

飛行機は地味だが、塗装は派手だ。戦間期の米軍機は、この派手派手塗装も楽しみの一つといえるだろう。
いかにも離着陸性能の良さそうな長大な主翼と、なんだか手抜きっぽい尾翼にも要注目だ。
なお、塗装は第91観測中隊7番機、1930年頃、場所は不詳だ。

O-2H_5.jpg

後方から操縦席、観測員席にクローズアップ。顕著なスタッガーウィング(食い違い翼)が観測員の視界を広くしていることがよくわかる。機体内部の骨組みなどは内壁に印刷されたテクスチャでの表現だが雰囲気はいい。

O-2H_6.jpg

テクスチャは汚しのないスッキリとしたタイプ。ミリタリーものを作っていると、ちょっと目にしない色味の展開図だ。

なんかもう、どういう層を狙ってリリースして来たんだかさっぱりわかんない感じのGPM アメリカ軍観測機 Douglas O-2Hは航空スケールの33分の1で全長27センチという手頃なキット。でも主翼は長大なので幅は36センチもあるぞ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は30ポーランドズロチ(約1000円)となっている。MODELIKのS-5も難易度は「普通」だったので、マイナー機好きなら是非とも両機を作り比べてこの対決の結果を判定してもらいたい。

特撮ファンならO-2Hを4機作り、1機を手に持って狭い足場でカクカクとコマ撮り風に動くことで見せ場のさっぱりなかったダグラスO-2HがカーチスO2Cの代わりにキングコングと戦っている様を夢想するのも楽しそうだ。
なお、その際には転落には十分に注意していただきたい。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード