MODELIK イギリス製レーサー機 SOPWITH SCHNEIDER 他1点

先日、当コーナーで第一次大戦のアメリカ海軍練習/偵察機、S-5の紹介を行ったが、実は去年の年末ぐらいに、複葉機キットのリリースラッシュがあった。あったけど、紹介してなかった。なぜなら、複葉機にあんまり詳しくないからだ。でも、よく考えてみたら他のジャンルだってあんまり詳しくはないので、ここは一つ無茶を承知で紹介してみよう。
そんなわけで今回紹介するのはポーランドMODELIK社の2011年25番目のキットとなる、イギリス製レーサー機 SOPWITH SCHNEIDERだ。

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第一次大戦で抜群の運動性能を発揮した軽戦闘機「キャメル」で有名な「SOPWITH」(ソッピース)はトーマス・ソッピースが設立した会社である。アイスホッケーのヨーロッパ選手権でナショナルチームを優勝へ導いたこともあるスポーツマン、ソッピースは飛行機を一目見て惚れこんでしまい、ただちにハワード・ライトという人が作ったブレリオ単葉機みたいな感じの飛行機を購入する。しかし、まぁ、操縦はなんとかなるだろう、と飛んでみたら300メートルほどで落っこちた。幸い、怪我は大したことなく、機体にも大きな損傷はなかったので1月ほど練習して1910年11月にソッピースは王立航空クラブから免許を授与された。あんた、それまで無免許だったのか。
さらに、1910年12月には英仏海峡を横断する長距離飛行の賞金付きチャレンジに成功、4千ポンドを手に入れる。この賞金でソッピースは飛行機学校を設立。いきなり飛ぼうとして落ちたのがくやしかったのか。さらに、1912年には若干24歳でソッピース・アビエーションを設立した。
キットのソッピース・シュナイダーは1913年に初飛行した「タブロイド」のレーサー仕様である。「タブロイド」というのは新聞のタブロイド版のことで、この機体が普通の飛行機より小さかったことに由来する。第一次大戦の「キャメル」もそうだが、ソッピースのデザイン哲学は常に「できるだけ馬力のあるエンジンとできるだけ小さい機体」という組み合わせだった。
レーサーとして、シュナイダーは原型のタブロイドからエンジンを強化し、水上機としてフロート(浮き)の上に乗せられるなどの改造が施されていた。
フランスの富豪ジャック・シュナイダーの提供で1913年から始められたシュナイダー杯レースの第二回モナコ大会に参加したソッピース・シュナイダーはハワード・ピクストンの操縦で他の参加機の3分の2の時間でコースを周回するという高速を発揮。なにしろ前年の第一回大会で優勝したフランスのドゥペルデュサンレーサー機の平均速度が74キロだったのに、ソッピースシュナイダーは約140キロで飛んで見せたので後続のチームはすっかりやる気をなくして離陸しないで負けを認め、ソッピースはこの年の優勝機となった。
第二回シュナイダー杯レースの三ヶ月後、イギリスは第一次大戦に参戦する。ソッピース・シュナイダーも軍用機として採用されたが、もとがレーサー機なので武装は基本的にはなし。それでも、プロペラ回転面の外に射線が通るように上翼の上に立ち上がって射撃する機銃を載せたり、プロペラに弾丸を弾く鋼鉄製の金具を取り付けて無理やり機首に機銃を載せた機体などもあった(プロペラ同調機銃が発明されるのはもう少し後)。また、手で投げ落とす小型の爆弾で爆撃任務を行ったこともある。
航空機の進化著しい第一次大戦にあっては、俊足を誇ったソッピース・シュナイダーも早々に旧式化してしまい、1915年には前線から下げられたが、終戦時にも一部の機体は軍に在籍していた。
なお、ソッピース社は終戦後、戦時中に一部停止されていた税金の支払を一気に請求され、さらに戦時中にバカスカ作った飛行機が余剰となって市場に溢れたために航空機の販売も低迷。ソッピースはやむを得ず1918年に会社を畳むこととなったが、すぐに飛行機仲間のハリー・ホーカーと一緒に新しい会社を起こしソッピースはホーカー社の重役となる。
ソッピースはホーカー社が国有となった後もコンサルタントとして在籍。1989年に101歳で亡くなった。

では、そんなイギリス航空界の基礎を築いた名機、ソッピース・タブロイドの姿をMODELIK公式ページの完成見本で見てみよう。

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後の水上機に比べ、なんとも単純な形のフロートと尻尾に追加した滑水用の安定版がいかにも「後から付け足しました」という感じだが、実際に後から付け足したもんなので仕方ない。
このフロートは最初に単一の大型フロートの上に機体を乗せてエンジンをぶん回したら、トルクの影響でひっくり返ったので、急いでノコギリで(木製だった)ギコギコと半分に切って、左右に踏ん張る形で装着しなおしたものである。
レーサー機で水上機、というのは現代の感覚ではフロートの抵抗によるロスが大きそうだが、離陸時に揚力を増すフラップなどの装備が発明されるまでは、滑走距離を無制限に取れる水上機の方が高速機では有利だった。陸上機だって、どうせ脚は出しっぱなしだったしね。

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タブロイド/シュナイダーの特徴的な機首にも注目だ。この機では外されているが、タブロイド/シュナイダーは下面にもカバーをカポンとはめて機首を滑らかな形状とすることもできた。でも、最高時速百数十キロでは、空力云々よりも冷却効果を優先した方がよさそうだ。コクピットの計器がびっくりするほど少ないことにも注目。まぁ、メーターなんてエンジンの回転計と燃料計があればなんとかなるし。速度? そんなものは顔に当たる風の強さでわかるでしょ。

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テクスチャは汚しのないスッキリしたタイプ。MODELIKのキットはいつもそうだが、木目の繰り返しが単調過ぎてスーパーファミコンのゲームみたいだ。

さて、第一次大戦初頭にはその高速性能で敵を翻弄したソッピース・シュナイダーだが、諸外国もそれを見て「あれはいい飛行機だ」と思ったらしい。ロシアでは「LEBED VII」の名前で量産化までした。ただし、無許可で。

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今回、MODELIKからはその「ロシアン・ソッピースキー」LEBED VIIも同時発売となった。
ソッピースファンなら、是非とも両機とも購入して並べて置きたい。
どうせパクるなら、同盟国じゃなくて敵国ドイツの飛行機をパクれば文句出なかっただろうに。

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LEBED VIIは車輪をつけた陸上型だ。うまくやれば、ニコイチすることでソッピース・シュナイダーの陸上型を作ることもできるかもしれないが、できないかもしれないのでオススメはしない。
なお、ソッピース・タブロイド/シュナイダーは、1915年に余剰となった機体を日本から視察に訪れていた山内四郎大佐が購入し、「横須賀海軍工廠ハ号」として採用された、みたいな記述が海外の史料に時々出てくるのだが、日本語ではそんな機体は存在しない。なにかの勘違いなんだろうか。
ちなみに、日本陸軍ではソッピース「パップ」戦闘機や、フランスのニューポール戦闘機の評価機を購入した際にライセンス権を購入したと勘違いして、日本の工場でブリブリとコピー機を生産したら、後で英仏両国に凄く怒られたという過去があるので、ロシアのLEBED VIIをあんまり悪く言うのはやめておこう。大らかな時代だったんだな。

MODELIKのSOPWITH SCHNEIDERとLEBED VIIは、航空機スケール33分の1で完成サイズ約23センチと小柄なキット。難易度も5段階評価の「3」(普通)とお手軽な設定となっているので、是非とも複葉機の魅力である張り線に挑戦してみたいところだ。
定価はシュナイダーが18ポーランドズロチ(約600円)、LEBED VIIが12ズロチ(約400円)とこれまたお手軽。
複葉機ファン、レーサー機ファン、そして帝政ロシア空軍ファンなら、これは見逃せないキットと言えるだろう。



画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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