MODELIK アメリカ海軍練習/偵察機 Thomas-Morse S-5

2012年、あけましておめでとうございます。
今年は新興ブランドからの意外な傑作の登場なるか、それとも大手ブランドの安定したリリースが市場を支配するのか、どちらの方向へ進んでいくのかリリース情報から目を離すことのできない一年となりそうだ。
もちろん、新興ブランドの躍進と大手ブランドの発展、どちらもモデラーには嬉しい展開。しばらくは年末年始の「休戦」が続くが、春の新作ラッシュがいまから待ち遠しい思いである。
そんな楽しみな2012年、新年最初の新作紹介はポーランドMODELIK社のアメリカ海軍練習/偵察機 Thomas-Morse S-5だ。

Thomas_Morse_okladka.jpg

昨年に引き続き、今年もカードモデル界の鍵を握りそうなキーワードが「練習機」だ。なんと言うか、どうでもいい感じだが、東欧の人が練習機が好きらしいんだからしょうがない。
新年早々に地味なアイテムだが、相互リンクしていただいている紙模型静岡工場管理人にナオさんが元旦1日で完成させた、というのでそれに便乗しての紹介だ。本年もよろしくお願いいたします。
なお、メーカー公式ページでこのキットの名前が「THOMAS-MORE」と紹介されているが、そりゃ「ユートピア」を書いた人だ。

1916年、ルシタニア号が沈められて怒ったアメリカは第一次大戦に参戦。ジョニーよ、銃を取れ! と威勢よく言ってみたものの、よく考えたら兵器を全然持っていなかった。
仕方が無いので陸軍航空隊はフランス軍から戦闘機を貸してもらうが、当時の戦闘機は高性能化の一途を辿り、そろそろ最高時速200キロを超える戦闘機まで登場し始めていたっていうのに、当時アメリカ軍が練習機として使っていたのは最高時速たった120キロのカーチスJN4「ジェニー」。これで操縦を覚えて欧州へやってきたアメリカ人パイロットはフランス製戦闘機が速すぎて目が回るので、このギャップを埋める高等練習機が早急に必要となった。
この要求に対して手を挙げたのが、ウィリアムとオリバーのトーマス兄弟が設立し、自動車などのチェーンを作る会社を経営していたフランク・モースをビジネスパートナーに加えたトーマス=モース社だった。トーマス=モースは飛行機学校も運営しており、練習機の開発には勘が利いたため、翌1917年には試作機トーマス=モースS-4が初飛行を果たした。
S-4は機体が小さく軽い飛行機だったために翼面荷重は低く、安定性、操縦性に優れていた。肝心の速度は150キロ前後と、少し期待に届かなかったものの、拡充続く航空隊の訓練のためには少しでも多くの練習機が必要とされており、一部を手直ししたS-4Bが100機の受注を受ける。さらに、海軍がS-4Bの水上機型を発注、これがキットのS-5となる。
軍はさらに、偵察機型に細部を修正したS-4Cを発注。トーマス=モースS-4/S-5は練習機型、偵察型、水上機型など全てを合計すると600機近くという当時としては多数が生産され、「トミー」の名前で親しまれた。

なお、トーマス=モースはその後本格的戦闘機の開発にも進出、1925年にはMB-3が陸軍制式採用となったが、最初の10機を海兵隊に、15機を陸軍航空隊に納入したところで軍が突如「ここで大事な大事な入札タイム!」と発表。入札の結果、大規模な生産システムを持つボーイング社が次の200機の生産を受注してしまった。軍縮ブームでどこの軍も予算が厳しかったのよ。なお、この入札は第一次大戦終了時の軍用機大量キャンセルで損害を被ったボーイング社を救済するための談合であった、という説もある。
納得いかないトーマス=モース社は、まだ当時は帆布張りか木製がメインだった胴体構造を金属製波板張りにした斬新なXP-13「ヴァイパー」という凄く名前のカッコいい新型戦闘機を試作。ヴァイパーのエンジンには12気筒二重星型Curtiss H-1640「チーフテン」という、これまた斬新なエンジンが選ばれた。「チーフテン」は6気筒星型を前後に二重に重ねることで、12気筒なんだけど6気筒の投影面積しかない=高馬力で抵抗小という夢のようなエンジンだったが、前後の6気筒づつを全くずらさずに重ねたので後ろの6気筒に風が当たらなくて全然冷却されないという、まぁ、簡単に言うとゴミエンジンだった。おかげでXP-13も性能はパッとせず、後で馬力の劣るプラット&ホイットニーSR1340C ワスプエンジンに交換したら、そっちの方が軽いこともあって速度が向上したというダメダメさ。
結局、XP-13は正式採用とならず、トーマス=モースもコンソリデーテッド社に吸収合併されてしまった。

さて、そんな第二次大戦だけに熱中してると全く名前も出てこないトーマス=モースの代表作S-5。完成写真は、是非とも紙模型静岡工場様の当該エントリをご覧になっていただきたい。制作過程のスライドショーもリンクされており、これからS-5を制作しようというモデラーにも参考となること間違いなしだ。

Thomas_Morse_Ark1.jpgThomas_Morse_Ark2.jpg

展開図は汚しのない、いつも通りののスッキリしたタイプ。
カラーリングはいかにも実戦用! といった感じのグリーンだが、水上機タイプは第一次大戦には行っていないようだ。

MODELIKのアメリカ海軍練習/偵察機 Thomas-Morse S-5は、航空機スケールの33分の1で翼幅約25センチという小柄なキット。難易度は5段階評価の「3」(普通)、値段も18ポーランドズロチ(約600円)と大変お手軽になっている。
また、レーザーカット済み芯材用厚紙もわずか6ズロチ(約200円)で同時発売となる。

Thomas_Morse_laser.jpg

でも、構造が簡単なんで厚紙の部品はこんだけ。これぐらいならキット同梱でも良かったのに。

トーマス=モース単体で見るとなんとも地味なアイテムだは、今や世界最強となった米軍航空隊の基礎を築いた機体であると考えればその存在を無視することはできない。もちろん、米軍水上機ファン、トーマス=モース社ファンのモデラーには見逃せない一品と言えるだろう。

地味なアイテムで好調に滑りだした2012年。今年も当コーナーでは聞いたこともないアイテムを半端知識でつっかえつっかえに続々と紹介していきたい。
本年もよろしくお願いいたします。



画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。


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明けましておめでとうございます

のとっちょ様
遅ればせながら
明けましておめでとうございます。

S-4なら何とか手元に資料が有るのですが、S-5が全く不明でした(笑)なにせアメリカ陸軍が「航空隊」じゃなくて「航空班」の頃の代物ですからね~外観がソッピースの「ハップ」に似ているのはB.Dトーマスが設計しかたらなんでしょう。

所で、キットに付いてる完成品の写真なんですがなんだかキットの物とは違う様で、機銃が付いて無いとか、コックピット周りが違うとか非常に怪しい代物です。でもって昔S-5はFitter's Modelsで出てたんですよね・・・それの完成品の写真だゼこれは~!と、密かに思うので有りました。(だって写真が全く同じなんだもん!)よくよく見ると翼とかフロートが埃まみれの写真だヨ、ママン・・・。Fitter's Modelsは今でも8$で売ってるから円高の昨今モデリックと、どこいどっこいですな!!

今年も宜しくお願い致します。

Re: 明けましておめでとうございます

ナオさん、今晩は!
返信遅くなりもうしわけございません。

あぁっ! 指摘されて初めて気が付きました。確かに、このころはまだ「陸軍航空隊」じゃなくて、「陸軍信号隊航空班」ですね。迂闊でした。
それにしても、他人の作った別のキットの写真をそのまま完成見本として出してしまうとは、これまた斬新な……いやいや、中の人は一緒なのかもしれない! いや、それでも別のキットの写真出しちゃいけませんって。
こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!
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