Orlik ドイツ軍計画機 Lerche

すべてのホビー好きの方に、メリークリスマス。一足早くホリデーシーズンに入り仕事納めをした方も、まだ来週も仕事、なにか問題が発生すれば年末年始だって危うい、2週間でプロジェクト一つカタチにしてよ、って言われて寒い開発室に泊まりこみだ、仕事はけっこう楽しいけど、正直しんどかったです、という方も素敵なクリスマスを迎えることができただろうか。
さて、今回は、クリスマスにちなんだ新製品としてポーランドOrlik社のドイツ軍計画機 Lercheを紹介しよう。

Lerche.jpg

この奇妙な物体のどこらへんがクリスマスらしいのかと言うと、三枚尾翼が実家にあったクリスマスツリーの足のカタチに似てると思ったのだが、それほどでもないな、と気づいた時にはもう書き進めていて手遅れだったのでこのまま押し切ろう。
ちなみに、展開図や組み立て説明書のサンプル写真はなかったので、キットの話はこれ以降出てこないといういい加減さだ。

1944年、イギリスに展開したアメリカ第8空軍は北から、イタリアに進出した第12空軍は南から戦略爆撃でギリギリとドイツを締め上げており、このままではドイツの全産業が押し花になってしまうのは時間の問題だった。これを阻止しようにも、超長距離戦闘機のP-51ムスタングとP-48サンダーボルトが両脇に増槽を抱えてドイツ軍の飛行場の上をブンブン飛び回るので、ドイツ軍迎撃機は滑走路から飛び立たないうちに撃墜されてしまうというありさま。この危機的状況に対し、ドイツ軍が考えだした対策が「垂直離着陸迎撃」だった。
つまり、重要拠点の周りに真っ直ぐ垂直に飛び立つ戦闘機を配備しておき、米軍重爆撃隊がやってきたら真下から出撃、護衛機を無視して爆撃機に攻撃を加えて一撃離脱、爆撃隊大損害、といういかにも「絵に書いた餅が食べられたらおいしいじゃん!」的なナイスアイデアだった。
こんなアイデアでも、計画がいくつも提出されてくるのがドイツ航空業界のオモシロ恐ろしいところ。エーリッヒ・バッフェム博士は垂直に組んだ櫓からロケットブースターを取り付けた小型機がスポーンと射出され、機首のロケット弾を敵編隊に向かってばら撒く「Ba349 ナッター」を提案、これはうっかり試作機まで作ってしまった。一方、Fw190戦闘機で有名なフォッケウルフ社は「トリープフリューゲル」を提案。これは計画のみに終わったが、その斬新なスタイルとコンセプトは戦後70年を経た今でも我々に苦笑いを提供している。
そして、戦前は楕円翼の美しい王道デザインを進んでいたのに、戦争開始と同時になぜかデザインセンスがぶっ飛んでしまったハインケル社が提案したのが、この「Lerche」(レルヒェ、資料によっては”レルフェ”。鳥の雲雀(ひばり)のこと)であった。
レルヒェはスーパーチャージャーを装備したDB605系4千馬力ピストンエンジンを2基装備し、胴体中央の二重反転プロペラを回す予定であった。メッサーシュミット109に積んだ時には2千馬力しか出力のないDB605が、どうしてレルヒェに積んだら4千馬力になるのかは全く意味がわからないが、手元の資料にそう書いてあるんだからしょうがない。でも、これって2千馬力エンジン2基で4千馬力なのを勘違いしてるんじゃないの?
垂直に立てらてた状態で出撃準備を整えたレルヒェは、敵爆撃機が接近するとこの4千x2馬力でプロペラをぶん回し、秒間50メートルの速さで急上昇、上昇後は水平飛行に移り、プロペラの周りの環状翼ですいすいと最高時速750キロで飛行して護衛戦闘機をかわし、敵爆撃機の防御銃火射程外から2門の30ミリ機関砲をバリバリと撃ちまくり、さらには開発中の有線誘導空対空ミサイル「X-4」3発も撃ち込んで米軍大炎上、という「押川春浪が考えたような」戦闘機だった。
パイロットは機首のクリア部分に(水平飛行時の態勢で言うと)腹ばいに乗り込む予定だったとされているが、下方視界0のその姿勢でどうやって垂直着陸するつもりだったのだろうか。あと、カードモデルでこのクリアな機首の再現はとってもとっても難しいんじゃないかと思うのだが、どういう構造になっているのだろうか。

まぁ、大方の予想通りに計画書のみで終わったレルヒェだが、その発想は戦後しばらくの間、航空業界で生き続けた。アメリカ海軍では駆逐艦などの小艦艇の甲板から垂直離着陸できる航空機を模索、コンベアXFY-1ロッキードXFV-1というオモシロくってヘソで茶が沸く戦闘機を試作したが、垂直上昇から水平飛行への転換などに難があり計画は破棄された。また、フランスでは「Coléoptère」(コレオプテール、カブトムシなどの甲虫のこと)という名称で試作機C450が制作されている。コレオプテールの、胴体に剣を挿すとビヨーンと機首が飛び出しそうなスタイルはレルヒェに近いが、当時すでにヘリコプターがものになり始めていたので、こんなオモシロ飛行機をわざわざ作る必要もなく試作に終わった。

そんな、航空史の1ページを飾ったような、飾っていないようなドイツ軍計画機 Lerche。Orlik社のキットはスケールは航空スケールの33分の1。難易度は表示がないからわかんなくって、定価は25ポーランドズロチ(約800円)となっている。
ついでに、他の垂直離着陸戦闘機のカードモデルキット情報についてまとめておくと、Ba349ナッターは、ずーっと昔ににマイナーなメーカーがキットを出したらしいが情報皆無。これは新展開図の登場が待たれる機体だ。フォッケウルフのトリープフリューゲルは2008年にMODELIKからリリースされており、紙模型静岡工場のナオさんがレビューされている。
戦後に目を移すと、コンベアXFY-1がこれまたMODELIKから2008年のリリース。ロッキードXFV-1は1960年にMalyModelarsがリリースしたことがあるらしいが、これは入手困難だろう。なお、MalyModelarsは1961年にコレオプテールもリリースしているというからクレージーだ。コレオプテールは2003年ごろにQUESTブランドで別のキットがリリースされており、QUESTのキットは時々ショップで在庫を見かけるので興味あるモデラーは探してみるのもいいだろう。
垂直離着陸戦闘機ファンのモデラーならそれぞれのキットを作り比べ、改めてそのスタイルにトホホとなるのもおもしろそうだ。



画像はOrlik社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。



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