SZK イギリス製蒸気機関車 Penydarren

ブログを管理運営しているトンチキ野郎が手際が悪いもんで、しばらく展示会の準備につきっきりとなってしまったが、本日は久々にカードモデル界のホットな新製品情報をお伝えしたい。
今回紹介するのは、ポーランドの新鋭ブランド「SZK」の イギリス製蒸気機関車 Penydarrenだ。

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なんというか、鉄道黎明期の蒸気機関車というありそうでなかった微妙なチョイス。このPenydarren(ペナダレン)号が走ったのは、なんと1804年。ナポレオン・ボナパルトが皇帝に即位した年だ。こりゃ凄い。
びっくりするほど年代が早いのも当然で、実はこのペナダレン号、世界初の蒸気機関車なのである。
言い間違えるとセクハラな名前の、フランスのキュニョーが1769年に世界初の蒸気自動車を制作して以来、蒸気機関による乗り物はゆっくりゆっくりと進歩を続けていた。
しかし、このころの蒸気機関の主な働き場所は鉱山であった。イギリスのニューコメンが1712年に負圧式の実用蒸気機関を発明してから、毎日鉱山での湧水を汲み出す動力として蒸気機関はシュッポシュッポと働いていたのである(ニューコメンの蒸気機関はあまりにもエネルギーロスが大きく、ワットの改良型蒸気機関が登場すると全て置き換えられてしまった)。
リチャード・トレビシックもそのような鉱山用蒸気機関の技師であったが、その経験を生かして蒸気自動車の設計にも挑戦し、1802年には「ロンドン蒸気車」を設計している。この「ロンドン蒸気車」の写真は「大英蒸気車クラブ」という、マニアックにも程があるサークルで復元車の姿を見ることができるが、この客室、19世紀の長いドレスを着た女性はどうやって出入りするんだ?

当時イギリスは産業革命の真っ最中。全国各地の鉱山から石炭と鉄鉱石が製鉄所へ次々に送り出され、鉄となって出荷されていったが、少しでも輸送を効率化しようと主要な鉱山と製鉄所、そして貿易拠点の間に馬が引く鉄道、「馬車鉄道」の建設が始まっていた。
鉱山で働き、蒸気自動車にも精通しているトレビシックはこれを見てピコーンとひらめいた。馬じゃなくて、蒸気機関で引けば、もっとたくさんの鉱石を運べるじゃない!
そして、ペナダレン製鉄所の出資を受けたトレビシックは「ペナダレン号」を制作、10トンの鉄を積んで15キロの距離を4時間で走ってみせたのである。
やったぜ! 時はまさに大蒸気機関車時代! と喜ぶのはまだ早かった。確かに試験走行には成功したが、問題は山積だった。当時の鉄はまだ脆く、機関車、レールとも走行に耐えられなかったのだ。
結局、走るたびに壊れる機関車とレールでは使い物にならず、残念ながらペナダレン号は数回の走行でお役御免となりレールの上は馬車鉄道がパカパカ走ることになった。
その後、トレビシックは産業用の機関車を諦め、見世物として円形レールの上をグルグルと目的もなく走る機関車を制作したがこれも成功したとは言えず、結局は蒸気機関車の制作からは手を引いて南米へ渡った。しかし、そこでも事業に失敗。失意のうちに帰国、不遇のうちに没した。

トレビシックが死去する8年前の1825年、イギリスのジョージ・スチーブンソンは世界初の公共鉄道用に「ロコモーション号」を制作、これは大成功をおさめ、鉄道網は急激に世界中へと伸びていくこととなる。
スチーブンソンの成功はトレビシックの失敗より20年も後なのだから、鉄の品質そのものも改善されており、トレビシックの失敗の原因を彼個人の素養だけに求めるのは酷に過ぎる。
だが、スチーブンソンは炭鉱機関士の子供で、幼少のころから(労働基準法なんてできる前の話だ)父の仕事を手伝い、蒸気機関を扱っていた。おそらく、彼は現場で機械や材料というものを肌で感じ、覚えていったのだろう。その叩き上げの技術はスチーブンソンの大きなアドバンテージであったことは間違いない。

現在、商業的に成功した蒸気機関車を初めて制作したスチーブンソンは「蒸気機関車の父」と呼ばれることもある。だが、彼の成功の背後にはトーマス・ニューコメンニコラ=ジョゼフ・キュニョー、そしてリチャード・トレビシックといった、成功者とはなれなかったが、偉大な技術者達の試行錯誤と苦難、そして失敗の繰り返しがあったことを決して忘れてはならない。

なお、余談ではあるがトレビシックの孫であるリチャード・フランシス・トレビシックフランシス・ヘンリー・トレビシックも鉄道技師で、明治時代初期にいわゆる「お雇い外国人」として来日、日本の鉄道開設に大きな役割を果たし、国産機関車第一号である国鉄860形蒸気機関車の設計、制作の監督もしている。

さて、そんな偉大な蒸気機関車、ペナダレン号をキット化したブランド「SZK」は、正式名称は「Świat z kartonu」で、直訳すると「カードの世界」となる。なんともアメリカンエキスプレスな響きだ。出かける時は忘れずに。
しかし、よく見るとほとんどのキットがMarek Dworaczek氏のデザインなので、たぶん、Dworaczek氏の個人ブランドなんだと思われる。夢は大きく、時はまさに大カードモデル時代。
そのSZKの第一作が、このペナダレン号。なるほど、トレビシックの野心にあやかろう、というわけか。でもあやかるならスチーブンソンのロコモーション号の方が良かったのでは……
そんな疑問はさておき、さっそく完成見本品を公式サイトのギャラリーから見てみよう。

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いやさ……塗ってるだけならまだしも、煙まで吐いちゃってるし……
レールがヒヨヒヨしてるのは、実際にこのころのレールはヒヨヒヨしていた、ということでいいの? そもそも、どこまでキットに含まれるのかもわからんちん。

さて、展開図のサンプルもないのでこれ以上キットの話は進めようがないのだが、せっかくなのですでにリリースされているSZKの他のキットもついでに見てみよう。世界初の蒸気機関車、ペナダレン号に続いてリリースされた第二作目が、この「投石機 オナガー」だ。

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なんで一作目が蒸気機関車で二作目が投石機なんだよー。
表紙も黒表紙でイメージ一新だ。

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キットは輪ゴムの力で実際にモノが飛ばせそうだが、なにぶん紙だからなぁ。調子にのるとぶっ壊れそうだ。

そして、第三作目に教会のキットを挟んで四作目としてSKZがリリースしたキットが、この「破城槌」だ。

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いったい、どこへ進んでいこうとしているのやら。表紙もなぜか再びイメージ一新してるし。

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ちなみに中身もちゃんと再現されている。っていうか、このフォルムで中身なかったら簡単過ぎだ。

SZKの世界初の蒸気機関車、Penydarrenはスケールは陸物スケール25分の1。他の機関車キットと並べてみるのも面白そうだ。また、攻城兵器もスケールは25分の1となっているので、戦車キットと並べて「ドイツ戦車隊がトルコ軍包囲下の東ローマ帝国ビザンチウムにタイムワープ!?」といったトンデモ仮想戦記に思いを馳せるのもいいだろう。定価は12.9ポーランドズロチ(約450円)というお手軽価格(投石機が同じく12.9ズロチ、破城槌は19.9ズロチ、約600円)となっている。

果たしてSZKがこの先どこへ進んでいくのかはわからないが、黎明期蒸気機関車ファンと攻城兵器ファンのモデラーには目を離すことの出来ないブランドとなりそうだ。


画像はSZKサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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