MODELIK ソビエト製宇宙ロケット Протон

納期直前なのに帰ってきちゃって涼しい顔してる筆者が東欧のカードモデル新製品を紹介する当コーナー、本日は今年になってから30作以上をリリースし、ますます勢いに乗るポーランドMODELIK社の新製品情報を紹介しよう。
今回紹介するのは久々のロケットキットとなる、ソビエト製宇宙ロケット、Протонだ。

PROTON-1_okladka.jpg
どどどーん。なんだか足元のパースが怪しげだ。

Протон(”プロトン”、「陽子」の意)は、1965年に初飛行した宇宙ロケットで、特徴はその大きさにある。いまでこそ、日本のH2Aロケットなど50メートル級の打ち上げロケットは珍しくないが、60年代にはアメリカのサターンロケットと、このプロトンロケットは他にこの大きさのロケットはなかった。そして総重量700トン、低軌道への軌道投入能力22トン(H2Aの場合、それぞれ450トン、15トン)というパワーを武器に、初飛行から50年以上を経た今でも現役で様々な機器を宇宙へ送り届けているという「重量級ロケットの超ベストセラー」である。
もともと、プロトンは100メガトンクラスの水爆を1万3千キロ離れたアメリカの都市へ打ち込むという、物騒な「スーパー大陸間弾道弾」として開発が始まったが、さすがにそれはバカバカしいと気がついたためにプロトンのICBMタイプ、というのは結局開発されずに宇宙ロケットへと目的は変更された。折しもソビエトはアメリカとの「月への競争」の真っ最中。人間を月まで送る巨大ロケットへの前段階としてプロトンには大きな期待がかけられた。
1965年7月16日、午前11時15分59秒(なんでそんなに半端なんだ?)、バイコヌール宇宙基地81番サイトから飛び立ったプロトンロケット1号は地球低軌道へ到達、打ち上げは大成功だった。
あいにく、月への競争にソビエトは敗れたものの、プロトンは他のロケットには成し遂げられない重量物の打ち上げを一手に引き受け、大規模な宇宙ステーションの開発などには欠かせない存在となっていった。
プロトンは月へロシア人を運ぶという名声を得ることはできなかったが、メガトン級水爆を運ぶ「死の使者」としての負の名声を背負うこともなかった。
ソビエト崩壊後も他国の衛星を打上げる仕事でロシアに貴重な外貨をもたらしているプロトンは、我慢強く頑健なロシアの農民の姿を彷彿とさせる。さながら宇宙空間へ黙々と重量物を運び続ける、現代版「ヴォルガの舟曳き」……と、いうのはいささか強引すぎるだろうか。

では、今回MODELIKが模型化した、記念すべきプロトンロケット1号機の雄姿を、公式ページの完成写真で見ていただこう。

Proton-1_Foto_1_.jpg

うむ。ロケットだ。よく見ると若干、魚眼っぽく上下に歪んでいるが、これをもとに絵を書いたから表紙もなんだか歪んじゃったんだな。
プロトンロケットというと、胴体に大きく「Протон」と縦書きされているのが定番だが、プロトン1号機はどうやら無地だったようだ。

Proton-1_Foto_2.jpgProton-1_Foto_3.jpg

一見、真ん中に大型ブースターの2段目があり、その周りに小型ブースターの1段目を束ねた構造に見えるプロトンロケットだが、実際には真ん中は燃料タンクのみでロケットは積んでおらず、周囲のブースターと一緒に1段目として切り離される。
ところでプロトン1号機の積荷ってどこを探しても書いてないので、多分プロトン1号は純粋に打ち上げ実験だけを目的としており、2段目先端の覆いがパカッと外れて人工衛星がコンニチワしたりはしないのだろう。たぶん。

Proton-1_Ark_1.jpg

テクスチャは汚しのないスッキリとしたタイプ。見ての通り構造もあまり複雑ではなく、難易度も5段階評価の「2」(易しい)となっている。

Proton-1_Ark_3.jpg

組み立て説明書も、ラインの図に部品番号をふった、画像の図のみのようだ。ところで左下に「PROTON-1 1964」と書いてあるが、「1964」って、なんだろう……プロトン1号機が打ち上げられたのって1965年だし。

さて、今回MODELIKからはプロトン1号機だけではなく、他のバリエーションも同時に発売された。そちらも併せて紹介しよう。

PROTON_LK-1_okladka.jpg

こちらはプロトンロケットのエンジンをヒドラジン系化合物を燃料とするものに換装したプロトンKのキット。ヒドラジン系燃料は直接かかると人間が溶ける、燃焼後のガスには発ガン性がある、と踏んだり蹴ったりな危ない物質だが、常温保存ができるので液体酸素を使用するロケットと違って長時間燃料を入れっぱなしにできるという利点がある(液体酸素を入れっぱなしにしておくと、どんどん蒸発してしまう)。

PROTON_LK-1_Foto_1.jpgPROTON_LK-1_Foto_3.jpg

1号機は2段式だったが、こちらは3段式。しかし、表紙に書かれている「LK-1モジュール」というのはプロトンロケットの打ち上げリストからはそういう名前のものが見つけられず、どれを指しているのかわからなかった。相変わらず「1964年」と意図不明の年号が書いてあるし。おそらく、プロトンKとして初の打ち上げで、ソユーズ宇宙船の月周回飛行型試験機を積んでいた1967年3月10日に発射された機体をモデル化しているのではないかと思うが、確証はない。

さらにMODELIKのプロトンロケットシリーズは続く。

PROTON_Zond_okladka.jpg

お次は、より本格的な月周回機の試験機である「ゾンド」モジュールを積んだタイプ。今度は年号が1967年に……あれ? Wikipediaのリストでは1967年にゾンド搭載のプロトンは打ち上げられていないぞ? 1968年ならゾンド4、5、6号機を打ち上げてるけど……

PROTON_Zond_Foto1.jpgPROTON_Zond_Foto3.jpg

先端になんか板がついてるが、打ち上げで吹っ飛びそうだ。まぁ、正直、さっきのキットと先端の形が違う程度なんで書くことはあまりない。

さらにさらに、MODELIKは1971年4月19日に宇宙ステーション「サリュート1」を打ち上げた機体までリリース。

PROTON_Salyut_okladka.jpg

サリュート1の打ち上げは深夜1時40分だったので、表紙の絵も夜になってるあたり、なかなか芸が細かい。でも足元はやっぱり魚眼にゆがんでる。

PROTON_Salyut_Foto1.jpgPROTON_Salyut_Foto3.jpg

69年のアポロ11号月着陸で月への競争は終わり、「べっ、別に月に人間なんて、送り込みたくないんだからねっ!!」とツンデレ気候のソビエトは宇宙開発の重心を科学実験や惑星探査へと切り替えて行く。
宇宙ステーション「サリュート1」は重さが18トンもあり、低軌道とはいえこれだけの重量物を軌道に投入できる力持ちはプロトンしかいなかった。宇宙空間に打ち上げられた居住空間で人間が生活する「宇宙ステーション」としては、サリュートは世界初のものだが、もともと長期の運用は想定されておらず、打ち上げ半年後の71年10月に大気圏に突入して燃え尽きた。

なんともよりどりみどりなMODELIK ソビエト製宇宙ロケット Протон。スケールはMODELIKの宇宙統一スケール、50分の1でプロトン1が82センチ、他は1メートル10センチ~20センチという迫力あるサイズ。難易度は全て5段階評価の「2」(易しい)、定価はプロトン1が30ポーランドズロチ(約1000円)、他が35.01ズロチ(約1150円)となっている。
ロケットファンなら、ソビエトらしい力強いプロトンロケットを手に入れることのできるこの機会を逃すべきではないだろう。以前紹介した同時期のアメリカ側ロケットと作り比べてみるのもおもしろそうだ。

ところで、なかなかモデルとした機体が特定できなかった今回のキットだが、さっきWikipediaを見ていた大変なことに気がついてしまった。
今回リリースされた4タイプのプロトン、Wikipediaに引用されているNASAが作ったプロトンロケットの分類図そのままだ……よく見ると、「LK-1モジュール、1964年」って表記までそのままだし。
これって、冷戦下の乏しい情報をもとに作成された資料なんじゃない? それをもとにって……



キット画像はMODELIK社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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出来の良いプロトンロケット

素晴らしい出来ですね、プロトンロケットのカードモデルは根気が要ります、段間接合トラストリングの格子を切り抜くのが大変手間がかかります

Re: 出来の良いプロトンロケット

今晩は! コメントありがとうございます。
ポーランドのペーパークラフトは中に厚紙の隔壁が入るので、大柄なキットでもかっちりとした形に組み上がるのが魅力ですね。
トラス構造はペーパークラフト特有の難所ですよね。見栄えがするだけに、「黒ベタは抜けていると思ってください」みたいな構造にすると、とても目立ちますし……米軍旧式戦艦の籠マストや東京スカイツリーのペーパークラフトなんて、想像するだけで肩がこりそうです(笑)
今後ともよろしくお願いいたします!
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