GPM オーストリア=ハンガリー帝国ヘリコプター PKZ-2

湿気ったセンベイを食ったら、なんだかポンポン痛くなったが今週も頑張って新製品を紹介したい。
秋に入ってからの「大物祭」で世界のカードモデラーを驚かしたポーランドGPM社。しかし、GPMは住宅事情が異なる日本人モデラーの「そんな大物置いておく場所ないよ!」という心の叫びもきちんと聞いてくれたようだ。
本日紹介するのは、大物が続いたGPMからリリースされたピリリと辛い小物キット、オーストリア=ハンガリー帝国ヘリコプター PKZ-2だ。

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思わず「緊急特番! オーストリア=ハンガリー帝国はUFOを作っていた!」と、言いたくなるようなドリーミーな形状だが、これは実在した。
第一次大戦で各国は砲弾の着弾観測などに観測気球を上げ、そこに吊り下げられたゴンドラに乗った観測員が状況を報告していたのだが、なにしろプカプカとのんびり浮いてる気球は敵の飛行機にとっても狙われやすい。かと言って、飛行機で偵察をしようにも、偵察機では 上がる→偵察→降りてくる→伝える と、手間がかかってしょうがない。その点、観測気球なら電話線で地上とつながってるから会話はリアルタイムだ。
そこで、両者のいいとこどりの観測手段として考えられたのが、このPKZ-2だった。

名称の「PKZ」は、開発に関わった3人、Stephan Petročzy von Petročz、Theodore von Kármán、Wilhelm Žurovec、の頭文字を取ったものである。どうやらPetročzさんが軍との調整と管理、Kármánさんが理論と設計、Žurovecさんが実際の制作を受け持ったようだ。なお、この真中の「Kármánさん」は「航空力学の父」と言われ、「カルマン渦」に名前を残すあのカルマンさんその人である。
「PKZ-2」というからには「PKZ-1」というのもあり、そちらはエンジンで発電してモーターを回し、設計段階では10~20のローターがブルブル回っちゃって、飛んじゃうよーという愉快な代物だったようだが、実際にはローターは4つまで減らされた。
なんか聞くだに失敗しそうだが、そこはカルマン教授の計算通りに実験は成功し、PKZ-1は人員を乗せてゴキゲンにプルプルと上昇したものの、数度の実験でモーターが完全に焼き切れてしまった。当時のモーターはまだ出力が低いので無理させちゃったのね。
さて、続く「PKZ-2」は名前は引き継いだものの、実はŽurovec氏がほとんど一人で制作したものらしい。彼はモーターでローターを回すのをやめ、さらにトルクを打ち消すために同軸で反対側に回転する「二重反転ローター」を開発した。
このローターは当初は3基の100馬力のグノーム・エンジンで駆動されていたが、これは馬力不足として120馬力ローヌ・エンジンに換装されている。
これまたどうにも失敗しそうな「PKZ-2」は意外にも試験飛行には成功。ただし、この時は人が乗る円筒形プラットホームは載せられていない。
そして1918年6月10日、今度は軍の前で試験飛行を行うが、この時は観測員を乗せていたようだ。しかし、重量超過に加え風にも煽られPKZ-2は墜落、大破(死傷者は伝えられていない)。プロジェクトはキャンセルされ、オーストリア=ハンガリー帝国のヘリコプター開発も終わった。

そんな、航空史の忘れられた1ページを飾るPKZ-2を、さっそくGPM公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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ばびーん。
なんだか、「未来の交通整理: 未来のおまわりさんは、空飛ぶ車を誘導するために空中に浮かんだ台の上から交通整理をするんだ!」みたいな感じだ。
乗員の乗る円筒形の台の下で思いっきりローターが、それも二重に回っているが、実際に運用される場合には乗員が脱出するためにローターの回転半径外まで射出される脱出装置が考えられていたそうだ。でも、たぶんうまくいかなくて悲しい思いをしたに違いないことを思うと、実用化されなくて良かったのかもしれない。

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メカ部をクローズアップ。下にある火鉢状のものは着地の衝撃を和らげるエアバッグ。エンジンの外側にある逆さまの涙滴型のものは、おそらく燃料タンクだろう。計画では1時間の連続飛行を予定していた。
なお、どう見ても姿勢を制御する機構も操縦装置もないが、そもそもPKZ-2は3方のブームにつなげたロープを地上から引っ張って水平を保ち、上昇下降も地上からウィンチで引っ張って行う予定だった。従って、厳密な意味ではPKZ-2は「ヘリコプター」ではなく、これに乗ったオーストリア=ハンガリー軍ヘリボーン部隊が唖然とする連合軍の頭上を飛び越えてベルサイユ宮殿に大挙押し寄せる……といったシロモノでもない。

ところで、この手のアイテムがリリースされると、「なんじゃこりゃ……」と頭を抱えるのが毎度のパターンだが、今回は違った。なぜなら、筆者はプラモデルでPKZ-2を持っているからだ。わっはっは。せっかくだから、そっちの方も軽く自慢しておこう。

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こちらのキットはエッチングのディティールアップパーツで有名なチェコのeduard社製。「Never-Fighting Ladies」(戦うことのなかった淑女達)という無駄にカッコイイ名前のシリーズの一品だが、このシリーズ、PKZ-2以外には爆笑マンボウ飛行機DFW T28 Flohしか出てないと思う。GPMには、そちらもキット化していただきたいものだ。

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中身はこんな感じだ。なんともスッキリした内容だが、さすがeduardらしい気合の入ったエッチングパーツが標準で同梱されている。っていうか、これがなかったらこんなもん完成しない。
ちなみに、いつごろ、なんでこんなキット買ったのかはまるで覚えていない。

GPM オーストリア=ハンガリー帝国ヘリコプター PKZ-2はスケールは航空機スケール33分の1、ただしボーナスとして50分の1バージョンも付属する1粒で2度おいしいキットだ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価も25ポーランドズロチ(約800円)とお手軽設定となっている。
オーストリア=ハンガリー軍ファンなら、このキットの購入はもちろんのこと、50分の1スケールの展開図を48分の1のeduardのパーツと、まぁ、なんとかうまいこと組み合わせることで「究極のPKZ-2」の制作に挑戦するのもいいだろう。



写真はGPM社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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愉快な乗り物ですね~

いやはや、なんとも愉快な乗り物ですね。オーストリア・ハンガリー軍も、これを大量生産して雲霞のごとく飛び回ったのなら、戦果はともかく戦史にはバッチリと名を残すことが出来たと思います。
墺軍は、いい兵器は持っているんだけども、どうもパッとしないイメージがあったのですが、こんなにもファンキーかつマッドな兵器を持っていたとは驚きです。これからも、世界の面白兵器を紹介してください!

Re: 愉快な乗り物ですね~

azukenさん、今晩は!
PKZ部隊、どうせならワーグナーの「ワルキューレの騎行」をガンガン奏でながら、自由気ままに飛び回って欲しかったですね。「ホント戦争は地獄だぜーっ!」とか言いながら。それぐらいすれば、オーストリア=ハンガリー軍も、ドイツ軍の隠れキャラみたいな扱いにならなかったと思うのです。
それにしても、チェコのEduardはまだ帝国の一部だったからいいとして、なんでポーランドの人がこんなもん出すんでしょうね? プラモデル買っちゃった日本人もどうかと思いますけれども。

ペパコン11

第一次世界大戦モノですな。
意外にヘリコプターの歴史って古かったんですねぇ。
この頃からヘリがあったとははじめて知りました。
所で、今年のペパコン11、どうします?
今年は12月6日~11日までの長期開催となります。
展示のみが6日~9日までで、10、11日から展示即売会となります。
いつから参加されても自由です。
何と、出展作品コンテストがあって優勝者には5万円が贈呈されます。
是非とも参加お願いいたします。

Re: ペパコン11

紙の穴総帥様、ご無沙汰しております。
果たしてこれを「ヘリコプター」と呼んでいいのか疑問なのですが、拡大解釈すればレオナルド・ダ・ビンチの時代からアイデアはあったので、歴史が長いと言えば、けっこう長いですよね。コンタークトッ。

今年のペパコン、楽しみですね!
もちろん、自分も準備でき次第フルタイムでの参加を申し込みさせていただきます。
今年もよろしくお願いいたします!
展開図公開中
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