GPM ポーランド軍戦車 PT-91 ”Twardy”

多砲塔戦車”Neubaufahrzeug”、60センチ自走臼砲”Karl”とたてつづけに大物をリリースしたポーランドGPM社。しかし、まだGPMの秋の「大物祭」は終わったわけではない。本日はすでに紹介した2作に続くGPMの大物、ポーランド軍戦車 PT-91 ”Twardy”を紹介しよう。

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「PT-91」とはあまり日本では聞かない名前だが、ソビエト戦車T-72の発展・改修型である。
これのどこが「大物なのか」という疑問を持った読者は表紙写真をよく見ていただきたい。このキット、スケールがいつもの陸戦スケール25分の1ではなく、16分の1なのだ。こりゃ大物だ。
なんか納得いかない読者もいるかも知れないが、ここは実車の話でもして誤魔化そう。

ポーランド軍は東西冷戦の「最前線」東ドイツが突破された場合、「本丸」であるソビエトにNATO(北大西洋条約機構)軍が押し寄せてくるのをできるだけ防がなければならないと共に、西ドイツ軍が崩れた場合にはただちに西ヨーロッパになだれ込む重要な役割を有していた。そのため、ソビエトは東欧圏ではチェコスロバキアと並んで工業力の高いポーランドに主力戦車T-72のライセンス生産を許可していた(厳密にはT-72そのままではなく、ちょっとだけパワーダウンした、いわゆる「モンキーモデル」であった)。
わしらがガキの頃ぁ、大挙押し寄せるワルシャワ条約機構軍の無数の戦車群に対して劣勢なNATO地上軍は戦術核を使用、そのままなし崩し的に全面核戦争に…………ってなシナリオがよく語られたもんよ。

幸いなことに、ポーランド軍のT-72が西側と砲火を交えることはなかったが、1990年代後半に入り状況が変化する。
1991年、ソビエトが崩壊しソビエト兵器の維持、拡充が難しくなる。と、同時にこれはソビエト様の顔色を伺わずに兵器の更新ができるようになったことも意味した。
さらに同年、湾岸戦争が勃発。イラク軍は主力戦車としてT-72を装備していたが、米軍のエイブラムス、英軍のチャレンジャー戦車にアウトレンジで一方的に撃破されてしまう。
これによりT-72の評価は暴落。「えーマジT-72!?」「第二世代MBTが許されるのは70年代いっぱいまでだよね!」と言われてしまったポーランド軍は急ぎ新型戦車を調達する必要に迫られたが、ソビエトはすでに崩壊。西側に「戦車ください」って言うわけにもいかない、いまから新世代戦車開発ってのもいつモノになるかわからない、ってわけでT-72を魔改造して新型戦車にパワーUPすることを計画した。
改修は多岐に渡ったが、重要なものとしては各種センサーと弾道計算機が連動した新型射撃管制装置の導入、夜間暗視装置の強化などの主砲命中率の向上、砲塔正面で40センチもありながら湾岸戦争ではポッコンポッコン撃ちぬかれてしまった装甲を反応装甲で補うことでの防御力向上、そして機関換装による機動力の向上である。

これらの改修により生まれ変わった新型T-72はPT-91「Twardy」(「堅固な」を意味するポーランド語)と名付けられる。
PT-91にはまだ実戦経験がない(現代戦車のほとんどがないけど)のでその実力は未知数だが、韓国製K-1戦車などを破ってマレーシア陸軍に主力戦車に採用されるなど、「安価だが十分な性能」という評価を得ているようだ。
なお、ポーランドは1999年にNATOに加盟。これによりドイツ製レオパルド2戦車が購入可能となりポーランド陸軍は100輌以上のレオパルド2を購入した。しかし、数的にはまだ700輌以上保有しているT-72がポーランド軍の主力を占めており、これが順次PT-91に改修されていくとすれば、まだしばらくはPT-91の出番は無くならないだろう。

それでは、さっそく強く、そして一層カッチョ良くなった新型T-72、PT-91の姿をGPMの完成見本写真で見てみよう。

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増加装甲で形状がわかりにくくなっているが、この車高の低さと転輪は間違いなくソビエト戦車。それがNATOの三色迷彩してるもんだから、なんとも不思議な感じの仕上がりだ。車体前部にペローンとある板はなんだか硬そうに見えるが、ただのゴムの板で、切れ目が入って屋台のノレンみたいになっている。これは指についた醤油を拭うための装備ではなく、たぶん車体下に飛び込んでくる対戦車ミサイルを防ぐためのものだろう。ミサイルは極論すれば、なにかに当たれば弾頭が作動してしまうので、こんなんでもいいのよ。

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装甲に貼り付けてある板チョコのようなものが反応装甲。砲弾が命中するとこの板チョコが爆発し、貫徹力を減じたり、エネルギーの方向を逸らしたりするものだ。なんか、この説明だとそんなの意味あるの? って感じだが、火炎ジェットで装甲を突き通す「成形炸薬弾」にはなかなか有効らしい。ちなみに自衛隊でも一時採用が検討されたが、もしもの場合に爆発する装甲では周辺にいる歩兵に余計な被害が及ぶ、という欠点が重要視され採用には至らなかったそうだ。
あと、車長用ハッチの大げさな「盾」は本当に必要なのかい?

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ハッチからちらりと見える車内にも要注目だ。どの程度の再現がされているのかは情報がないが、見えている範囲では現代戦車のメカ、メカ、メカの塊である車内の雰囲気もよく再現されているようだ。砲塔後部の雑具箱の凝ったディティールも見逃せない。

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大型予備燃料タンクが、いかにもソビエト戦車らしい車体後部。フランスのルクレルク戦車だってこんな感じのタンクつけてるじゃん? ってのは気にしない。このアングルだと、増加装甲がないのでT-72の面影を良く残している。
タンクの下に挟んである棒は泥濘脱出用だろうか?

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車体前部をクローズアップ。フェンダーに書かれた機甲科を表すNATO兵科記号が誇らしげだ。履帯は99ポーランドズロチ(約3000円)で同時発売となる立体彫刻済みの別売り履帯だろう。ちなみに実車はゴムパッドを履帯に貼り付け、舗装路へのダメージを抑えることもできる設計となっている。

「おや、T-72の様子が……」「おめでとう! T-72はPT-91に進化した!」というポケモン的なPT-91戦車。今回GPMから発売されるこのキットはスケールは16分の1というビッグスケール。このスケールだと車体だけでも43センチ、砲身を前に向けると砲身の先までは約60センチという「大物」キットだ。難易度はもちろん3段階評価の「3」(難しい)、定価は130ズロチ(約4300円)となっている。また、前述の通り立体彫刻済み履帯は99ズロチ、またレーザーカット済み芯材用厚紙は79ズロチ(約2600円)で同時発売となる。

第二次大戦や第一次大戦の戦車は、なんかどうでもいいもんでもけっこうキット化されているカードモデルだが、実は戦後の戦車、特に第二世代MBTというのは意外にもキットの数が少ない(第三世代主力戦車なら、レオパルド、チャレンジャー、エイブラムスはけっこう手に入る)。例えばT-72はメジャーではFlyModelのキットが一つある限り、チーフテンやパットン、ましてや我等が74式戦車なんて、まるでキットが存在しない。まぁ、あの砲塔のカタチはカードモデルじゃ難しいか。
そういったわけで、数少ないこの時代の戦車キットのリリース、しかも16分の1での堂々ビッグモデルの登場を第二世代戦車ファンのモデラーはこのキットを見逃すべきではないだろう。
さすがの日本びいきのポーランドメーカーも、いまさら74式は出してくれないだろうなぁ……



写真はGPM社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

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デカ!

PT-91はマリーモデルが1/25で出しているから、GPMは1/16にしたのかな。
さすがに1/16はデカイですよね。1/25で出してくれないかな~
第二世代といったら、最近Modelikがレオパルト1を出しましたよね。
74式出してほしいですよね。砲塔の形より、自衛隊が協力してくれなさそうなんで内部再現は難しそうですね。

Re: デカ!

あっさいさん、コメントありがとうございます!
あわわ、PT-91はマリモデのキットがありましたね。すっかり忘れていました……あちらも、かなり気合の入ったキットらしいですね。バッティングするのがイヤなら、T-72で出せば良さそうなもんですが(笑)
MODELIKのレオ1も、「やっと」という感じですね。現代戦車はなかなか出ないのに、BRDMやBTRはやたらと充実している不思議。
考えてみれば、東側の博物館に74式は飾ってないっていうのはキットが出ない原因としてありますよね。やはり、ここは日本人デザイナーが一つ奮起するしかないのか……90式や10式も、25分の1で各国主力戦車と並べて見てみたいですね!
これからもよろしくお願いいたします!
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