Orel ソビエト製トラクター МТЗ-80

昨日は更新するつもりが、横になったらそのまま眠ってしまってどうもすみませんなのだが、それはさておき、カードモデル界ではミリタリー、鉄道、建築物と並んで「重機・農機」の人気が高いことはヘビーなカードモデラーの読者諸氏ならすでにご存知のことだろう。
今回は、そんなカードモデルの定番ジャンル「農機」の中からウクライナOrel社の2010年の年末ごろの新商品、「トラクター界のT-34」と筆者の脳内で呼ばれているソビエト製トラクター МТЗ-80を紹介しよう。

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東側諸国では超メジャーアイテムのМТЗ-80だが、あいにくと「月刊農機グラフィックス」や「マンスリー農機ジャパン」のような農機専門誌がまだない日本では、その存在はあまり知られていない。筆者も良く知らないので、ここはマイナーアイテムの強い見方、Wikipedia様に頭を下げて情報を教えてもらおう。

МТЗ(MTZ)とは、Мінскі трактарны завод、すなわち「ミンスクトラクター工廠」の頭文字である。第二次大戦が終わったとき、ソビエトの産業は軍事に偏重しており、農村は危機的な状況にさらされていた。そもそもが重工業化の推進を命題にしていたソビエトでは「農業の近代化」の掛け声とは裏腹に、農村の機械化は遅れていたのだ。そういえば、革命直後のソビエトで革命干渉軍から分捕った英軍のマーク4菱形戦車をトラクター代わりに鋤を引かせてる動画を以前に見たが、いくらなんでもありゃプロパガンダ用のやらせ映像だろう。

戦前から持ってたフォードなんかのトラクターもそろそろくたびれ果ててぶっ壊れる寸前なので、ソビエトは急ぎ農業の近代化、効率化のために国産トラクターを生産する必要に迫られていた。そういったわけで1946年5月29日、ベラルーシ(白ロシア)の首都ミンスクにミンスクトラクター工廠が設立される。そういえば、昔仕事の関係でミンスクが話の焦点となった時、上司がミンスクのことを「ミンクス」とずっと言っており、『(ティファニー・)ミンクスはアメリカのポルノ女優の名前ですよ』と、何度も指摘しようと思ったが結局は黙っていたのも今ではいい思い出です。H専務、お元気でしょうか。

とはいえ、いくら急いでいるからとは言え、「今日からトラクター生産よー!」「ほい来た、ガッテンだぁ!」とパッコンパッコン本格農業トラクターの生産が始まるわけはなく、MTZでは当初は軍用の火砲牽引車や戦車の車体の設計を流用し、履帯を履いてクレーンやドーザーを装備した車両を生産していたが、これら車両のエンジンは巨大で、トランスミッションの寿命も短かいものだった。
いやいや、農場で収穫したジャガイモ山積みにしたトレーラー引っ張るのに、そんな大馬力もゴージャスな足回りも必要ないから、ということで1950年代には「頑丈、単純、安価」をコンセプトに装輪トラクターの生産が開始される。

МТЗ-80は、その前身МТЗ-50の拡大版として1974年から生産が開始された。両者の主な差はエンジン出力にあり、「50」が50馬力、「80」が80馬力であるからわかりやすい。両者はコンポーネントの実に70%が共用であったというからこれぞ「ソビエト的合理主義」の発露といえるだろう。そして、細かいモデルチェンジは繰り返しながらも2000年以降は名称を「ベラルーシ80」に変えて今でも生産が続いている、というのだから驚きだ(生産数はバリエーション車両も含めると150万両に達すると言われている)。旧ソビエト、東欧圏はもちろんのこと、EU諸国やさらにはアメリカにまで輸出されているという。

『ソビエトのトラクターはどれもひどい品質でガタガタ、西側の基準から見ればただのポンコツなガラクタ』と冷戦中にはよく言われたが、MTZがソビエト人民の胃袋を満たすための食料闘争に果たした役割を考えると、これは不当に低い評価だと言わざるを得ないだろう。たしかに、軍用車両のために農機の生産は材料の面で多数の制約を受けており、ゴムや塗料といった化学的な品質はかなり劣っていたことは事実である。しかし、1991年のソビエト崩壊後、「ベラルーシ」のブランドで再出発を図ったMTZは、それまでの悪評を跳ね返し「頑丈、単純、安価」な使いやすい車両であるという評価を勝ち取り、現在でも世界中のトラクターの約1割前後はMTZ(ベラルーシ)の車両であるという。

さて、そんなトラクターの超決定版、МТЗ-80をOrelのページから持ってきた試作ホワイトモデルで見てみよう。

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うん。トラクターだ。
他に何を書いていいのかわからないぐらい、トラクターだ。
たぶん、東欧圏のトラクターマニアが見れば「あー、これは○○年型だね。もっとも、キャビンは○○年ごろの特徴があるから、改修車両を参考にしたんじゃないかな?」みたいな話がスラスラと出てくるのかも知れないが、こちとらついさっき「あー、トラクターってのも面白いなー」と思い始めたニワカトラクターファンなので勘弁していただきたい。

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シャーシ部分も再現されているとはいえ、もとの車両がそんなに複雑な構造ではないのでモデルも構造は簡単な方だ。エンジンも80馬力の小柄なものなので、こんな感じのディティール。ちなみにMTZのトラクターは、輸出用にはエンジンスタートなどのためにバッテリーが装備されているが、ロシアの極寒ではバッテリーが使えなくなるので国内向けには予備として2ストロークの補助エンジンを積んでいたという。

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テクスチャは汚しのないスッキリとしたタイプ。ベテランのモデラーなら東欧圏のトラクターらしくドロドロに汚すのもいいだろう。ただし、あまり汚しすぎてうっかりゴミと間違えて捨ててしまわないよう注意は必要だ。
なお、一部のページは裏面はベタ塗りながら両面印刷となっているという情報もある。
また、完成見本には写っていないが、キットには表紙にも書かれている2軸の荷車が付属するそうだ。

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組み立て説明書はライン表現でクローズアップ式だが、ひとつのブロックの様子を複数の角度から眺める構成となっているのが面白い。エンジンやキャビンなどのブロックごとにさまざまな角度からの完成図が添付されているのも立体を把握する手助けとなりそうだ。

Orel ソビエト製トラクター МТЗ-80はスケールは陸戦スケールの25分の1で全長約15センチという小粒なキット。難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価も79ウクライナフリブニャ(約900円)とお手軽なものとなっている。
МТЗ-80の登場を待ちかねていた東側トラクターマニアのモデラーには当キットは当然のマストアイテムだが、陸戦スケールでのリリースを利用し、現用兵器の情景に組み込むのもおもしろいだろう。
腕に覚えのあるカードモデラーならヤンマーやイセキ、クボタなどのトラクターをスクラッチして違いを比べてみるのもおもしろそうだ。むしろ農機のメーカーさん、販促もかねてカードモデルの配布/販売をしてみてはどうでしょう。なんなら、自分が展開図書かせていただきますんで、ひとつよろしくお願いします。


キット画像はOrel社サイト公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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