Orel ソビエト戦艦 ”Парижская коммуна”

連日の猛暑続く日本列島。だが、この暑さにめげるどころか、むしろ夏という季節を利用し合同紙船観艦式を行っている紙船モデラー達もいると聞き、海系モデラー諸氏のバイタリティには頭が下がるというか、あー、いいなーいいなー楽しそうだなー、という思いである。
そんな「アウトドア派モデラー」諸氏への応援の意味も込めて、今回は艦船キットの紹介をしよう。
本日紹介するのはウクライナOrel社の2011年1月の新作、ソビエト戦艦 ”Парижская коммуна”だ。

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いまさら1月にリリースされたものを「新製品」として出してくるのもどうかしてると思うが、まぁこのサイトを見て「こんな新製品が!? 今すぐ買わなきゃ!」ってお金を握り締めてカードモデル屋に走っていく人もいないだろうから見逃していただきたい。なお、紹介が遅れた理由は、夏を待っていたからではなく、単に忘れていたからだ。どうもいい加減ですみません。

ソビエト戦艦 ”Парижская коммуна”(パリジュスカヤ・コンムナ)はロシア/ソビエト最初のド級戦艦、「ガングート級」の1隻であり、同型艦「マラート」「ガングート」と共に第二次大戦に参加したソビエト大型艦艇の中で最も活躍をした殊勲艦であるといっても過言ではない。いや、言い切っちゃうとちょっと過言か。最も活躍をした殊勲艦であるようなないような、ま、そんな感じの艦ということでここは皆様、ひとつ穏便に済ませようではありませんか。

ガングート級はもともとは日露戦争でボコボコに負けて壊滅状態になってしまったロシア海軍を立て直すためにロシア帝国が建設した艦であった。同型艦は4隻建造され、各艦の名称は「ガングート」「ペトロパブロフスク」「ポルタワ」「セヴァストポリ」と、ロシア帝国の著名な戦いのあった戦場の名を取っていた。肝心の「パリジュスカヤ・コンムナ」が入っていないが、後で出てくるので待ってほしい。
1914年、第1次大戦が勃発。完成した新型戦艦はバルト海に突入してくるドイツ艦隊を待ちうけ、睨みを利かせていたがドイツ艦隊は宿敵イギリス艦隊との戦いに忙しくて東にはやってこなかった。しょんぼり。
1917年、ロシア革命。バルト艦隊の水兵達は革命軍側としてこれに参加し大きな役割を果たしたが、革命によって打ち立てられたソビエト政権にも「あれ、なんか思ってたのと違うぞ?」と違和感を募らせていく。
そして1921年、今度は「クロンシュタットの反乱」で水兵達は言論や集会、結社の自由を認めた、より穏便な社会主義政権を求めて蜂起するが反乱はソビエト正規軍によって鎮圧されてしまう。
反乱を起こすなんてけしからん! とソビエトの偉い人たちは激怒し、生き残った水兵達にも過酷な弾圧が加えられたが、「そもそも、戦艦が反革命的だ! 即刻解体! 世界同時革命万歳!」とは、ならなかった。だって、戦艦もったいないもの。そこで、各艦はとりあえず名前を「ガングート」→「オクチャブルスカヤ・レボルチャ」、「ペトロパヴロフスク」→「マラート」、「ポルタワ」→「ミハイル・フルンゼ」、「セヴァストポリ」→「パリジュスカヤ・コンムナ」へと革命的に変更することとなった。
それぞれに簡単な解説を加えると、「オクチャブルスカヤ・レボルチャ」はズバリ「十月革命」、「マラート」はフランスの革命家「ジャン=ポール・マラー」(お風呂で死んでる絵で有名な人)、「ミハイル・フルンゼ」は革命軍の将軍、そして「パリジュスカヤ・コンムナ」は「パリ・コミューン」(フランスで興った市民革命)にちなんでいる。革命的な名前で各艦とも革命度グーンとUP! というわけだ。
「十月革命」と「ミハイル・フルンゼ」は全然文句内ないのだが、「マラー」と「パリ・コミューン」って、いくら革命的だからって外国の偉人や事件の名前を勝手につけちゃっていいんだろうか。日本の戦艦に「強そうだから」って理由で「呂布」とかつけたら、ワケワカランくなると思うぞ。そういえばファミコンの「1943改」というゲームは、レーザービームを発射するP-38ライトニングが大和みたいなカタチの戦艦「董卓」と戦う、すごいゲームだったなぁ。

そんなわけで各艦はパリっと革命的になったのだが、「フルンゼ」はいつの間にか火事で大破。それから黒海で造っていたガングート級を発展させた「インペラトリッツァ・マリヤ」級戦艦3隻は革命のゴタゴタでなんとなく爆発したり沈没したりして文字通り全滅。ソビエトの保有する戦艦は3隻になってしまった。
太平洋はもう、この際諦めるとして、黒海に海上戦力がないというのは、いろいろ都合が悪い、というわけでパリジュスカヤ・コンムナは黒海艦隊に移籍されることとなり、旧式戦艦らしい真っ直ぐ切り立った艦首を遠洋航海もお任せ風の尖った艦首に改造して黒海を目指したが、フランス沖合いで嵐に遭遇して新調した艦首がぶっ壊れてブレストに入港させてもらって修理した、っていうんだからどこまでダメダメなんだソビエト海軍。
そんな苦労をして黒海に到着したパリジュスカヤ・コンムナだったが、第二次大戦が始まると、もちろんドイツ戦艦やイタリア戦艦が黒海にやってくる事なんてあるはずがなかった。
ドイツ地上軍が黒海の要衝セヴァストポリ要塞に迫ると、パリジュスカヤ・コンムナは負傷兵を満載し、ドイツ・ルーマニア地上軍に艦砲射撃を浴びせながらカフカズ山脈方面へ後退。その後は奇襲上陸などを支援するために何度か出撃し、ドイツ地上軍に砲撃を加えているが、優勢なドイツ空軍の急降下爆撃により艦の失われることを恐れた(事実、バルト海に残った2隻はドイツ軍の爆撃で大破・行動不能となっている)ソビエト軍は艦を温存することを選び、行動は鈍くなっていく。燃料、弾薬の消費もバカにならないし。
1943年、せっかくセヴァストポリでがんばったんだから、ってことで艦名をもとの「セヴァストポリ」に再度変更。イギリスが「レーダー貸してあげるよ」って言うんでレーダーを装備したりもしたが、別に特にすることもなく終戦。1945年7月に「よくがんばったね」と艦に対し赤旗勲章が授与される。
1954年、練習艦となり、56年に除籍、57年にスクラップとなった。

そんな、地味なんだけど、他の艦はもっと地味すぎて思い出せないので、第二次大戦ソビエト艦の中で屈指の活躍をしたってことになった戦艦パリジュスカヤ・コンムナが、ついにOrelからキットとしてリリースされた!
されたのだが、完成見本写真がない!

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仕方がないので、公式フォーラムで拾った展開図画像を載せておこう。
テクスチャは汚しのないタイプだが、甲板の木目は質感表現がされているようだ。甲板のパーツで平面図がだいたいわかるが、平らな甲板に前後2基づつ、ぺろーんと砲塔が乗っているスタイルがなんともクラシカルだ。

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組み立て説明書はライン表現のクローズアップ方式。緻密な図が製作意欲を刺激する。ちなみに、公式フォーラムでの画像は他のキットととゴチャゴチャになってアップされていたので、全然違う艦の組み立て説明書や展開図だったらごめん。

Orelのソビエト戦艦”Парижская коммуна”はド級戦艦としては初期のものとはいえ、海戦スケール200分の1で完成全長約90センチという堂々たるもの。難易度も堂々3段階評価の「3」(難しい)だ。
Orel製品はポーランド製品に比べ、やや安い値段設定でお馴染みだがさすがに今回は定価225ウクライナフリブニャ(約2500円)となっている。また、ポーランドGPM社からはこのキット向けに真鍮砲身セットが45ポーランドズロチ(約1500円)、レーザーカット済み芯材用厚紙セットが90ズロチ(約3000円)で発売となっている。

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クロンシュタット軍港では爆撃で着底したままドイツ軍を砲撃したり、黒海では負傷兵を撤収させるついでにドイツ軍を砲撃したり、と大国の主力艦とは思えない地味な活躍を残したガングート級だが、地味すぎてこれまではキットに恵まれていなかった。
しかし、今回のこのOrelのキットの発売により、第二次大戦欧州海戦記に空いていた、地味な穴がついに塞がることとなる。
このキットはソビエト海軍マニアのみならず、紙船界に地味にデビューを考えているモデラーにも、見逃せないキットとなるだろう。



キット画像はOrel社サイト公式フォーラムから、オプションパーツ画像はGPM社ショップページからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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ソビエト海軍万歳

こんなマイナー艦まで製品化されるなんて・・・恐るべしカードモデル界の懐の深さ。
巡洋艦のクラスヌイ・カフカスまでもがモデル化されている為,ヴォロシーロフをキーロフのキットから作れば,第二次大戦時のソビエト黒海艦隊は巡洋艦以上なら卓上に再現可能です。
このモデルも手に入れたいのですが,未成艦が多すぎるので手控えているところです。

Re: ソビエト海軍万歳

azukenさん、今晩は!
おおっ、紙の黒海艦隊、いいですね!! 白い紙で黒い海の赤い艦隊を再現!
いつの日か、azukenの手でモーターライズされたラジコン黒海艦隊の勇姿を拝める日を楽しみにしております。 
それにしても、本当に、こんなマイナー艦が堂々キットになってしまうカードモデルの世界の広さ、そして最大の艦艇が「マイナー」と言われてしまうソビエト艦隊のトホホぶりには感服せざるを得ません(笑)
展開図公開中
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