WAK ポーランド軍試作水上雷撃機 Lublin R-XX

以前、当コーナでポーランドのWAK社のカナダ空軍練習機 DHC-1 Chipmunkを紹介した際に、「今度、WAKからLublin R-XXもリリースされるらしいぞ! どんな飛行機だか知らんけど!」と煽りを書いたのを覚えている読者も多いことだろう。わしはそんなことを書いたような気もするが、どこに書いたか思い出せなくて小一時間、自分のブログを読み返していたが、Lublin R-XXのリリースを今や遅しと待ち構えていた全国のポーランド軍水上機マニアの読者諸氏にやっと朗報をお伝えする事ができる。去年8月に「出るらしいよ」と言ったLublin R-XX、今年も暑くなりはじめたこの時期についに登場である。

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うむ。なんだか戦前のフランスの寝ぼけた感じの爆撃機を彷彿とさせる、ホンワカしたスタイルの飛行機だ。
「Lublin」というのは会社名ではなく、ポーランドの都市ルブリンのことで、Lublin R-XXはそこにあった「Plage i Laśkiewicz」(Plage & Laśkiewicz)社で開発された飛行機である。P&L社はもともとは蒸気機関の機械製作を行っていたが、1920年代に先見性を発揮したのか、あるいは単に趣味で「これからは飛行機だYO!」と奮起して航空機製作に乗り出す。当初はイタリアのアンサルドA1”バリッラ”とか同じくアンサルドA300なんかのライセンス生産を行っていたが、経験不足から少々品質は悪かったようだ。それでも頑張って飛行機製作を続け、ポテーズ15とかポテーズ25とかの生産を経て、1930年代には名機Fokker F.VIIb/3mのライセンス生産も行った。
また、20年代中盤からは独自の航空機デザインも始め、ポーランド軍に採用された軽偵察/連絡機のLublin R-XIIIは270機というポーランド航空界としては破格の大量生産を行われたベストセラー機となった。

さて、1930年、ポーランド国防省は海軍のための雷撃機の仕様を発表する。ポーランド海軍は空母を持っていないので、水上機であることが条件だったようだが、P&L社はこれに「フォッカーF.VIIにフロートをつけた水上機はどうでしょう!」と提案したが、これはあっさりと無視された。そこで次にP&L社は複葉爆撃機Lublin R-VIII爆撃機にフロートをつけた水上機型を3機試作し、「これならいいでしょう!」と国防省へと提出する。いくらなんでも1930年代に複葉はないでしょう、とも思ったが、イギリス海軍のソードフィッシュ雷撃機の初飛行が1934年だ、性能がよければあるいは?? と思ったものの、速度が遅い上に、肝心の魚雷搭載能力がない(なんで、そんなものを雷撃機の試作機として応募したんだ……)ということで、これも不採用。
これじゃいかん、と悟ったP&L社では真面目に設計に取り掛かり、より近代化された案として設計されたのが、Lublin R-XXだった。国防省も、このスラリとした機体には納得、PZL-18と PWS-62という、これまた聞いた事のない設計をおさえて試作が命じられる。
1934年6月、試作機は海軍航空隊の手で試験を受けたが、重心が後ろに寄っているために離水がしづらく、エンジンナセルを前方へ延長してバランスを取ることが要求された。
1935年4月、改修を受けたLublin R-XXはちょっと重心が怪しいけど、大体OKよ! と判断される。しかし、1934年にはすでにドイツではドルニエDo17が飛行しており、開発に時間のかかったLublin R-XXはすでに旧式化していた。そこで、再びLublin R-XXは工廠へ戻され、さらなるパワーアップが計画されたが、そこへ大きな不幸が襲う。
P&L社が倒産したのだ。
この倒産、実は航空業界の再編・国有化を狙った国防省の陰謀だったという説がある。国防省はP&L社にR-XIIIFを50機発注、7機を受け取った時点で「やっぱイラネ」と注文をキャンセルしたのだ。軍の発注なら手堅いとウハウハだったP&L社はこれで一気に財政が悪化、倒産に追い込まれてしまう。P&L社の工場を「LWS」(ルブリン航空機工廠)として国営化した国防省は、完成間近だったR-XIIIF、18機を「しかたないからゴミを片付けてやろう」とスクラップとして買取ってから完成させ、さらに32機を追加製作したというのだから、こりゃP&L社の関係者は納得いかんだろう。
そんなゴタゴタの最中、Lublin R-XXは「LWS-1」と名前が変更され、プロジェクトは細々と続いていたが、「もっと新しいLWS-5水上雷撃機ってのを思いつきました!」ということで1936年、計画はアッサリと終了となった。
なお、このLWS-5は完成せず、結局ポーランド海軍は水上雷撃機としてイタリアにCANT Z.506を発注するが、1機届いたところで戦争が勃発、届いた一機にはまだ武装がされておらず、Lublin R-XX試作機も1938年にスクラップとなっていたためにポーランド海軍は水上雷撃機を持たないまま戦争に敗北した。

そんな、一機を語るつもりが思わず一社を語ってしまう羽目になってしまうような幻の機体、Lublin R-XXがついにWAKから登場だ!

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でも、完成写真が表紙のアングルとこれしかないのよね。確かに、ちょっとお尻の重そうなスタイルだ。1934年にこのスタイルじゃ、量産していたとしても、ドイツ空軍の餌食となったことは想像に難くない。開放コクピットがなんともクラシカル。
でも、戦うつもりでなければ、なかなか魅力的なスタイルであることも事実だ。中央キャビンに向けて機首からの線がスルスルと上っているのもチャーミング。剥き出しのただの円柱の銃座が土管みたいで、上でしゃがむとドギュンドギュンドギュンという効果音と共に地下ステージへ行けそうだ。

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テクスチャは汚しのないスッキリとしたタイプだが、強度を増すための表面のポコポコした補強の凸ミゾなんかは影で凹凸が表現されている。この淡いグリーンはポーランド海軍機の標準塗装なのだろうか。

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組み立て説明書はライン式で、ステップ・バイ・ステップとクローズアップの中間的な表現となっている。サンプルの画像を見る限りでは、機内もなかなか凝った作りとなっているようだ。なお、爆弾架と魚雷は選択式でどちらか片方の装備となる。

WAKのポーランド軍試作水上雷撃機 Lublin R-XXはスケールは航空機スケールの33分の1で全長約50センチ、全幅約80センチというなかなか堂々としたサイズ。難易度は5段階評価のうち「4」(難しい)、定価は55ポーランドズロチ(約1800円)、またレーザーカット済み芯材用厚紙が40ズロチ(約1300円)で同時発売となる。

Lublin R-XXを運命に玩ばれた悲運の機体と見るか、時代遅れなのにうっかり量産されてドイツ軍に血祭りに挙げられずにラッキーだったと見るか、評価はわかれそうだがポーランド軍水上機ファンにとって、このキットが見逃せない一品であることは確かだろう。




写真はWAK社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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