GPM ポーランド軍モニター艦 「Warszawa」、「Horodyszcze」、「Toruń」

先週休止したせいで、なんかやたらと久々の気がする新製品紹介だが、カードモデル界では夏休み前のリリースラッシュとなっている。今回は、その中からポーランドGPM社の新製品、ポーランド軍モニター艦「Warszawa」を紹介しよう。

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で、出てくるアイテムがこれですよ。君らはモニターとか河川砲艦とかの地味な船がどんだけ好きなんだ。
ロシア帝国の崩壊で独立したポーランドは連合軍が「ポーランドにも海への出口を上げよう!」と海岸線を領土に入れたものの、そこには漁村しかなかった、というテケトーな領地分割でひとしきり関係諸国の怒りを買い占めたことは以前にポーランド大西洋航路客船「BATORY」の記事に書いた通りだが、そんな海岸線でもせっかくもらったんだからポーランドとしては大事に守っていきたい。ボードゲーム「カタンの開拓者たち」だって、海への出口を持ってないと終盤は絶望的だ。そこで創設間もないポーランド海軍は防衛戦力を獲得しようと思ったが、「艦船ください」と言って「あいよ」とくれる国はない。仕方が無いのでポーランドは本当はもらえるはずだった(かもしれない)ダンチヒ自由市のグダニスク造船所に4隻のモニター艦を発注した。それが、この「ワルシャワ級である」
4隻にはそれぞれ「ワルシャワ」「ホロディシュチェ」「トルニ」「ピンスク」と、ポーランドの都市名がつけられたが、なにしろ、ポーランドはまだ港を水深の浅い漁港レベルのグディニヤしか持ってないのでワルシャワ級はとっても広くて浅い船体で排水量わずか110トン、武装は100ミリ(105ミリとする資料もある)単装砲塔一基、75ミリ連装砲塔1基をつんだ愉快な形状となった。思わず「そんな装備で大丈夫か」と聞きたくなるが、そんなこと言われても他に選択肢がないんだからしょうがない。
なお、ポーランドは第一次大戦停戦直後からソビエトと戦争状態にあったが、革命で大型艦艇が全部スクラップ寸前になったソビエト海軍と、漁村を守ってチャプチャプ浮いているポーランド海軍モニター艦隊の間では戦闘が発生するはずもなかった。
そんなわけで建国の危機を乗り越えたポーランドだが、その後、漁村グディニヤが開発によりバルト海沿岸屈指の良港に大変身。この「田舎のイモっぽい女の子が金曜の夜は眼鏡を取って超イケイケに大変身!」みたいな展開によりポーランド海軍は急速に拡充され、オモシロ艦のワルシャワ級はさすがに見劣りするようになり、浅い喫水を利用して河川用砲艦へと転身する。
1939年9月、今度はドイツがポーランドに侵攻。ついでにソビエトもポーランドに侵攻。大陸軍国に東西から攻め込まれたら、河川砲艦どころじゃなくってポーランド軍は崩壊。4隻のモニター艦隊は9月18日、枕を並べて全艦が自沈した。
ところが、これで話は終わらなかった。川に沈んでるモニター艦を見て小躍りしたのが、戦車砲塔を積んだ河川砲艦をうっかり300隻も作っちゃったぐらい河川砲艦が大好きなソビエト軍。あっという間に4隻を引き上げ、電光石火の勢いで修理して10月24日、今度はそれぞれがソビエトの都市名を与えられて(例えば「ワルシャワ」は「ヴィテブスク」になった)ドニエプル艦隊に編入される(ドニエプル河まではどうやって運んだんだろう??)。
1941年6月、ドイツが今度はソビエトへ侵攻。元ポーランドモニター艦隊はドニエプル河とその支流でドイツ軍と果敢に戦うもソビエト軍は敗退する一方であり、4隻は脱出できずに7月から9月にかけて次々に自沈、廃棄された。
ドイツ軍は河川砲艦に魅力を感じず、わざわざこれを再浮揚させることはなかったが、1944年8月、ドイツ軍を押し返してドニエプル河まで戻ってきたソビエト軍はまたもや「ヴィテブスク(元:ワルシャワ)」を引き揚げるも、今度はさすがに修理せずにスクラップとなった。

書いてて面白くなってきて、いささか説明が長くなってしまったが、こっからはキットの話だ。
まずは公式ページから引用した完成見本写真を見てみよう。

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ひらべったーい。とってもひらべったいぞー。
なんだか手抜きみたいなカタチだが、ホンモノがこういう形をしていたらしいから仕方ない。

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ところどころに見えるミニ砲塔は機関銃をおさめた自衛用の銃塔。わざわざ装甲砲塔式にする必要があったんだろうか。おもしろいからいいけど。錨がなんだかテケトーに甲板に引っ張り上げてあるのも楽しい。
なお、このキットは1920年、1930年、1939年の各状態が組み立てられるコンパチキットとなっている。

さて、先週休んでしまった代わり、というわけでもないが今回は関連性の深いキットをもう一つ紹介しよう。
本日第二のアイテムは、ポーランド軍モニター艦 「Warszawa」と同時にリリースとなったポーランド軍モニター艦 「Horodyszcze」/「Toruń」だ。

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同じじゃねーか!

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いや、良く見るといろいろと差異がある。
まず、真っ先に目を引くのが全体に施された迷彩だが、おそらくこれは河川砲艦時代の塗装なのだろう。だって沿岸とはいえ海でこの迷彩じゃ目だってしょうがないもの。

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他にも、艦橋が妙にスッキリしていたり、艦載艇がなくなってたりするが、船体両脇の大きなバルジは浅い川底につっかえないようにさらに喫水を上げるための改造だろうか。ここまで書いておいてアレだが、こっちが建造当時の姿だったら、ごめん。
どうやら、こちらのキットでは状態はこの一種類しか選べないようだが、その代わり「Horodyszcze」と「Toruń」、2隻のコンパチキットとなっている。唯一キット化されなかった「Pińsk」が欲しかった人はどうすりゃいいんだ。

GPMよりリリースされた、沈んで浮いてまた沈んで、と数奇な運命を辿ったポーランドワルシャワ級モニター艦のキットは、小艦艇スケールの100分の1でも全長が35センチという小柄な艦。難易度表示が3段階のうちの「2」(普通)、定価はどちらのキットも1冊30ポーランドズロチ(約1000円)というお手軽な設定となっている。
完成するのが聞いた事もないポーランドの船だということさえ我慢すれば、これは艦艇初心者の艦船初挑戦に最適なキットと言えるだろう。
もちろん、ポーランド海軍ファン、モニター艦ファンにはそれぞれのバリエーションを楽しむために複数購入をオススメしたい。
そんな、艦船モデラーにも、それ以外にもオススメのこのキットだが、残念ながらラジコン紙船ファンのモデラーにだけはオススメできない。だって、この艦形じゃ、隣を200分の1の駆逐艦が疾走しただけで引っくり返りそうだもの。



写真はGPM社サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。


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あまりにディープな・・・

こ,これは!?

ポーランド軍のモニター艦っすか。
マイナー艦好きの私ですらも,あまりにもディープ過ぎて眩暈がしてきそうです。
あったんですね,こんな深い世界が。
迷彩塗装のモニターは,なんだか太ったガトー級潜水艦に見えなくもない気がします。

Re: あまりにディープな・・・

たしかに、左右にバルジをつけると遠目に潜水艦みたいですね。色使いがハデなので、ビートルズの「黄色い潜水艦」のような……
単純な形と相性がいいのか、モニター艦のカードモデルというのは意外と多いようです。おかげで、全然資料のない艦がしょっちゅう出てきて、毎度毎度頭を抱えるはめに(笑)
展開図公開中
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