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Orel イタリア 重戦闘機 Breda Ba.88 "Lince"・後編

車を運転してる際、他人の車の無理な割り込みで危険な思いをした時は、「ナイス危険回避! ピエール・ルヴェーだったら避けられなかったかも知れんね」と自分を称賛することにしている筆者のお送りする世界のカードモデル情報。今回も引き続きウクライナOrel社からリリースされた新製品、イタリア 重戦闘機 Breda Ba.88 "Lince"の紹介。

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予定重量3トンで設計した機体が完成してみたら全備重量6.8トンで最高時速490キロというダサダサ性能になったブレダBa.88。
一応、この重量について補足しておくと、「ライバル」として比較対象にしているドイツのメッサーシュミットBf110(C型)は機体重量が約5トン、全備重量が約6.9トンだから、Ba.88が非常識に重かったわけではない。
と、いうか、もともとも双発重戦闘機の予定重量3トンが非現実的な数値だったとしか言いようがないし、武装した重戦闘機がこの程度の重さになるのは仕方ないことなのに、非武装の機体(しかも、速度記録用に乗員は1名、燃料も最低限にしていたと思われる)で出した速度記録を機体性能としてしまったのも間違いだった。

で、最高速度がちょいと遅い、ってだけならまだ救いようがあったが、いや、それもあんまり救いようがないのだが、Ba.88は飛行特性もなんかおかしくって、テスト飛行では「パイロットの思い通りに飛ばすことができないことがある」とまで酷評された。どうも、双尾翼にした垂直尾翼が双発エンジンの後流に捕まって方向舵の効果が失われる時があったようだ。また、そもそもBa.88は翼面荷重が高すぎて、「ちゃんと操縦できない上に安定しない」という、もう最悪な操縦性能だった。

逆に言えば、そんな操縦性の機体を飛ばして速度記録を出したフリオ・ニクロ・ドッリオの技能が素晴らしすぎた(単尾翼の試作だったので、もう少し操縦性はましだったとしても)。
ドッリオも、「記録は出しましたけど、この飛行機、なんか変ですよ?」ぐらい言ってやればいいのに。
あるいはドッリオは直感が優れた天才型の人物で、自分にできて、他人にできないことがある、という事実がピンと来ていなかったのかもしれない。いるよね、そういう人。「どうやるか教えて」って聞くと、「普通にやったらできた」としか言ってくれない。あれ、不親切なんじゃなくて、本当にそう思ってるらしいよ。

ついにはフラットスピンに入った機体から脱出したパイロットのパラシュート索が翼に当たって切断されパイロットが死亡するという事故まで発生し、Ba.88の生産は一旦中断される。
しかし、イタリア空軍は「ブレダ工場って、Ba.88の他に作る飛行機ないよね」という、パイロット側にしてみればどうでもいい理由でBa.88の生産を再開、最終的に149機のBa.88が生産された。これは後席が一段高くなっている練習機型8機を含む。なおBa.88はインドゥストリエ・メッカーニケ・アエロナウティケ・メリディオナーリ(Industrie Meccaniche Aeronautiche Meridionali SpA、南伊航空機械産業株式会社)という、これまたクッソ長い名前のメーカーでもライセンス生産され、149機中48機が、長すぎて名前を略してIMAMの生産だった。
イタリアの航空機生産能力は、主力戦闘機のマッキMC.200"サエッタ"と、MC.200のエンジンを換装した後継機、MC.202"フォルゴーレ"の合計で生産数約2300機とかなり低いが、それと比べても総生産数150機は少なく感じるので、ブレダ側もあんまりやる気なかったのかもしれない。

イタリアが第二次大戦に参戦した1940年6月、第7、第19の2つの飛行隊(Gruppo)が合計72機のBa.88を装備していた。
これらの飛行隊はサルディーニャ島、コルシカ島で警戒に当たっていたが、この方面への連合軍の攻撃が非常に散発的だったために大きな損害は出していない。

しかし、第7飛行隊が北アフリカへ移動すると、事態はいよいよ目も当てられないレベルに突入する。
そもそもBa.88の装備するピアッジョP.XIエンジンは信頼性が低く機嫌を損ねがちだったのに、微細な砂塵の舞う北アフリカではさらに稼働率が低下。それを防ぐために防塵フィルターをきっちりと装備したら、今度は吸気不足で性能ががた落ち。なんと最高時速は250キロまで低下したという。すいません、時速250キロって、ユンカースJu52/3m輸送機のカタログスペックより遅いんですけど。

それでも、飛べばまだいい方で、一部の機体は離陸さえできなかったので、後席の乗員、旋回機銃、余分な弾薬と燃料を降ろして、やっと飛んだり飛ばなかったり、やっと飛んでも旋回さえままならないという状況だった。
あんまりにも飛ばないもんで、調子がいい時に珍しく離陸に成功したら見慣れない飛行機が飛んできてびっくりした友軍の対空砲に撃墜されたこともあったという。とほほ。

結局、1940年の11月には戦線から回収され、最後は使用できる部品をすべて取り外してから敵機をまどわす囮として飛行場の周りに配置された。
すごいのは、こんな状況になっても、まだBa.88の生産が続いていたことだが、そもそもが工場を止めないようにラインを回していただけなので、後期生産型50機のほとんどが完成したらそのままスクラップになったとも言われている。
たぶん、何も作らないよりは良いだろうと思って生産を続けたのだろうが、どう考えても何も作らない方が良かった。

1942年、なぜか急に思い立って、翼面荷重の問題を解決するために主翼を2メートル延長し、エンジンをフィアットA.74 RC.38に換装、ダイブブレーキを増設したBa.88Mに3機が改装され1943年9月7日に第103飛行隊に配備されたが、翌日にイタリアは休戦し、ドイツに接収されたBa.88Mはどっかにいった。

それでは、この稀代の駄作機、ブレダ Ba.88 "Lince"の姿をOrel社公式フォーラムから引用した完成見本写真で見てみよう。

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キャー! カッチョいいー! スーペルカッチョいいー!(イタリア語)
けど性能はゴミ・オブ・ゴミ。完成しちゃった機体を飛行場に並べたくなった気持ちも、わかるような気がする。
あと、後部銃座の射界確保のためにレイアウト変更した双尾翼が変なかたち。それと、後部銃座が密閉されていないのも空力的にマイナスだと思うのだが、イタリア人ってそういうの気にしないんでしょうか。

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お腹。平面形もカッチョいい。尾翼の形が無駄に凝っているが、イタリア空軍は楕円翼がよっぽど好きらしい。
テケトーに接着剤でくっつけたみたいな爆弾搭載スタイルがなんだこれ、って感じだが、前回説明した通り、負荷12Gに耐えられるようにやたら複雑な鋼管骨組みにしてしまったせいで機体に爆弾倉を設けることができず、このようにむき出しでぶら下げることになったらしい。もちろん、空力的にはマイナスである。これに比べたら、後部銃座が開放されてるのなんて大した問題じゃないか。

Orelからリリースされたイタリア 重戦闘機 Breda Ba.88 "Lince"は空モノ標準スケール33分の1でのリリース。ちなみにBf110と大きさを比較すると全長がBa.88約10.8メートルに対しBf110約12メートル、全幅がBa.88約15.6メートルに対しBf110約16.2メートルで、Ba.88の方が一回り小さい。難易度は3段階評価の「2」(普通)。そして、定価はウクライナフリブニャは変動激しいんで米ドルで書いておくと、記事執筆時点で15.7ドルとなっている。
本作は、駄作機ファンにとっては、まさしく待ち望んでいた一品と言えるだろう。こんな駄作機のキット、しょっちゅう出ないだろうから、ぜひとも押さえておきたい。完成品は囮としてそのへんに置いておくのもいいだろう。

また、Orelからはイタリア空軍機として、レッジアーネRe.2000"ファルコ"もリリースされている(定価9.3ドル)。

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イタリア機ファンなら、この、なんかキモい迷彩の戦闘機も一緒に並べることで机上にイタリア空軍を再編するのもいいだろう。様々なブランドからリリースされているBf110のキットと並べるのも、なんて言うか、羞恥プレイ的でおもしろそうだ。


画像はOrel公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/Ba.88_(航空機)
日本語版、英語版、イタリア語版をそれぞれ参考とした。
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