FC2ブログ

カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史 その4

新年あけましておめでとうございます。昨年は夏以降体調を崩し気味で、終盤はグダグダになってしまいましたが、今年はもうちょっと気楽にテケトーに進めていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、長らく続いた「カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史」もいよいよ今回で感動のフィナーレ。マラソンで言えば走者が競技場に帰ってきたところだ。

前回までの3回を費やして、ポーランド陸軍は装甲車の試作、採用、ちょっと生産して運用したらみんなガッカリ、を繰り返したわけだが、その結果ポーランド軍が最終的に得たものは、旧式な鹵獲車両、その場しのぎの応急車両、走行性能がクソザコな装甲車その1、走行性能がクソザコな装甲車その2、という、もうどうしようもない状態で、ホントにどうすんだよこれ、という感じだった。
しかし、よく考えてみれば、走行性能がクソザコな装甲車その1(wz.28)の欠点、「最高時速が遅過ぎ」「サスペンションの構造が複雑過ぎ」「ゴム履帯の寿命がみじか過ぎ」という問題は、全部ハーフトラック形式が原因であった。

だったら、ハーフトラック形式をやめて、普通の装輪装甲車にすればいいじゃない。
と、いうわけで1931年、ポーランド軍はイタリアのフィアットからライセンス生産権を買って生産していたPolski Fiat 614トラックのシャーシに、wz.28のボディを載せるテストを開始する。
聞いた感じ、既存のボディ+既存のシャーシで、ホイホイっと試作が完了しそうな気もするが、なぜか試作は3年もかかって試作車両の完成は1934年初頭となった。
改修により最高時速は50キロに改善されたが、これまでのテケトーに制式採用して種類ばっかり増えたことの反省なのか、トライアルは3月末から7月末までみっちりと行われ、その結果は「オフロードでwz.28より踏破性能にやや劣る以外は全て良好」という、なんというか、まぁ、そうだろうな、という結果だった。

この成功によりさらに11両の改造が決定され、この追加車両での運用結果も良好であったために最終的にこの改修車両がwz.34として制式採用される。
最終的に90両生産されたwz.28のうち、訓練用に数両を残して全車がwz.34に改修されたが、どうやら書類上の記録に混乱があるようで、正確な改修数はいまいちはっきりしない。
勘違いされがちだが、wz.34という車両はこの改修車両が全てであり、新たにwz.34として生産された車両は存在しない。つまり、wz.28とwz.34はボディに限定して言えば、全く同一の個体である。これ、「wz.28改」とかにしておいた方がようかったんじゃないだろうか。
当然、wz.34はwz.28のバリエーションをそのまま引き継いでおり、機銃装備型とプトー37ミリ砲装備型があり、またボディの形状にも前期型と後期型があり、さらに改修時期によってエンジンがシトロエンB-14エンジン(14馬力)、Polski Fiat 108エンジン(23馬力)、Polski Fiat 108-IIIエンジン(25馬力)の3種類があるというとんでもカオス状態になってしまった。
なお、ポーランド軍はエンジンによってwz.34を「wz.34」「wz.34-I」「wz.34-II」に分類しており、ボディの前期/後期型は区別していなかった(古い資料ではボディ形状によって「wz.34-I」「wz.34-II」に区分されているが、実際には後期ボディのwz.34-Iや、前期ボディのwz.34-IIも存在するようだ)。

wz34_1.jpg

Wikipediaからの引用で、wz.34のプロトタイプ。1934年夏撮影。この角度ではわかりにくいが、砲塔が前に寄った後期型車体と思われる。人物に隠れてしまっているが、後輪はダブルタイヤだった。

ところで、wz.34の乗員は2名で、まぁ、このサイズの車両なら操縦士と砲手なのだろうが、不思議なのは同じボディのwz.28の乗員が3人となっており、改修で1人減ったことである。wz.28の3人目って、なんのために乗ってたんだろう。wz.28は無線機を積んでいないので、無線手ではない。装填手が必要となるような武装でもない。となると、車長ということになるが、このサイズの車両で車長が必要なんだろうか。いらないから2名になったのか。
それとも、あんまりにも履帯がぶっ壊れるんで、エンジニアを一人乗せてたんだろうか。あるいはゲーム「War Thunder」だと乗員が全員戦闘不能になるまで戦えるので、少しでも長生きするために乗員を増やしたのかもしれない。
ちなみに弾薬搭載量は機銃型で約2千発、砲型で約百発であった。

1939年、ドイツ軍の侵攻が間近となりポーランド軍は総動員を開始する。
wz.34は砲型1両、機銃型2両の計3両で小隊、2個小隊+中隊本部1両の計7両で中隊が編成され、全10個中隊がそれぞれ各装甲大隊に組み込まれた(装甲大隊本部にもう1両配備されるので、装甲大隊の装甲車定数は8両)。
これら装甲大隊に配置されたwz.34は偵察のみならず、不足している装甲戦力として反撃にも使用されたが、弱武装、軽装甲のwz.34を装甲戦力として使用するのには無理があり、開戦から2週間でwz.34はほとんど全滅してしまった。

ポーランド軍wz.34による最後の戦闘は9月27日、ポーランド東部のKrukienice(現ウクライナ領)で第91装甲車中隊に所属する3両のwz.34が赤軍部隊を撃退した戦いだとされている。戦いの後に、この3両は暴風雨の中湿地帯で行動不能となり、破壊遺棄された。

wz34_2.jpg

これもWikipediaからの引用で、1939年、ワルシャワで破壊されたwz.34。後面が垂直で砲塔が後ろ寄りの初期型車体と思われる。
パカっと真っ二つになって開くキューポラがおもしろいが、その奥に写っている三角形の物は白く跳んでしまって、ちょっと判別不能。手前にどう見てもパラソルにしか見えないものが落ちているが、まさかwz.34の装備ではないだろう。

wz.34は1939年のドイツ軍侵攻時、ポーランド軍で唯一まとまった数が運用されていた装甲車であり、過去にも何度かキット化されている。
ざっと確認すると、Model Card(MODELIKの前身)から1990年代初頭、またMały Modelarzから1987年にリリースされているが、これらは現在では入手も完成させることも困難だろう。

Answerからは2003年にリリースされているが、これはなぜか35分の1というタミヤスケールなので他のカードモデルキットと並べることができない。しかし、現在でも購入可能で、価格も14.04ポーランドズロチ(約460円)とお手軽なので、wz.34を手軽にコレクションに加えるためなら選択肢の一つだろう。
あと、Answerからは2019年にwz.29もリリースされていたが、見落としていて前回紹介できなかった。ごめん。

お手軽さで言えば、WAKからは32分の1でwz.34と7TP双銃塔型がセットになったイージーキットがリリースされている。

cpx_e22c90257474bf5765299b9c09196ede.jpg

表示はwz.34の前で漫才を始めるポーランド兵、という珍しい構図。味があるタッチだ。
WAKからは、同スケール、同コンセプとでwz.28とwz.29のセット、7TP単砲塔型とTKS豆戦車のセットが発売されている。

cpx_e08a4e4e4301521b07eefdde9b355858.jpg cpx_67cd7350b6fa42235440c6ef317c645a.jpg

wz.29が後面側を目標に向けて、機銃2丁で射撃していることに注目。もしかしてwz.29って、後退で敵に近づいていって、発見されたら全力で前進して退避する、っていうのが運用セオリーだったんだろうか。

cpx_cf8c421310b65f96e6a8cfefdacf89c2.jpg

これらはイージーキットなのでかなりシンプルな構造となっているが、価格も10ズロチ(約350円)から15ズロチ(約500円)と低く設定されているので、手っ取り早くポーランド軍装甲戦力を机上に揃えるためには一つの選択肢と言えるだろう。腕に覚えのあるモデラーなら、これらを芯にフルディティールアップを加え、もうほとんど別物に仕上げるのもいいだろう。スケール的に空モノモデルと組み合わせるのもおもしろそうだ。

現段階でwz.34の「決定版」と言えそうなのは、2010年にリリースされたKARTONOWA KOLEKCJAのキットで、これは内部ありの良作キットらしいのだが現在は残念ながらカタログ落ちしている。もし、ショップで見かけることがあったら、ポーランド軍装甲戦力ファンのモデラーなら絶対に押さえておきたい一品と言えるだろう。


ポーランド軍降伏後、ドイツ軍はおよそ十数両のwz.34を鹵獲もしくは接収したと考えられているが、それらは一線部隊には配備されず、治安維持などに使用されたようだ。なお、一部資料には1941年夏にクロアチアのファシスト軍「ウスタシャ」がドイツから18両のポーランド軍装甲車(車種不明)を供与された、と書かれているが別の資料にはそれはTKS豆戦車だったと書かれており、ウスタシャ軍がポーランド装甲車を受け取ったのか受け取っていないのか、実際のところは現在では不明である。
なお、wz.34は現存しておらず、イベントやパレードに参加しているwz.34 (少なくとも3両が存在している) は全てレプリカ車両である。


WAKキットの画像はWAK公式サイトからの引用

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/Wz.34装甲車
日本語、英語、ポーランド語版を参考とした。

http://derela.pl/armcarpl.htm#ac
ポーランド陸軍、特に装甲戦力について特化したサイト「The PIBWL military site」から、装甲車のタグ。今回のシリーズは大部分がこちらの情報を参考としている。
ポーランド軍装甲車両について確認したければ、ここを見ればだいたい解決する。
スポンサーサイト



テーマ : ミリタリー
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
おすすめショップ
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
製作進展中