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カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史 その3

久々の大炎上から華麗に生還した筆者のお送りする世界のカードモデル情報。ちなみに健康診断は安定の要精密検査でした。
二週間も休んで、何やってたか忘れかけてたけれども自分のブログを見て思い出した年末大型特集企画、「カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史」、今回が3回目。

前回、ポーランド軍は鹵獲車両とか購入車両とか応急車両とかでグッチャグチャになってる装甲車部隊を、バリっと国産装甲車で一気に更新しようとしたが、わざわざフランスからシャーシを購入したwz.28装甲車の走行性能があんまりにもションボリだったため、結局雑多な装甲車を増やしただけに終わってしまった。

「じゃあもう装甲車いらねーや」ってわけにもいかないので、ポーランド軍は再度、国産の新型装甲車を調達する計画をたてる。
次の装甲車はwz.28で大失敗の原因となったハーフトラック形式のことは綺麗サッパリ忘れて、通常の装輪装甲車とすることになり、ベース車両として ワルシャワのウルスス機械工作社(Zakłady Mechaniczne URSUS S.A.)で生産していたウルススA型トラック(Ursus A)が選ばれた。

このウルススという会社は1893年に4人の起業家と3人のエンジニアが設立した会社で、当初は醸造や暖房などの設備を制作する会社だった。創業時のメンバー7人を記念して、当初は「P7P」というロゴを商標として使用していたが、1907年に内燃機関の製造を開始し、それに伴い商標も「URSUS」に変更となった。

この「ウルスス」というのはラテン語で「熊」を表す単語で、ウルスス社もこれ以降は熊がシンボルマークとなるが、ウルスス社の社名は直接の熊をイメージしたものではなくて、ポーランドの作家ヘンリク・シェンキェヴィチの代表作「クォ・ヴァディス」に登場する人物にちなんでいるそうだ。
クォ・ヴァディスのウルススは蛮族出身ながら高貴な出身の娘(ルギイ族の王の娘、リギア)の護衛として献身的に仕える人物である(「ウルスス」、つまり「熊」というのはあだ名だが本名は明かされていない)。日本で言えば、「山のフドウ」にちなんで社名をフドウ社にするようなものか。
なお、ウルススは現在ワルシャワのウルススと呼ばれる地区に本社と工場があったが、これは会社の方が先にあって、1952年にこの一体が市に昇格する時に代表的企業であったウルススの名前を取ったのであった。つまり豊田市と同じ経緯だ。

ウルススは1924年、国防省がイタリアのS.P.A.(Società Piemontese Automobili)社から調達するSPA 25Cトラックの組み立てを受注、このSPA 25Cをポーランドの国土に併せて国産化したのがウルススA型トラックであった。

新型装甲車の開発は軍務省の技術者、ルドルフ・グンドラフ(Rudolf Gundlach)が指揮をとることとなった。
ロシア軍/赤軍から鹵獲していたオースチン装甲車が後部にも運転席を持っており、方向転換せずに後退できる機構が好評であったためにこれを取り入れるなど、いろいろと欲張った仕様となっていた。
新型装甲車の試作車は1929年に完成、無事に制式採用されwz.29の名称が与えられた。

今回タイムリーにポーランドのブランドSKLEJ MODELから新製品としてWz.29 "Ursus"の新キットがリリースされたので、そちらの完成見本写真を見ながらwz.29の紹介を続けよう。というか、まぁ、だいたい察しはつくと思うが、このキットの紹介しようと思って収拾つかなくなったのが今回の企画である。

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SKLEJ MODEL が当ブログに前回登場したのは2018年6月、マレシャル駆逐戦車を紹介した時なのでかなり久々となるが、これは別に筆者が紹介をサボっていたわけではなく、このメーカーはかなりの寡作でたまにしか新製品がリリースされないからだ。
なお、SKLEJ MODELからはマレシャルと本作の間にもう一作、ヤコヴレフ UT-2練習機がリリースされているが、普通すぎて特に書くこと無いので紹介はパスさせていただいた。

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完成見本写真。なんか悪ふざけみたいに機銃が飛び出しているのが目立つが、wz.28では短砲身37ミリ砲搭載型と機銃搭載型に分かれていたのを、wz.29では贅沢に両方を砲塔の反対向きに装備し、状況に応じて砲塔の使用する側を指向するというスタイルが選ばれた。この形式は日本軍の戦車などでも採用されており、当時の車両としては特別なものではない(後に状況に応じて180度砲塔を回すのは大変なので、砲と機銃の取り付け角度は120度に変更されており、キットは120度装備バージョン)。

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キットにはボディが2種類、通常塗装と冬季迷彩塗装が含まれている。やったぜ。シャーシ部分は1両分しかないが、接着しなければ完成後にもボディを載せ替えてバリエーションを楽しむことができるようだ。なお、冬季迷彩は1934年の演習時の塗装(部隊不明)。

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贅沢に機銃と砲の両方を搭載したwz.29だったが、さらに砲塔後部天井は斜めになっており、そこに対空防御用の機銃がボールマウントで装備されている。この時期に防空戦闘も想定してるなんて先進的! と思ったが、この機銃は全く役に立たないことが後に判明し、撤去されている。
これに加え、後部運転席の横に後退時に使用する機銃が装備され(上の冬季迷彩ボディの完成見本写真では省略されている)、合計で37ミリ砲1門+機銃3丁という重武装だった。前方機銃がないから、後面の方が火力が強いという不思議なことになっているが、これ必要に応じて1丁の機銃を使い回すんじゃダメだったんですかね。
なお、装甲も車体最大9ミリ、砲塔最大10ミリとわずかながらwz.28よりも増加している。
あと、冬季迷彩ボディの完成見本写真は右側前輪の前、装甲にダメージが見えるが、たぶん完成したのが嬉しくって写真撮る前に遊びすぎたのが原因だと思われるので見なかったことにしよう。

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展開図の見本。汚しはかなり弱いようだが、まぁ、冬季迷彩そのもの汚しみたいなもんだとも言える。作例は微妙に印刷に縞が出ているように見えるので、プリンタでの試し刷りかもしれない。

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組み立て説明図の見本。戦前の装甲車なので面構成はあまり複雑ではないのだが、車外装備品のパーツ構成が「どうしてこうなった」レベルで細かいので、全てのパーツをきちんと使おうと思ったら、それなりの技術が必要となりそうだ。この、たぶんジャッキと思われる直方体に対する熱い情熱はなんなのか。あと、機銃3丁x2ボディの6丁作るのはぶっちゃけめんどくさそうだ。

SKLEJ MODELの新製品 Wz.29 "Ursus"は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約22センチ。難易度は3段階評価の「2」(普通)、そして定価は35ポーランドズロチ(約1100円)となっている。また、25ズロチ(約800円)で芯材用レーザーカット済厚紙が同時発売となる。

なお、wz.29のキットは過去にポーランドの老舗、GPM社からもリリースされている。

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写真はちっちゃい上に、なぜかたすき掛けにGPMの透かしが入っているのでとっても見づらい。
一見、今風の表紙だが、キット番号とリリース年で分かる通り手書き展開図のリペイント版であり、完成させるにはそれなりの技術とwz.29に対する愛情が必要となりそうだ。

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GPMのキットでは、対空用「斜め銃」はすでに廃止されているようだ。
こちらも難易度は3段階評価の「2」。定価は26ズロチ(約850円)。この記事を書いている時点ではGPMのショップでも在庫有り。
ポーランド装甲車ファンのモデラーなら、両キットを作り比べてみるのもいいだろう。


さて、そんなわけで再度の装甲車一新を目指して採用されたwz.29装甲車だったが、実際に使用してみると元がトラックなのでオフロード性能が低く、エンジンも40馬力程度と貧弱だったために最高時速は路上で35キロ程度、操作性も悪く、目玉の後部運転席もトランスミッションが対応していなかったので、後退する時は後進1速で走ることしかできずあまり実用的ではなかった。
結局、wz.29も10輌の生産に終わり、またもや装甲車の種類を増やすだけに終わったのであった。しょぼーん。

なお、wz.29の開発を主導したルドルフ・グンドラフは後に360度旋回できる「グンドラフ式戦車用ペリスコープ」を開発し、特許を取得している。グンドラフ式ペリスコープは全ポーランド軍装甲車両に装備された上に、イギリスとの軍事協定に従ってビッカース社に提供され、イギリス戦車にも同様のものが装備された。開戦後にはアメリカにも供与され、枢軸国、さらにレンドリース車両を参考にソビエトでもコピーしたものが生産される。
グンドラフはポーランドが降伏した際にルーマニアに脱出、フランスに渡ったが健康上の理由でフランスから脱出することはできず、戦時中はヴィシー政権下のフランスにとどまった。

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Wikipediaからの引用で、グンドラフ式潜望鏡の動作解説写真。1970年代のポーランド出版物より。

戦後、グンドラフは特許の使用料を求めて各国政府に訴えを起こし、英仏からは支払いが行われた。グンドラフはそれを元手に、なぜかパン屋を開業し、1957年7月に亡くなったという。
(その4へ続く)

画像はSKLEJ MODEL、GPNそれぞれの公式ページからの引用

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/Wz.29装甲車
https://ja.wikipedia.org/wiki/ルドルフ・グンドラフ
https://en.wikipedia.org/wiki/Ursus_A
https://en.wikipedia.org/wiki/Ursus_SA

全体を通しての参考ページは最終回にまとめて掲載予定。
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