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Heinkel Models イタリア装甲艦 Affondatore・後編

急に寒くなって慌てて電熱線ストーブを引っ張り出してきた筆者のお送りする、書きたい事全部書いて収集つかなくなるのがお約束な新製品情報。今回も引き続きスペインのデザイナー、Fernando Pérez Yuste氏のブランド「Heinkel Models」からの新製品、イタリア装甲艦 Affondatoreの紹介だ。

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前回は普墺戦争のリッサ海戦でイタリア艦隊を率いるカルロ・ペルサーノ提督(Carlo Pellion di Persano)がまさかまさかの敵前旗艦変更という大技で主に味方を大混乱に陥れるものの、装甲艦なら集中砲火を浴びても大丈夫! と思ってたら対するオーストリア=ハンガリー艦隊を率いるヴィルヘルム・フォン・テゲトフ提督がまさかまさかまさかの旗艦による衝角攻撃をぶちかましてイタリア艦隊装甲艦「レ・ディタリア(Re d'Italia)」が撃沈されたところまで。

イタリア艦隊第2グループの残る各艦も、優勢なオーストリア=ハンガリー軍装甲艦隊から滅多撃ちを食らい続け、ついには装甲砲艦パレストロ(Palestro)が非装甲部分をほとんど吹き飛ばされ、発生した火災を消火できる見込みもなかったために自沈した。パレストロは装甲艦とはいえかなり小型の艦(排水量約2500トン)なので、この時代の「装甲艦は砲撃では沈まない」の法則からは除外されているようだが、この「火災は装甲艦の戦闘能力を喪失させうる」という戦訓は日本海大海戦における日本海軍の下瀬火薬を用いた榴弾戦法の参考となっているのかもしれない。

一方、第3グループのイタリア装甲艦3隻対オーストリア非装甲艦14隻は数的に優勢なオーストリア艦隊がイタリア艦を滅多打ちするも全く砲撃が貫通せず、逆にイタリア側の砲撃でオーストリア艦隊の非装甲艦は次々に損傷していった。
この状況を打開するためオーストリア艦隊の非装甲艦「SMS カイザー(SMS Kaiser、排水量約5200トン)」は、「装甲艦なんかに負けたりしない!(キリッ)」とイタリア軍の装甲艦、「レ・ディ・ポルトガロ(Re di Portogallo、排水量約5600トン)」に衝角攻撃をぶちかましたが、非装甲艦での体当たりは逆にSMS カイザーの艦首を大破させただけに終わり、SMS カイザーは「装甲艦には勝てなかったよ……」と即落ち後退せざるを得なかった。

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Wikipediaからの引用(以下この項、表紙及びキット画像以外同様)で、レ・ディ・ポルトガロに体当たりを敢行するカイザー。1911年、Eduard Nezbeda画。カイザーの斜め後ろにいるのは装甲砲艦Vareseか。
この体当たりは全く無謀であったと評されることも多いが、衝撃でレ・ディ・ポルトガロの装甲板はほとんど剥離してしまい、そこへ追撃を受ければ撃沈される可能性もあったとする資料もある。

カイザーの損傷でオーストリア非装甲艦隊は不利を悟り後退、イタリア艦隊第3グループは勢いづいたがこれに気づいたオーストリア艦隊は非装甲艦隊を援護するために装甲艦を第3グループに派遣する。
乱戦の中、すっかり存在を忘れられていたイタリア艦隊旗艦アフォンダトーレが砲弾をカイザーに命中させたが撃沈には至らず、イタリア艦隊は弾薬、燃料、士気の全てが底をついていたために戦闘を打ち切り後退する。イタリア艦隊先頭の第一グループは資料に登場しないからどこにいったかわからない。

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前部マストが倒壊、艦首が潰れたSMS カイザー(右側が船首)。1866年7月20日撮影。なんかの間違いみたいに旗がデカい。
せっかくの捨て身の体当たりも、それまでの主力であった舷側砲門の非装甲艦が全くの戦力外であることを証明するだけに終わってしまった。

結局、イタリア艦隊は優勢であったにも関わらず、主力装甲艦1隻、小型装甲艦1隻を失い制海権を失うという大敗を喫した。
そして、この戦いは各国海軍に「装甲艦は少数で多数の非装甲艦を圧倒する」「衝角攻撃つえぇぇぇぇ!」という教訓を残したのである。

で、肝心のアフォンダトーレはこの最後の局面でカイザーに砲弾を命中させた以外、なにをしていたのかと言うと、これがさっぱりわからない。なにしろイタリア艦隊は艦隊決戦というよりも各艦がそれぞれの判断でデタラメに戦っている状態で、なにがなんだかわからない。

それでは、この世紀の艦隊決戦、リッサ海戦でイタリア艦隊旗艦を務めるも、まさかの敵からも味方からも存在感皆無に終わったイタリア装甲艦 Affondatoreの姿をecardmodels.comから引用した完成見本写真で見てみよう。

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スラリとしたスタイルで、たしかに衝角攻撃を仕掛ければ強そうだ。重心を低くするために砲塔がやたらと扁平で、そのままだと側面に発砲した時に舷側をふっとばしちゃうので舷側が可倒式になっているのもおもしろい。でもこれ、船首の舷側は倒せないから衝角攻撃する時は突っ込んでいく相手に向かっって主砲撃てないじゃないか。あと、砲塔の天井はスノコなのだろうか。

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展開図のサンプル。甲板の木目表現が美しい。作例では帆装が省略されているが、キットには含まれているようだ。また、船体はウォーターラインとフルハルの選択式となっている。もともと衝角艦として設計された19世紀らしい顎の出た特徴的な船体形状を楽しむのなら、フルハルで完成させたいところだ。

Heinkel Modelsからリリースされたイタリア装甲艦 Affondatore は海モノ標準スケール200分の1で完成全長約45センチと堂々たるサイズ。難易度はショップサイトでは5段階評価の「5」(とても難しい)となっているが、副砲や対空銃座がないので個人的には4に近いのではないかと思う。販売はデジタル版のみで、定価はecardmodels.comで12.5ドル、ZARKOV MODELSで10.5ユーロ(どちらも商品ページ直リン)となっている。
当キットは黎明期イタリア海軍ファン、リッサ海戦ファンのモデラーにとっては、見逃せない一品と言えるだろう。

さて、せっかくなのでリッサ海戦後のアフォンダトーレについて。
1866年8月6日、リッサ海戦から二週間後にアフォンダトーレはアンコーナ港で嵐により沈没した。これは、リッサ海戦での損傷が原因であるとする説と、そもそもアフォンダトーレは乾舷が足りておらず嵐には耐えられなかったとする説がある。
沈没と言っても港内で着底しただけなので11月には浮揚され、修復を兼ねて帆装を撤去。1880年代には機関と武装を換装する大規模な近代改装を受けている。
武装は旧式な300ポンド砲が近代的な25センチ砲に換装され、120ミリ砲6門、75ミリ砲1門、57ミリ砲8門など自衛装備も充実している。

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1890年ごろに撮影された改装後のアフォンダトーレ。いや、もうこれ別の船じゃねーか。

しかし、さすがに旧式化していたために1891年、アフォンダトーレは魚雷発射管2基が追加され、魚雷発射の訓練船となった。
アフォンダトーレが最後に活躍したのは1893年の艦隊訓練で、アフォンダトーレは装甲艦エンリコ・ダンドロ(Enrico Dandolo)、巡洋艦ゴイト(Goito)その他の艦と共に仮想敵艦隊(フランス艦隊)としてイタリア艦隊を襲撃した。
その後は警備挺としても使用されていたが1907年11月に現役から外される。以降はタラントで弾薬庫として使用されていたようだが、最終的にどうなったのかは不明である。

最後に、リッサ海戦を戦った双方の艦隊の指揮官のその後について書いておこう。
リッサ海戦に勝利したテゲトフ提督はリッサ海戦からわずか5年後、1871年4月7日に肺炎で亡くなった。まだ43歳であった。
テゲトフ提督は陸軍国オーストリア=ハンガリーにおいて数少ない名を残した海軍軍人であり、後にオーストリア=ハンガリー初のド級戦艦は「テゲトフ級」と名付けられた。このテゲトフ級4隻が、第一次世界大戦後に消滅したオーストリア=ハンガリーが保有したド級戦艦の全てであり、最後までテゲトフの名はオーストリア=ハンガリー帝国海軍の頂点に輝いていたと言っていいだろう。

一方、敗者ペルサーノ提督は一説には帰港した直後に電報で政府に「イタリア艦隊のボロ勝ちっすよ!」と報告したが、もちろん瞬時に嘘がバレた。と、いうか、ぶっちゃけこのひと大丈夫なんだろうか。なんかここまでくると心配になってくる。
かくして、ペルサーノ提督は筆者認定、「世界三大なに考えてるんだかよくわからない提督」に名を連ねたのであった。ちなみに残り2人は日本海大海戦でバルチック艦隊を壊滅させたジノヴィー・ロジェストヴェンスキー提督と、艦隊運動訓練中に謎の機動で戦艦ヴィクトリアを沈めたサー・ジョージ・トライオン提督である。

結局、ペルサーノ提督は「怠慢と過失」の罪で告訴され1867年4月に有罪判決が下り海軍を追放された。
ペルサーノは1883年7月28日に77歳で亡くなったが、軍籍抹消により海軍から年金を受け取れなかったために晩年はイタリア国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世からの個人的な仕送りでほそぼそと生活していたという。
当然ながら、イタリア海軍が艦船にペルサーノの名を冠したことはない。


キット写真はecardmodelsから引用。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/アフォンダトーレ_(装甲艦)
https://ja.wikipedia.org/wiki/リッサ海戦
それぞれ、日本語、英語、イタリア語版を参考とした。
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