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NDL 歴代ブレーメン全紹介・その3

特に長かった梅雨が終わり、関東はいよいよ猛暑の季節。とりあえず好天を待って後送りになっていた庭木の消毒を済ませた筆者のお送りする世界のカードモデル情報。

今回も前回から引き続き、北ドイツ・ロイド汽船会社(Norddeutscher Lloyd)の歴代フラグシップ、「ブレーメン」について。
今回はいよいよブレーメンの中のブレーメン、真打ち四代目ブレーメンの登場だ。

1929年、第一次大戦後の不況と混乱から脱した北ドイツ・ロイド汽船会社(以下、「NDL」と略)は大西洋航路に新たなスーパー客船として四代目ブレーメンを就航させる。
この新型船は球状艦首、高張力鋼による軽量化など当時の技術の粋を集めたもので、5万トンを超える大型船体でありながら4基の蒸気タービン合計13万5千馬力で最大27.5ノットの高速航行が可能であった(さらに試験段階では最大出力で瞬間的に32ノットという、ちょっと信じがたい速度に達したこともあるという)。

この快速で1929年7月17日から7月22日にかけての処女航海で大西洋最速船に送られるブルーリボン賞(西回り)を見事獲得。さらにその帰路(7月27日から8月1日) で東回りのブルーリボン賞も獲得しているので、いかに当時の客船の中で突出した性能を誇っていたかがわかる。
なお、西回りはわずか半年後に同じくNDL所属の姉妹船「オイローパ」が記録を更新している。また、東回りは1933年に一度自身で記録を更新しているが、その後1935年にフランスの「SS ノルマンディー」により更新された。
この、ドイツ海運のみならず、世界客船史にもその名を残す豪華客船はドイツHMV社から素晴らしいクオリティのカードモデルがリリースされている。

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このキットはHMVのいわば「看板商品」で、1998年に初版、2007年の改修を経て現在は2011年改修の第3版が入手可能。

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ちょっと小さいが完成見本の全景写真。
このキットは東欧カードモデルではないのでスケールは250分の1とやや中途半端だが、このスケールで5万トンの豪華客船をキット化すると全長なんと115センチというビッグ・キットとなる。
なお、ブレーメンは排煙に問題があり甲板でくつろいでるお客様が煙くてしょうがないので、後に煙突を6メートルも延長する改装を行っているがキットは改装前の姿。

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船体中央部をクローズアップ。もちろん、以前紹介したメール迅速お届けサービス用の水上機、HE 12 と射出カタパルトも再現されている。
さらにこのキットの凄いところは、オプションパーツで船橋と一等ダイニングホールの内装が再現可能な点である。

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これは凄い!
客船ホールの内部再現キットというのは、ちょっと他にはないんじゃないだろうか。
その分難易度は高く。メーカーの評価は「非常に難しい」となっている。
ちなみにオプションを入れない状態でのパーツ数約2千、プラスオプションパーツ数約3千だというから凄まじい。また、ページ数はA4で「44」となっているが、これが展開図のみなのか、組み立て説明書や表紙を含むのかはちょっとわからない。

*8月3日追記
コメント欄でAbさんよりキット内容について補足いただきました。なんと、部品のシートのみで44枚、さらに組み立て図などが21ページあるとのこと! 詳しくはコメント欄を是非ごらんください。
Abさん、詳細ありがとうございました!


オプションパーツ込みのフルビルドにはかなりの技量と手間を要しそうだが客船ファンのモデラーなら一度は挑戦してみたい。
定価はHMVのショップ、「fentens」で55ユーロ(約6500円)。この内容からしたらかなりお手頃価格と言えるだろう。

その豪華さ、高速性を誇ったブレーメンだったが、その栄華は長くは続かなかった。
そもそも、就航直後に世界は大恐慌へ突入。さらに数年もたたないうちに今度は国家社会主義ドイツ労働者党、いわゆるナチス党がドイツの政権を掌握。これに伴いドイツ船舶はドイツ国旗(黒・白・赤の旧ドイツ帝国旗)と併せてナチス党旗である鉤十字旗も掲げることになる。
アメリカでは反ナチのデモが行われるようになり、1935年7月26日にはついにデモ隊が停泊中のブレーメンに乱入、掲揚されていた鉤十字旗を破り捨てるという事件が発生。
ドイツ政府(ナチス党)はもちろんこれに厳重抗議し、厳正なる処罰を求めたがアメリカの裁判所は「国旗を破ったのなら国旗損壊罪で外交問題だけど、単に党旗破っただけだからこれは器物損壊」と軽い罪にしか問わなかったので、ナチス党はブチ切れて1935年9月15日、「ドイツの国旗は鉤十字旗ですぅ~~」と国旗法を変更してしまった。戦時中、ドイツ国旗って全然見なくてどこもかしこも鉤十字なのはなぜかと思ったら、鉤十字が国旗だった。

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Wikipediaからの引用(この項のキット画像以外、全て同様)で、1935年以降に撮影されたブレーメン。前部マスト向かって左側に鉤十字旗が掲げられているのわかる。正確な撮影時期は不明。延長された煙突の様子にも注目だ。

その後、南アメリカにも航路を延長し、ブレーメンは5万トン級客船として初のパナマ運河通過船となったが1939年8月26日、ドイツ海軍から全ての無線を封止し、至急ドイツへ帰港せよとの命令が下る。
これが近いうちの開戦とそれに伴う抑留を避けるための処置であることは明らかだった。第一次大戦開戦時にバルバロッサ級客船10隻中8隻を抑留されたのがよっぽど応えたんだな。
ドイツからニューヨークへ向かっていたブレーメンはニューヨーク目前に到達していたので急ぎニューヨークへ寄港、1770人の乗客を下ろす。
イギリスはアメリカに対しブレーメンの抑留を要請したが平時に客船を抑留するなんてことはもちろんできず、アメリカ政府は「違法に武器を積んでいるかもしれない」と難癖をつけて36時間の捜索を行うもそれ以上抑止する理由をみつけられず、ブレーメンは空船のまま8月30日に出港した。

9月1日にドイツがポーランドへ侵攻、これに対し英仏が9月3日に対独宣戦布告を行う。
このまま英仏海峡やら北海やら入ったら間違いなくヤバいんで、ありあわせの材料で灰色に塗りたくられながらブレーメンは北よりに航行し、9月6日にバレンツ海に面した中立国ソビエトのムルマンスク港へ到着する。独ソ不可侵条約ありがとう。
しかし、そのままソビエトに居候になっているわけにもいかず、12月にソ・フィン国境紛争(冬戦争)の開戦に伴いブレーメンはムルマンスクを出港、母港ブレーメンへと急ぐ。
途中、ブレーメンは浮上航行中のイギリス潜水艦HMS サーモンに発見されたが、護衛として合流したDo18飛行艇が随伴していたためにサーモンは潜航する。この後、サーモンはブレーメンを雷撃することもできたが、艦長E. O. Bickfordは「非武装の船を攻撃すべきではない」と判断してこれを見送った。

悪天候にも助けられ12月13日に母港へ無事帰還したブレーメンはその後兵舎として使用された。イギリス本土上陸作戦「アシカ作戦」においてブレーメンで兵員輸送する案もあったが、アシカ作戦の中止でこれも立ち消え。ブレーメンはそのまま係留されていたが1941年3月16日に突如出火、懸命の消火活動も及ばずブレーメンは船体の損傷を抑えるために自沈着底した。

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イギリス空軍の偵察機が撮影した、炎上後のブレーメン。もとはImperial War Museumのコレクション。まだ船首と船尾から煙が上がっており、小船舶3隻が消火活動中と分析されている。

この火災は当然、破壊活動が疑われたが捜査の結果は17歳の船員、グスタフ・シュミット(Gustav Schmidt)が上司に平手打ちされたの事の腹いせに放火したものと結論された。彼は死刑となったが、17歳の船員一人で5万トンの客船を全焼させられるのか、疑問もあるという。
ブレーメンはその後ドックまで曳航され使用できるパーツは全て外され、さらに戦況の悪化に伴い船殻も次第に解体転用されていった。
戦後1946年、もはや船底部だけになっていたブレーメンは邪魔にならないところまで曳航され解体処分された。
その場所では今でも解体しきれずに残ったブレーメンの船底の一部を干潮時に見ることができる。

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2013年に撮影されたブレーメンの残骸。

余談ながらブレーメンに関する話をもう一つ。
Günter Bos と Günter Buse という二人のエンジニアが1947年から15年かけてなんと25分の1でブレーメンの模型を制作した。
長さ12メートル、重さ10トンのこの模型は38馬力エンジン2基で航行可能で、「自力航行可能な最大の船舶模型」としてギネスブックにも掲載されているという。
現在、この模型はドイツのラインラント=プファルツ州にあるシュパイアー技術博物館展示されている
(その4に続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブレーメン_(客船・3代)
なぜか日本語版Wikipediaのみタイトルが「3代目」となっているが、内容は4代目。
その他の参考ページは最終回にまとめて掲載予定。
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No title

HMVのフラッグシップといえばこのブレーメンとビスマルクですね。最近のキットではベルリンもなかなか凄いです。  さてHMVはほかのカードモデルメーカーとは違ってほとんどのキットにパーツ数とパーツのシート数が明示してあってとても親切です。パーツリストがついているものもあります。 ですのでブレーメンのパーツのシート数が44です。表表紙裏に解説文があり、パーツシートが44枚あってそのあとに組立図、組み立て手順が裏表紙裏まで21ページあります。 なお、HMVのキットは基本的にオプションのレーザーカットパーツを使わなくてもすべて組めるようになっておりまして、室内のテーブルに椅子、ソファーにデッキに置くデッキチェアなども全てパーツシートに印刷されております。 しかし例えば椅子ひとつでも幅2ミリしかないので超人的な忍耐力のない人はレーザーカットを使うのが現実的でしょうね。 なお、レーザーカットも室内再現用と手摺・艤装用の二種類があります。

No title

追伸です。 ただし、室内を再現しても窓枠を自力で切り抜くのは至難の業ですのでやはりレーザーカットを使うのがよいでしょう。 なお、送料を考えるとドイツから買うよりも「ファセット」という日本の城のカードモデルを中心に制作・販売している会社から買うのが早くてよいです。(レーザーカットパーツも販売していますが品切れ等が多いです) ファセットのサイトは https://facet.shop-pro.jp/

Re: No title

Abさん、コメントありがとうございます!
なるほど! NDLのフラグシップ、ブレーメンのキットがHMVのフラグシップ!!
おおー、パーツだけで44ページなんですね。しかし、たしかに250分の1の椅子やテーブルの工作は常人のスキルを超えていそうです……
ここまで来ると、もう組む組まないは度外視して、究極のカードモデルとしてコレクションに加えたい一冊ですね。
ヨーロッパのカードモデルを知らない方を脅かすのにも使えそうです(笑)
詳細な情報、ありがとうございました!
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