FC2ブログ

ドイツのカタパルト船について・その4

先日、長年患っていた疾患の処置を行い身も心もちょっと軽くなった筆者のお送りするカードモデルをステルスマーケティングするブログ。今回も引き続きドイツのカタパルト船について。

前回は太平洋横断郵便飛行のために、ルフトハンザドイツ航空が「飛び石」とするために貨物船ヴェストファーレン(Westfalen)を購入し、カタパルト船に改造したところまで。

1933年6月からルフトハンザはヨーロッパ-南米間でヴェストファーレンの運用テストを開始したが、やってみてわかったのは大西洋のど真ん中で船の位置を保持すること、そして水上機がそれを見つけて会合することがいかに難しいかということだった。
なにしろGPSはもちろん、十分なレーダーもない時代だ。近づいたらビーコンを捉えて……というわけにはいかない。うっかりヴェストファーレンが潮流で流されてしまったら水上機はそのまま海の藻屑になってしまう。

そこでルフトハンザは方針を変更し、2隻目のカタパルト船を調達して一隻をヨーロッパ寄り、もう一隻は南米寄りに配置することで一回の飛行距離を短くすることとした。
この2隻目のカタパルト船として、ルフトハンザは1925年に建造されドイツ・ハンザ汽船会社(DDG Hansa)で運用されていた貨物船「シュヴァルツェンフェルス(Schwarzenfels)」を購入し、最大14トンの射出能力があるハインケルK7カタパルトを装備したカタパルト船「シュヴァーベンラント(Schwabenland)」に改造する。

800px-Schwabenland.jpg

Wikioediaからの引用で、カタパルト船シュヴァーベンラント。1938年ごろ撮影。
一見、普通の貨物船に見えるがよく見ると船尾に水上飛行機(おそらくドルニエ・ヴァール)が乗っている。
客船で水上機をカタパルト運用していたノルデンドイッチャー・ロイド(Norddeutscher Lloyd)がハインケルの特注機を積んでいたのに対し、ルフトハンザのカタパルト船が旧式(1924年初飛行)のドルニエ機を積んでいる理由はよくわからない。

800px-German_catapult_seaplane_tender,_MS_Schwabenland,_starboard_aft,_1939_(26786989561)

おなじくWikioediaからの引用で、船尾から見たシュヴァーベンラント。1939年。
なんだかやたら尻が持ち上がっているようにも見えるが、スキージャンプっぽく仰角をつけるための意図的なものなのだろうか。

Запуск_гидросамолета_со_«Швабии»

これもWikipediaから。ドルニエ機を射出するシュヴァーベンラント。1938年、もしくは1939年。
そのまま射出したら主翼がぶつかるんでクレーンが倒されていることに注目。

さて、カードモデルのブログなのに滅多にカードモデルの登場しないこのコーナー、久々に新製品紹介。
紹介するのはドイツのブランドReimers Modellbaubogenからリリースされたシュヴァーベンラント船尾のハインケルK7カタパルトだ。

image_202004051120258fd.jpg

勘のいい読者なら、このキットを新製品で説明しようとしてカタパルト船の説明を始めたら収拾つかなくなったことはすでにお察しのことだろう。
このキットは、以前に「カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その4」で紹介した、同ブランドからリリース済のブローム・ウント・フォス Ha 139と同スケールとなっており、両者を組み合わせることで全長約87センチ、全幅約60センチの迫力のある情景が楽しめるようになっている。
キットのスケールはやや小スケール50分の1、難易度は5段階評価の「4」(やや難しい)、定価は45ユーロ(約5500円)となっている。

ちなみに排水量約8500トンのシュヴァーベンラント船尾から4発水上機を射出するとこんなバランスとなる。

Ha_139_Nordmeer_taking_off_from_Schwabenland_1937.jpg

大☆迫☆力

写真はWikipediaからの引用で1937年ごろ撮影。なお、船名の「SCHWABENLAND」の下に「BREMEN」の文字が見えるが、これは客船ブレーメンのことではなく、母港があるブレーメン市のこと。

キット表紙でわかるようにシュヴァーベンラントの船尾レールは2本あるが、射出能力があるのは船内から見て右側の1本のみ。左側は発進準備を行うためのレールだろう。右側レールの端(船体中央部側)と左側レールの中央部は旋回するようになっており、左右のレールに移ったり方向を転換したりできるようになっている。
また、本格的な整備が必要な場合には船体中央部のプラットフォームに航空機を置いておくこともできた。

さて、シュヴァーベンラントの就航まで大西洋のど真ん中のヴェストファーレンを唯一の足がかりとして際どい運用をしていたルフトハンザ大陸間郵便は2回のジャンプで2大陸をつなぐこととなる(理由は不明だが、2隻は時々位置を入れ替えていたようだ)。
1935年にはシュヴァーベンから発進したドルニエ・ヴァールが故障により水上に不時着したが、救援に向かったヴェストファーレンがこれを拾い上げるという見事な連携を見せている。

手応えを感じたルフトハンザは貨物船改造ではなくカタパルト船として1936年にオストマルク(Ostmark)、 翌37年にフリーゼンラント(Friesenland)の2隻を新造して就航させるが、このころには航空機の性能が上がり5千キロをひとっ飛びにできる大型飛行艇が次々に開発されており、わざわざ沖合でカタパルト船と会合して飛び直す、という運用そのものが無意味となりつつあった。
戦争が近づいたこともあり1938年から39年にかけて、カタパルト船を使った大西洋横断は廃止となった(シュヴァーベンから飛び立った最後の郵便飛行は1939年7月14日、機体はドルニエDo 26だった)。

なお、郵便飛行から退くのに先立つ1938年秋にシュヴァーベンは第三次ドイツ南極探検隊にチャーターされ、南極探検の母船として使用された。この時にドイツが探検した地域は船名にちなんで「ノイシュヴァーベンラント」と名付けられている。

大西洋の飛び石横断飛行が廃止さてれてほどなくドイツは第二次世界大戦に突入、カタパルト船4隻もドイツ軍に徴用される(空軍の管轄だった)。
これで一癖も二癖もある冒険野郎どもからなる特別チームを編成して極秘のスエズ運河爆撃行! とかすれば戦場ロマンなのだが、本格的な航空母艦を保有している英国海軍を相手にそんな冒険ができるはずもなく、カタパルト船はノルウェーやフランスで哨戒機の母艦として使用された。
戦時中のカタパルト船の特筆すべき活躍としては、1943年6月、グリーンランド東岸に建設されたホルツァーゲ気象観測所が連合軍に攻撃を受けた際に、観測所を脱出した22人の観測員と犬ぞり用の犬数匹をシュヴァーベンラントから発進した ドルニエDo 26 が救出している。

4隻のカタパルト船のうち、オストマルクは1940年9月24日にフランス沖でイギリス潜水艦 HMS Tuna の雷撃を受け沈没。ヴェストファーレンも1944年9月8日にスウェーデン沖で荒天下を航行中に突如船首が吹き飛び沈没している(機雷に触れたらしい)。
シュヴァーベンラントとフリーゼンラントは戦争を生き残ったが、イギリスに接収された2隻のうちシュヴァーベンラントはノルウェーでしばらく居住用に使用された後、1946年12月31日にスカゲラック海峡で毒ガス弾を処分するためにガス弾1400トンを積んで海没処分となった。

カタパルト船で最後まで生き残ったのはフリーゼンラントで、戦後しばらく英国空軍の水上機母艦として使われたのちに軍縮によって売却、ドイツで通常の貨物船に改装され1950年からパナマ船籍の冷凍貨物船「Fair Sky」としてフルーツ輸送に従事。1952年に今度はイタリアに売却され「Castel Nevoso」となる。1969年に再度パナマへ売却、今度は「Argentine Reefer」になったが、ほとんど使用されないまま同年中にスクラップとなったという。
航空機の性能が飛躍的に向上した戦後において、カタパルト船が再び建造されることはなかった。

ハインケルK7カタパルトキット表紙写真はReimers Modellbaubogen公式ページからの引用。



参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/MS_Schwabenland_(1925)
https://en.wikipedia.org/wiki/SS_Westfalen_(1905)
https://de.wikipedia.org/wiki/Ostmark_(Schiff,_1936)
https://de.wikipedia.org/wiki/Friesenland_(Schiff,_1937)

https://de.wikipedia.org/wiki/Katapultflugzeug
https://de.m.wikipedia.org/wiki/Flugzeugkatapult
https://de.wikipedia.org/wiki/Katapultschiff
それぞれの日本語、英語、ドイツ語版を参考とした。

最後となりましたが、コメントありがとうございました!
大変励みとなります。この場を借りてお礼申し上げます。
私は逆にマーリンエンジンのせいでアーサー王伝説の魔術師マーリンがマッチョなイメージになってしまいました(笑)
スポンサーサイト



テーマ : ミリタリー
ジャンル : 趣味・実用

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title

リクエストありがとうございます!
さっそく追いかけてみたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
おすすめショップ
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
製作進展中