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イタリア軍パスタ伝説について

片付けど片付けどなおわが工作台広くならざり。そんな怪奇現象に悩まされている筆者がお送りするカードモデル周りの有象無象。
と、勢いで書いてしまったけど今回は単にネット漁ってて見つけたネタの開陳なのでカードモデル全く関係なし。あと、「かいちん」で変換しようとしたら候補に「解珍」が出てきたんだけど、「解宝」は変換できない。弟カワイソス。

イタリア軍に関する有名なジョークで、
「北アフリカ戦線でイタリア軍から『水が尽きそうだ。すぐに補給してくれ』という要請を受け、ドイツ軍が戦力を割いて補給部隊を派遣したところ、イタリア兵達は砂漠のど真ん中でパスタを茹でていた」
というものがある。もちろん、これはイタリア軍のヘタレ具合を表すジョークで真実ではないのだが、これっていつごろから言われてるネタなんだろう、と思ってネットを彷徨っていたら見つけた話。オールドボードゲーマーの間では常識なのかも知れないが、自分は初めて知ったので忘れないうちに書き留めておこう。

コンピューターが普及する以前、作戦や戦略に興味を持つミリタリーファン達は紙の地図と厚紙のコマを用いた「ボード・ウォーゲーム」(当時は単に「ウォーゲーム」と呼んでいた)をプレイしていた。
なにしろ厚紙のコマというアナログな手法なので表現できることは限られている(例えば、ある部隊が定数を満たしている状態と損害を受けて消耗している状態を区別しようと思ったら、それだけで一つの部隊に2種類のコマを用意したり、あるいはコマごとの状態を記録するシートが必要になってしまう)。
だから、ボード・ウォーゲームはできるだけ抽象化しなければならなくて、例えば「一つのマス(ヘクス)内にいるある部隊(ユニット)はそのマス内のすべての位置に存在しうるし、どの方向から攻撃されても常にその方向を向いていると解釈される」なんていう、現在のコンピューターゲーマーからすると「???」なルールで成り立ってたりする(部隊の向きなんかはその部隊の指揮官任せにして、プレイヤーはその上級の指揮官の立場をロールプレイしている、って意味ではむしろこっちの方が正しいとも言える)。

ここまで書いてから思ったが、この説明いるんだろうか。こんなブログ読んでる人ってそれぐらいは周知のような気もしてきた。
まぁいいや、せっかく書いたから。

IMG_1383.jpg

参考写真。ボード・ウォーゲームの一例(箱の写真。中にマップやコマ、ルールブック等一式が入っている)。
筆者秘蔵アバロンヒルの「スターリングラード」(1974年発行の2ndエディション。ホビージャパンの日本語版マニュアル同梱)。もちろん、さりげない自慢である。

そんなわけで、抽象化の手法、匙加減がボード・ウォーゲームデザイナーの腕の見せ所だったのだが、逆に抽象化を捨ててとことん細かく、詳細にしてみようという試みもあって、例えばSPI(Simulation Publications , Inc.)の「War in the Pacific」というゲームは3200個のコマを使い(巡洋艦以上の全ての艦船がユニット化されている)、真珠湾から終戦まで太平洋戦争の全てを戦略的に追体験しようというとんでもないしろものだった。

War in the Pacificは特に補給についてのルールが細かく、産出地から輸送船で本国まで資源を輸送し、そこから各停泊地までまた輸送船で輸送して、というのをシートに細かく計算しながらマーカーを配置して補給線をつないでいかなければならない。もちろん、使用できる輸送船の数は保有する数によって制限され、無限に補給線をつなげられるわけではない。
おかげでまじめに大規模上陸作戦なんてやろうと思ったら必要物資をどこから捻出してどうやって集積するか、リアルに半日がかりで準備が必要になるとかいう噂も。
プレイ時間はショートシナリオの「ミッドウェイ」で6時間、全期間通してのフルゲームだとなんと200時間以上かかるとのこと。
(ちなみにさっきのアバロンヒルのスターリングラードはプレイ時間2時間程度)。
発売は1978年だが、なんとその後にホビージャパンから日本語版が発売されている。

これは大変な数字に見えるが、まだいい。製作したSPIはテストプレイを完遂しているし、以前に日本でもどこだったかの大学のゲーム研究会がプレイ完遂したことがあるという記事を読んだ覚えがある(どこで読んだか失念してしまったので勘違いかもしれない)。

さらに上を行く「モンスターゲーム」として、もはやボード・ウォーゲーム界で伝説となっているゲームがある。
それが、今回の本題である「The Campaign for North Africa」だ(これもSPIの商品。ただしデザイナーは異なる)。
The Campaign for North Africaのルールはさらに詳細で、北アフリカ戦線の始めから終わりまでを陸上部隊は大隊単位、航空機は1機+パイロット一人単位で、補給物資もそれに見合う詳細さで管理する必要があるという完全にイカれたゲームだった。
コマの総数こそ1800個程度と少ないものの、その分シートで管理しなければならない情報がやたらと多く、まじめにプレイしようと思ったら総司令官、補給担当、後方担当、空軍指揮官、前線指揮官の5人を両陣営、10人揃えることが推奨されていた(補給担当と後方担当は同じに見えるが、補給担当は後方から前線への物資輸送だけを受け持ち、後方担当は治安維持や捕虜の管理、施設の建設などを受け持つ)。

補給に関するルールは非常に細かく、例えば「燃料」は「毎ターンの最後に蒸発により総量の3%が失われる。ただし、一定のターン以前の連合軍側のみ、この時7%が失われる。これは連合軍が初期、ジェリカンではなく50ガロン入りドラム缶を使用していたことによりロスが大きかったことを再現している」ってな具合だ。
この細かさのせいで、このゲームをフルでプレイしようとしたら、箱にある表記では1000時間以上、また様々なサイトで1200時間以上(一部のサイトでは1500時間以上)必要とされている。
最短の1000時間としても不眠不休で40日。毎週末に誰かの家に集まって4時間づつプレイするとしたら5年かかる計算になる。
それだけの時間、10人ものプレイヤーを確保しておく、なんてできるはずもなく、どうやらこのゲーム、かつて一度も完遂されたことがないらしい(デザインしたリチャード・バーグ自身がテストプレイを完遂したことがないことを認めている)。

で、このゲームの中に「[52-6] イタリア軍パスタルール(The Italian Pasta Rule)」というルールが存在する。
これは「イタリア軍は補給に余分な水1単位の「パスタポイント」を受け取る必要がある。パスタポイントが-10以下のイタリア軍大隊は即座に壊乱状態となる」というルールだった。
このルールはデザイナーのリチャード・バーグによると「ジョーク」で歴史的な裏付けはないとのこと。バーグによると実際にはイタリア軍は缶入りトマトソースでパスタを調理していたそうだ。
このルールは英語圏のウォーゲーマーの間では有名なネタのようで、一時期SPI自身がCNAがいかに細かい補給ルールを持つのか表すために広告にパスタルールを掲載していたことがあるという。

と、いうわけでボードゲーマーの間での「パスタルールって実際にはどんな場面なんだよ」って話から、「こんな感じじゃね?」とパスタジョークが作られ、そのジョークだけが広まっていったのではないかと推測するのですがいかがでしょうか。



参考ページ:
ボードゲームの総合情報サイト、「Board Game Geek」から
「War in the Pacific」
https://boardgamegeek.com/boardgame/9650/war-pacific-first-edition
「The Campaign for North Africa」
https://boardgamegeek.com/boardgame/4815/campaign-north-africa
ついでに「Stalingrad」
https://boardgamegeek.com/boardgame/4651/stalingrad
の各ページ

ゲーム情報サイト「KOTAKU」内のコラム
「完遂するのに1500時間かかる最凶のボードゲーム」
https://kotaku.com/the-notorious-board-game-that-takes-1500-hours-to-compl-1818510912
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テーマ : ミリタリー
ジャンル : 趣味・実用

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No title

おお、懐かしい話ですね! ゲーム機はインベーダーやブロック崩しくらいでまだファミコンもない40年くらい前に結構プレイしました。 ホビージャパンから、まず「タクテクスⅡ」を買い、次いで「アンツィオ」や「パンツァーリーダー」、そして「帆船の戦い」だったかな、ホーンブロワーのシナリオも楽しかった。 そして「スクォードリーダー」はプレーするよりルールを調べてる時間のほうが長かったですね。ダメな下士官が分隊長になると分隊全部が弱くなったりするのも面白かったですねえ。

Re: No title

Abさん、コメントありがとうございます!
おおっ! なつかしいタイトルが続々と!
スクォードリーダー、いましたね士気チェックに不利な修正つけてくれる指揮官殿……
確か自分はアドバンストの方を所持しているのですが、ちょっと変わったことをしようとするとそれに適用されるルールを探すのに時間を要し、やっと見つけたと思ったらそこで使われている略語の意味を探すのに時間を要し、と大変なゲームでした。ある意味、いい時代でしたね(笑)
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