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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その7

先日、草むらを歩いていたら背後でものすごい羽音がして思わず振り返ったところ、ほんの1~2メートル後ろでトビ(鳶)が獲物をかっさらって地面スレスレに飛び去る場面に出くわした田舎住まいの筆者がお送りする世界のカードモデル情報。

ブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークト博士のオモシロ飛行機終末旅行もそろそろ終盤。今回は、あまり知られていないが左右非対称機と同様にフォークト博士が力を入れていた無尾翼機とその関連機体について。

最初に紹介するのは前回のP 194からまた数が跳んで、 P 208
これは、つい最近Orlikからキットがリリースされている。と、いうか、もともとこのキットの説明をしようと思ったら関連事項が膨大になりすぎたのが当シリーズの発端なのであった。

29093_rd.gif

Orlik公式ショップからの引用で、P 208。なぜかgif画像だが別にアニメーションしたりはしない。
うーん、カッチョいい。
これは、別にノリで制式採用機を決めるウーデット(1941年11月17日に自殺)にアピールするためにカッチョ良さを追求してったらこうなったわけではなくて、

・頑丈な連合軍航空機を撃破するためには大型機関砲の装備が必要
 → しかし、大型機関砲は主翼内におさまらないし、ポッドを吊るすのはロスが大きい。機首に集中するために双発にするのは運動性が低下する。
  →そうだ、推進式にすればいい。推進式ならジェット化もしやすい
   → どうせなら尾翼をなくせば延長軸でプロペラを回すロスも防げる
    → エンジンが後ろにあるせいで重心が後ろに寄るので主翼は後退させる。このレイアウトは高速度性能も良くなる。
と、いう合理的な思考で導き出されたスタイルであった。

ただし、完全に尾翼をなくしてしまうと安定性が不足して操縦が目茶ムズになるので主翼の先に細く短い胴を取り付け、そこに垂直・水平を兼ねた尾翼がある。別の言い方をすれば、P.208はサーブ21のような推進式3胴レイアウトの左右胴体を極端に小さくし、尾翼中央部を外側へ移動した形式とも言えるだろう。こうすればプロペラ後流が水平尾翼に直撃してバタ付き(フラッター)が発生することもないし、いい事尽くしである。

フォークトはこのアイデアを確認するために、チェコのシュコダ・カウバ(Škoda-Kauba)というメーカーと連絡を取る。
このメーカーは航空大臣ヘルマン・ゲーリングの個人的知り合いだったオットー・カウバ(Otto Kauba)というエンジニアがコネで作ってもらったもので、無尾翼機やプッシャー機の研究をしていた(全くの偶然ながら当時日本で無尾翼機の研究をしていた萱場氏と名前が似ているのがおもしろい)。
シュコダ・カウバはŠkoda-Kauba V6という進式3胴機の尾翼を改修したSL6という機体を作成して飛行特性をテスト。結果ははっきりしないがダメダメだったらそこで試合終了だと思うのでそれなりの結果を得たのだろう。
余談だが、シュコダ・カウバは無尾翼機の欠点である安定性を補うために翼の後ろに小さい尾翼を追加するアイデアを盛り込んだŠkoda-Kauba V1という、なんかもうヤケクソ気味な飛行機も開発しており興味深いのだが、これを追っかけていくときりがないので今回はやめておこう。

そんなわけでシュコダ・カウバの協力を得て設計を完成させたP 208、Orlikのサイトには表紙画像しかなかったので、ポーランドの大手ネット通販ホビーショップ、super-hobby.comから画像を引用してキット内容を見てみよう。

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下段右の線画を見るとわかるが、めちゃくちゃカッチョいい。これだけカッチョ良ければ物理法則を無視して英国空軍の2つや3つ、軽く壊滅させられそうだ。
キット名の「P.208.03」というのは3種類考えられたP.208のサブタイプの一つで、エンジンがダイムラー・ベンツ DB 603を搭載したタイプ。他にユンカース Jumo 222を搭載する01、ユンカースJumo 213を搭載する02があった。

Orlikの P 208 はスケールは空モノ標準の33分の1、定価は31ポーランドズロチ(約1000円)となっている。
ところでこのキット、どういうわけか公式ページ直販ショップでもキット名が「Blohm & Voss BV P.205.03」と表記されている。P.205は高高度戦闘機Bv155の改修案だったようなので、表紙のP.208が正しい表記だろう。

せっかく推進式にしたら、これをジェット化したくなるのは世の常である。
というわけで次はP 208をジェット化したP 209
image01_2019112111054090f.jpg

画像はZarkov Modelsからの引用。
Roman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズからだが、なぜか48分の1、72分の1、100分の1と三種類のスケールでリリースされており、定価はそれぞれ4.75ユーロ(約600円)、3.75ユーロ(約450円)、3.25ユーロ(約400円)となっている。たぶん、中身は別設計ではなく縮尺変えだと思うが、商品画像が全部同じなので詳しいことはわからない。
P 209 は基本的にはP 208をジェット化したものだが、ジェット化に伴い胴体が完全再設計となっているのであまり共通点はない。
ぶっちゃけ、ジェット化でちょっとカッチョ良さ度は下がったな、というのが正直な感想である。

商品直リン(上から順に48分の1、72分の1、100分の1)
http://zarkovmodels.com/en/?pid=698
http://zarkovmodels.com/en/?pid=699
http://zarkovmodels.com/en/?pid=700

このころ連合軍の空襲が日に日に激しくなってきており、早急に航空戦力を高めるために1944年春、ドイツ航空省は「緊急戦闘機計画」を開始する。この計画で要求された仕様は、ジェットエンジン1基を装備し、できるだけ製造コストがかからず(町工場など、工作能力の低い工場でも生産できること)、性能はそこそこ高くて(最高時速750キロ以上)、戦略物資をあまり使用せず、未熟なパイロットでも操縦できる、というものだった。できるか、そんなもん!

この無茶振りに答えるため、各社はなんか思いつきか落書きみたいな飛行機をバンバン計画してすこぶる楽しいことになったのだが、ブローム・ウント・フォスは P 208 を単純にジェット化したのを P 209.01 とし、もっと取り扱いを容易にしたバージョンを P 209.02 の名前で提出した。

image01_2019112111283412b.jpg image04_201911211128326d8.jpg

同じく画像はZarkov Modelsからの引用でRoman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズから。
どうやら「未熟なパイロットに無尾翼機の操縦は難しいだろう」と尾翼を追加し、そしたらバランスが変わったんで後退翼を前進翼に変えてみた、ということらしい。
なんかもう、見るからに無理やり辻褄合わせたのがバレバレなやっつけ仕事で、どう考えてもエンジンの排気で尻が燃えるので没になった。
キットは48分の1、定価4.75ユーロ(約600円)となっている。
(その8へ続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローム・ウント・フォス_P.208
https://en.wikipedia.org/wiki/Blohm_&_Voss_P_209
その他の参考ページは最終回にまとめて掲載予定。
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ジャンル : 趣味・実用

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No title

私はこういう変わり種飛行機も好きで、震電、ブロームウントフォスP210、XSF-1ポゴ、ブラックビュレット、カモフA7、アセンダー、コレオプテールなどカードモデルも何点か集めたのですが、作ったのは双胴メッサーシュミット、ゴブリンくらいできりがないので最近は見送っています。

Re: No title

Abさん、コメントありがとうございます!
おおおっ! 実にうらやましいラインナップですね!
自分も満州キ98を作ってみたりその手の飛行機には目がなくてキットを少し集めてはいるのですが、印刷された展開図は一発完成させられる自信がなくてどうしても冊子のまま眺めるだけになってしまいます……
Orlikのゴブリン仕上げられるなんて感服です。自分はあの失敗が許されないシルバー特色印刷見ただけで諦めました(笑)
引き続きよろしくお願いいたします!
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