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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その5

本年は無事に仕事納めがすることができて、どうもありがとうございましたな筆者のお送りする世界のカードモデル周りの情報。

今回はいよいよリヒャルト・フォークト博士といえばこれ、左右非対称機 BV 141 の登場。

Bundesarchiv_Bild_146-1980-117-01,_Aufklärungsflugzeug_Blohm_-_Voß_BV_141

こいつね(Wikipediaからの引用)

そもそも、なんでこんなことになったのかと言えば、決して伊達や酔狂ではなく、前回も書いた通り空軍が出した仕様が「単発三座で視界がめっちゃいい偵察機」というものだったからだ。
なるほど、エンジンが横にあるから前後方向への視界は抜群にいい。

実はこのアイデアは偵察機のために急に思いついたものではなく、フォークトは1935年にすでに左右非対称機の特許を出願している。この特許は別に「すごい視界がいい飛行機」ってわけではなくて、どうも単発エンジンのトルクモーメントをこのレイアウトで相殺するってことが目的だったようだ。
この辺の特許関係については、中川国際特許事務所さんのコンテンツ、「ネズ爺&ハテニャンの特許探偵団」の「Vo.17 非対称飛行機」で詳しく説明されている。このコンテンツ、他にも「Vol.11 フォンオハイン・ジェットエンジン」とか、「Vo.23 クリスティー式サスペンション」とかあって、ミリタリーメカファンなら見逃せない内容となっている。
この非対称機のアイデアが「単発で良好な視界」という条件にジャストフィットする、と気がついた時のフォークト博士の感激やいかばかりか。

BV 141 はトライアル相手のフォッケ・ウルフFw 189よりも速度、航続性能で優れていたが空軍省は「いや、ちょっといくらなんでもこれは……」とドン引きしてオーバーヒートの問題や油圧系のトラブルを理由にFw 189を採用してしまった。まぁ、気持ちはわからないでもない。でも、だったら「単発」っていう要求仕様はなんだったんだろうか。
しかし、ここへ来て酒と女とアクロバット飛行が大好きで政治力は雲の彼方に捨ててきたドイツ空軍きっての傾奇者(かぶきもの)、花のエルンスト・ウーデットが「左右非対称飛行機おもしれーじゃん! やってみようぜ!」とノリノリになってしまい、追加試作、さらに先行量産が命じられた。このひと、ほんと気分で空軍運営してるな。
ウーデットの後押しを受けてBV 141は試作3機、評価機(BV 141 A)5機、さらに改良型(BV 141 B)20機が製作されている。B型ではエンジンが強化されており、尾翼も右半分を削っているがこれはバランスの辻褄をあわせるためではなく後方銃座の射界を広げるためだったようだ(冒頭の写真はB型)。
とは言えいくらウーデットが傾(かぶ)いているからといって(「傾(かぶ)いてる」とBv 141が見た目に「傾(かたむ)いている」をかけています)、「おもしれーから」で量産機種を増やすわけには行かず、またB型で採用されたBMW 801エンジンがフォッケウルフ Fw190と被っていることもあり、生産は前述の通り8+10機で終了した(B型のうち2機は破損した以前の機体の再生機で、生産数は8+8の16機という資料もある)

Bv 141はおそらくブローム・ウント・フォスで最も有名な機体だが、カードモデルキットには恵まれておらず80年代ごろにFlyModelからキットが出版されたきりである。手書き時代のキットでデジタル再販されていないので現在は入手も制作もかなり困難だろう。
なお、FlyModelはFw 189もリリースしていたが、デジタル再販されておらずこれも入手は困難(Fw 189は1998年にMały Modelarzからもキットが出ているが、こちらも時期的に手書きだろう)。
もし、どうしてもFw 189のカードモデルが欲しいという場合にはウクライナOrel社のСу-12を購入し、「これはソビエト軍に鹵獲されたFw 189だ」と自己暗示をかけることでなんとかなるかもしれない。無理かもしれない。

Bv 141が凡打に終わった後、ブローム・ウント・フォスは主翼の取り付け角が電動でギコギコ変わる輸送機、BV 144(試作1機)とか、メッサーシュミットが空母艦載機として設計開始したけど途中で空母建造が中止になったんで高高度迎撃機にしようと思ったんだけどジェット機の開発でそれどころじゃなくなったんでブローム・ウント・フォスがなんとかしてよ、と言われて長大な主翼で1万6千メートルまで昇れる飛行機になりましたがもはやそれどころじゃなかったBV 155(試作2機)とかを作った。

かつて偵察飛行艇 BV 138 の採用でそれなりの存在感を示した飛行艇部門では、どういうわけかフォークトは軍用飛行艇ではなく戦後のルフトハンザに大西洋横断機を納入しようという腹積もりで巨人飛行艇ばかり設計しており(ドイツ軍に飛行艇・水上機の需要がなかったのかもしれない)、6発エンジンの巨人飛行艇Bv 22213機、さらに巨大(翼幅60.17 m)なBV 238を1機生産しこれらはドイツ軍で輸送機として使用された。

Самолет_БВБ

Wikipediaからの引用でBV 238。日本軍の二式飛行艇と比べると全幅で22メートル長く、最大重量で60トンも重いというとんでもない大きさだった(ただし最高時速ではBV 238の方が40キロほど遅い)。

ブローム・ウント・フォスではさらに翼幅80メートル、最大重量210トン、8発エンジンのP 200なんてのも妄想していたが、もちろん試作もされなかった。
ちなみにP 200は33分の1の空モノスケールでキット化すると完成全幅が2.4メートルになる。

戦後、ブローム・ウント・フォスの航空部門は解体され、ブローム・ウント・フォスは造船業に戻った。
なので、これでブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークトのオモシロ飛行機物語は終わりなのかというとそうではなくて、むしろここからが本番である。
次回からは高性能を目指しすぎて大変なことになってしまったブローム・ウント・フォス計画機の数々を見ていこう。
(その6へ続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/BV_141_(航空機)
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