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Orel ソビエト 単軸牽引車 ”МоАЗ-546П” 後編

先日、2年努めた開発室の入っている階を間違え、エレベーターに同乗していた同僚にむちゃくちゃ驚かれた筆者のお送りする世界のカードモデル最新情報。別に記憶障害とかじゃなくて、単に寝ぼけてたのよ……
本日はウクライナOrel社からリリースされた単軸牽引車 ”МоАЗ-546П”の続きだ。

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前回はミンスク工場(МАЗ)が設計した単軸トラクターМАЗ-529をモギリョフ工場が生産を開始したところまで。
ミンスクから生産を任されたモギリョフではさっそくМАЗ-529をどんどこ生産し、ソビエトでは単軸牽引車は道路工事とミサイル牽引に広く使われることになった。

ところで、通常の2軸式に比べて単軸牽引車の利点とはなんだろうか。
まず単軸の優れているポイントとして、牽引車の全重量が駆動輪にかかるので(駆動輪が空回りしないから)車重の割に牽引力が強いことが挙げられる。でも前輪に全重量が載ってたら、ハンドルが重くならない? というのが気になるところだが、全然問題ない。だって、МАЗ-529の車輪って、そもそもステアリング切れないんだもん。
……(゚Д゚)ハァ?

重要なことなのでもう一度書いておこう。普通の車両は前輪を左右に向きを変えて曲がっていくが、МАЗ-529は車輪の向きを変える機構はない。では、どうやって向きを変えるのかというと、牽引する車両をつなげるピボットに油圧アクチュエータが仕込んであって、それをギコギコ動かすことによってМАЗ-529全体の向きが回転するのだ。まじか。
この機構の利点は、車軸のステアリング機構を一切排除できることで、従来のステアリングでは面倒見きれなかった超重重量の車両でも向きを変えられるという点にある。
そういえばドイツの地雷処理車両にもこんなんあったな。
ちなみにМАЗ-529は最大で後部車両に対して90度まで横を向くことができるように設計されており、その状態では2軸の牽引車に比べて極端に短い場所(両者を合わせた全長より少し短いぐらいの広さがあれば十分)で展開できるという利点もあった。

じゃあもう、世界中の牽引車を単軸にしちまおうぜ、というわけにはいかないのは、もちろん利点もあれば欠点もあるからで、この形式最大の欠点は後ろの車両を切り離すと自分一人では方向転換が全くできなくなってしまうことである(一応、単独でも自立できるように先端部分に装着する小さい補助輪がある)。これでは、目的地に荷物を届けたらトレーラーヘッドだけで帰ってくるという使い方は不可能だ。
また、形式が特殊すぎて他の車両にシャーシや機構が転用できないという欠点もある。だからモギリョフ工場では単軸牽引車しか作っていない。これは単一車種のために工場を建ててしまうという、共産圏の計画経済下らしい荒業が使えないと実現はなかなか難しい。あと、操作性が違うので普通の2軸の感覚で1軸牽引車を走らせると間違いなくカーブで道から飛び出す。だから操縦者も単軸専用に養成することが望ましい。

そんなわけで単一車種だけで1ジャンルを形成するというソビエト的な力技で単軸牽引車МАЗ-529だけ作ってたモギリョフ自動車工場だが、別に向上心がなかったわけじゃなくて、1960年代前半に早くもМАЗ-529のパワーアップ版の設計を始めていた。モギリョフで作ってるのに車両名称が「ミンスク」なのも、なんか腹立つしね。
これはエンジンをЯМЗ-238А(15リットル215馬力)に換装、キャビン全体を再設計したもので「МоАЗ-546」として大量生産された。

それでは、世界的にも珍しい単軸重牽引車、МоАЗ-546の姿を公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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こういう車両だとすればそれほど変わっては見えないが、前半分だけが「МоАЗ-546」、後ろに引っ張ってるのは「Д-357」という別車両なのでやっぱり変だ。パッと見ではそれほど大きくは見えないが、МоАЗ-546だけで全長4.5メートルもあるので、かなり大柄な車両である。

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細かいディティールアップがされているが、エンジン、トランスミッションなどもかなり細かく再現されており、単軸牽引車の独特なメカニズムもよくわかって興味深い。これらの機構は完成しても隠れないので手を抜かずじっくりと仕上げたいところだ。

МоАЗ-546はパワフルな牽引車だったが、だからと言ってソビエト中の単軸牽引車全てがМоАЗ-546に置き換わってしまったわけではなく、МАЗ-529とは用途によって使い分けがされていたようだ。両者の生産は並行して行われ、МАЗ-529は1973年まで、МоАЗ-546の生産は1989年のソビエト末期まで続けられた。具体的な生産数はどこにも書かれていないのでわからない。ソビエトが崩壊すると、国営でなくなった工場では単一車種だけを作り続けるわけにはいかず、そうなるとパーツや生産設備の転用が効かない単軸牽引車はお荷物となってしまい生産は終了した。

なお、1963年に「D.M.カルブィシェフ名称クルガン装輪牽引車工場」(Курганский завод колёсных тягачей имени Д. М. Карбышева)という、ICBMを載せたトレーラー引っ張るバカデカ牽引車を作っていた工場が「КЗКТ-932」という新型牽引車を開発した時にそのバリエーションとして単軸バージョンも試作したが、2軸も単軸もそれほど性能的にパッとしなかったのでわざわざ従来の生産ラインを混乱させる必要もないだろうと量産はされず、ユニークな単軸トレーラーの系譜はМАЗ-529ファミリーとМоАЗ-546ファミリーの2系列だけに終わった。

Orelからリリースされたソビエト 単軸牽引車 ”МоАЗ-546П”のスケールは陸モノ標準の25分の1。完成全長は書いていないが、МоАЗ-546だけで4.5メートル(完成全長18センチ)だから、Д-357まで含めたら50センチ前後のかなり大きなものになりそうだ。難易度は3段階評価の「3」(難しい)、そして定価は667ウクライナフリブニャ(約2700円)となっている。
重機ファンのモデラーなら、西側には存在しない単軸重牽引車というオモシロ機構車両をテーブルの上に飾れるこの機会を見逃すべきではないだろう。



画像はOrel社公式フォーラムからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://ru.m.wikipedia.org/wiki/Одноосный_тягач
https://en.wikipedia.org/wiki/MoAZ
https://ru.wikipedia.org/wiki/МАЗ-529
それぞれの英語版、ロシア語版を参考とした。

http://www.techstory.ru/du/all_skrapers_d357.htm
後ろに引っ張ってるД-357スクレイパーについて。写真多数。

http://www.telenir.net/tehnicheskie_nauki/sekretnye_avtomobili_sovetskoi_armii/p6.php

ソビエトの単軸牽引車とその派生車両について。補助輪をつけたMAZ-529など、貴重な写真多数。
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No title

なるほど、ユンボのステアリングもこの方式ですね。 ユンボは車軸と車軸のちょうど中心で折れ曲がるので、内輪差がないのが特徴ですが、これは極端にトラクター寄りなんですね。 こういう変なメカニズムのモデルは好きです。

Re: No title

Abさん、コメントありがとうございます!
あ、なるほど。中央で屈曲すれば内輪差がなくなるっていう利点もあるんですね。なるほどー。
それにしても、Orelがキット化してくれなかったら、ソビエトの道路工事でこんな後ろ半分作り忘れたみたいな車両が頑張ってるなんて生涯知らなかったと思います。これだからカードモデル趣味はやめられません(笑)
引き続きよろしくお願いいたします。
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