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無人航空機斯く戦えり・その6

開発室でインフルエンザ患者が続々と爆誕、いまや職場がバイオハザードな筆者がお送りする世界のカードモデル情報。すみません、書き出しはちょっと盛りました。そこまでヤバくはないです。
今回は、去年の年末に「カードモデル関係ないのに書きすぎちゃった。ごめんご☆(テヘペロ)」した無人航空機ネタの続きだ。
以前、一旦休止に入る時に「第一次大戦のネタを使い切って」みたいな事を書いたが、良く考えたら一番大事なネタを紹介するのを忘れていた。カーチス・スペリー飛行爆弾(第4回第5回)がコケまくってたアメリカが、並行して開発していた「ケタリング・バグ」空中魚雷である。

第4回で書いた通り、カーチス・スペリーの飛行爆弾はスペリーが熱烈に海軍に売り込んだために海軍主導で開発が進んでいたが、そうなるとオモロクないのが陸軍である。海軍が飛行爆弾を持つのなら、陸軍だって持ちたい。そういうわけで陸軍は著名な科学者、チャールズ・ケタリング(Charles Franklin Kettering)に「ケタリング先生……!! 無人飛行爆弾が作りたいです……」と話を持ちかけた。
ケタリングは生涯に300件の特許を取得した当時を代表する技術者で、自動車用セルモーターや電気式ヘッドライトなどの発明で自動車の発展への貢献が顕著であった。ちなみにセルモーターが発明される以前の自動車はクランクレバーを手で回してエンジン始動を行っていたがこれはメチャクチャ腕力が必要な上に、うっかり手を滑らせてラジエターグリルに顔を突っ込んだり、始動に失敗して跳ね返ってきたクランクレバーが腕や頭を強打して死亡する例が少なからずあった。昔の自動車はエンジンかけるだけで命がけだったのだ。
高級車ブランド「キャディラック」のチーフ・エンジニア、ヘンリー・リーランドが友人をこの事故で失っており(立ち往生していた女性ドライバーの車を助けてあげようとした際に跳ね返ったクランクが顔を打ったらしい)、リーランドの求めに応じてケタリングが開発したのが、バッテリーで回すセルモーターでエンジンを始動、走行中はそのモーターが発電機となってバッテリーに充電、さらに余った電気でヘッドライトを点灯させるという現在の車の電装系のもととなるシステムであった。

Charles_F_Kettering.jpg

Wikipediaからの引用でチャールズ・ケタリングと彼の発明したセルモーター。セルモーター発明時にはまだケタリングは40歳手前なので、この写真は後に撮られたものだろう。

陸軍からの依頼に応じたケタリングは陸軍の空中魚雷を、海軍のCS飛行爆弾よりも安価でポンポン発射できるシステムとして設計した。ボール紙の張り子に木を貼って組み立てられた機体はケタリングが経営権を持っていたDELCO(デイトン・エンジニアリング・ラボラトリーズ・コーポーレション)が戦争だ! 飛行機だ! と立ち上げた「デイトン=ライト社(Dayton-Wright)」で開発されている。社名の「ライト」というのは飛行機発明者であるライト兄弟のことで、同社には兄弟の弟の方、オービル・ライトがアドバイザーについていた(兄のウィルバー・ライトはすでに1912年に腸チフスで死亡している)。
飛行爆弾に搭載された2ストローク40馬力、V型4気筒エンジンはWikipediaには「フォード・モータースの既存のものを流用」と書いてあるが、スミソニアン博物館(ケータリング・バグのエンジン現物を所有している)の説明によると、このエンジンはフォードモータースのチーフ・エンジニアであるC・ハロルド・ウィルズ(Childe Harold Wills。ウィルズはフォードT型の駆動周りを設計している)が技術顧問を努めていた「デ・パルマ製造会社(De Palma Manufacturing Company)」で新たに設計されたものだったそうだ。フォードがこのような軽量エンジンを生産する理由が思い当たらないので、たぶんスミソニアンの説明が正しいのだろう。
ちなみにデ・パルマ製造会社はインディ500で優勝したこともあるレースドライバーのラルフ・デ・パルマ(Ralph de Palma)が1916年にデトロイトに設立した会社だが、なんか飽きちゃったのか1年ちょっとでデ・パルマはこの会社の責任者を辞めてしまった。
肝心の自動操縦装置だが、さすがのケタリングもこれはホイホイと設計することはできず(と、いうか同じものを発明し直してもしょうがない)、この部分は結局海軍で無人機を作っていたエルマー・スペリーに設計図を書いてもらった。
アメリカ最高の技術者ケタリングが指揮を取り、飛行機の発明者オービル・ライトが機体を監修、世界最大の自動車会社フォード・「モータースに関係ある人が関係ある会社で作られたエンジンを積み、世界をリードする自動操縦の権威エルマー・スペリーが設計した自動操縦で飛ぶのだから、この「バグ(虫)」と名付けられた空中魚雷は世界最高のものとなる! はずだった。

800px-KetteringAerialTorpedo.jpg

完成したもの。
写真はWikipediaからの引用(アメリカ国立空軍博物館に収蔵されている原寸大レプリカ)。
うーん……
まぁ、基本コンセプトが「安くてバンバン飛ばせる空中魚雷」だからこれでいいんだろうけど、なんというか、夏休みの工作感溢れる仕上がりだ。
ちなみにコストは1機400ドル(うち、エンジンが50ドル)だったそうで、カーチスJN-4”ジニー”の製造コストが1機5,465ドル(いつごろの値段かはわからない)だったから単純比較は乱暴だが、10分の1以下の値段で生産できたこととなる。
なお、いかにもぶっ壊れそうな主翼だが、回転計が計測した距離が設定した値になるとボルトが外れて主翼が脱落する(墜落する)構造になっていたので、これはこれでいいようだ。いかにも重そうな足回りはもちろん滑走用のドリーで、飛び立つときにはこれを地上へ置いていく。『当時、アメリカ陸軍に出入りしていた名古屋出身の日本人技術者がドリーに乗っているバグを見て、「まるでケッター(自転車)に乗った飛行機だぎゃー」と言ったことで、この飛行機は「ケッタリング(Kettaring)」と呼ばれるようになった』というウソ話をどこかに書こうと思ったのだが、場所がなかったのでやめておいたことを追記しておこう。

ところで英語版Wikipediaではスペックが射程121キロ(75マイル)、飛行速度時速80キロ(50マイル)になっているが、日本語版では飛行速度が時速193キロ(120マイル)というすごい数字になっている。130馬力エンジン積んだ ソッピース・キャメル戦闘機の最高時速が185キロだから、いくらバグが小さいとは言え193キロは過大な数字だろう(ただし、先述したアメリカ国立空軍博物館のページでも飛行速度が時速120マイルになっている)。

(その7に続く)

参考ページは第7回にまとめて記載予定。
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