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無人航空機斯く戦えり・その1

開発室の引っ越しで、来週から勤務地が田町になる筆者のお送りする、カードモデルに関係あったりなかったりする情報。今回から数回は、とあるキットについて確認しようとしてすっかり泥沼にはまった無人航空機開発史について、ネット上で拾い集めてきたにわか知識で語ろうという趣向だ。

いろいろと定義はあるが、軍用の無人航空機で最初に実用化に達したのは第2次大戦中にドイツが実戦で使用したフィーゼラー Fi103、別名V1飛行爆弾であったと言えるだろう。
では、実用化に達しなかった無人航空機には、どんなもんがあったんだろう。
記録に残っている最初の軍用無人航空機は、おそらく1863年2月24日に米国特許(US 37771 A)が取得されたチャールズ・パーリーの「風船爆弾」だろう。

US37771-0.jpg
画像はGoogleの特許検索から(データ提供: IFI CLAIMS Patent Services)。

1863年……1863年!? 日本で言えば文久年間、ペリーが浦賀に来てまだ10年の1863年???
そう、タイプミスではなく、本当に1863年である。
映画「SF巨大生物の島」は南軍に囚われた北軍兵士が気球で脱出するシーンから始まるが、アメリカでは1861年から始まった南北戦争で、北軍が「陸軍気球軍団(Union Army Balloon Corps)」というのを編成し、敵情や弾着を觀測するのに用いていた(気球が軍事用に使用されたのは1794年、フランス革命中にフランス陸軍が弾着觀測に用いたのが最初)。
これに目をつけたのがニューヨーク在住の発明家、チャールズ・パーリー(Charles Perley)だ。
当時の火砲は平射する野砲だと射程だいたい1.5キロ、山なりの弾道で砲弾を放り込む迫撃砲だともっと短くなる。
射程がこれしかないんでは、守りを固めた要塞に砲弾が届くまで火砲を引っ張っていこうとすれば目標まで1キロぐらいまで近づかなければならず、当然防御側の砲火、さらに一部の腕の良い狙撃手が装備していたライフル銃の狙撃に晒されることとなる。
そこで、パーリーは気球で目標を爆撃することを思いついた。
すなわち、攻撃側はまず目標の風上に陣取り、そこで爆弾を積んだ無人の気球をふくらませる。気球には時計仕掛けで底が開くバスケットが吊るされており、その中に積まれた爆弾がふわふわ~~~~ひゅー、どかん、と目標を破壊するというわけだ。やったぜ。
なぜ、人が乗った気球で敵の上まで行って爆弾を投げ落とすのではいけないのかと言うと、当時の気球は水素で浮力を得ているために当然被弾に弱く、敵の真上まで行っては到底生還は望めない。しかし、無人なら撃ち落としたところでやっぱり爆弾は爆発し、結局は敵に損害を与えるのだからどんどん撃ち落としてくださいな、というわけだ。
もちろん、過去にも似たようなことを思いついた発明家はいただろうが、きちんと文書に残っているのは、このチャールズ・パーリーの特許が最初だと思われる。

なお、このチャールズ・パーリーという人物、1840年台中盤から1860年台中盤にかけていくつか特許を取得しているが、詳しい人物伝は見つけられなかった。風船爆弾以外の特許には船舶関係の機器の改良が多く、港湾関係者だったのかもしれない。
スミソニアンのアメリカ・ナショナル・ミュージアムにはチャールズ・パーリーの「教会・学校用折りたたみ椅子」の特許模型が収められている。

リンク

「特許模型」というのは、アメリカ特許庁が特許申請の際に提出を義務付けていた縮小模型だが、後に特許の出願が多くなると特許庁の倉庫が大変なことになったので1880年に廃止された。
ちなみにアメリカの特許で検索をかけると1870年台にもチャールズ・A・パーリーという人物がいくつか特許を取っている。こちらの人物は特許取得時にはマサチューセッツ在住だが、上記の折りたたみ椅子に”C. Perely and Sons”と刻んであるので、おそらく息子なのだろう。

さて、パーリーの「風船爆弾」は戦争の様相を一変させ、空をふわふわと埋め尽くす無人気球からの爆撃で南部の都市は軒並み焼け野原となり、南部連邦大統領ジェファーソン・デイヴィスも「ほんとすんませんでした」と謝った、のかと言えばもちろんそんなことはなくて、「SF巨大生物の島」でも気球が嵐で流されてでっかいカニがいる島に漂着したことでもわかる通り、パーリーの風船爆弾は文字通り「風まかせ」という大きな欠点があった。
時計仕掛けの投下装置も、そのタイミングで敵上空に差し掛かっている保証はなく、ヘタすりゃ上げた途端に風がなくなってどうしようかと見上げてるうちに気球から爆弾がコンニチワ!することになる。それでも、風船爆弾は特許が取得された北軍、またそれを模倣した南軍によって少量が実戦で投入されたようだが、あまりはっきりとした資料はない。

(その2に続く)

参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/北軍気球司令部

http://www.pbs.org/wgbh/nova/spiesfly/uavs.html
https://sites.google.com/site/uavuni/
無人航空機の歴史。今回の記事のネタ元。
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