アメリカ 軽戦車 Ford 3-Ton M1918 2種(後編)

この歳にもなって下り坂で脚を取られて前につんのめって転び、両手のひらに擦り傷を負った筆者のお送りする世界のカードモデル最新情報。まぁ、とっさに手が前に出ただけいいとするか。
今回も前回に続き、ポーランドModel-KOMの新製品、アメリカ軽戦車 Ford 3-Ton M1918の紹介。

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キットの表紙。よく見ると、なんか履帯の下部が地面に埋もれてたり機関銃から妙に弱々しげな銃火がポフっと出ていたり、色々と味のある絵だ

1918年、戦車を持ってないアメリカ軍のためにフォードが開発した新型戦車は、おそらく軍からルノーFTの資料供与があったのだろう、各所にルノーの影響が見て取れるものであったが、砲塔を廃止し、車体に直接機関銃(ブローニング7.92ミリ機関銃、銃弾数550発)をマウントするという思い切った変更が加えられていた。
注目すべきはエンジンで、ルノーの39馬力エンジンに対して、24馬力エンジン2基を搭載していた。このエンジンはフォードがすでに飽きるほど生産しているT型フォードのエンジンで、その気になればちょっと表に出て通りかかったフォードT型を買い取ればいくらでも手に入るという利点があった。
「え、乗用車のエンジン2つで戦車って動くの?」と心配になるが、新型戦車はその名の通り自重が3トンしかない(フォードT型は700キロ程度)上に、T型のエンジンは排気量約3リットル、最大トルクが回転数1000rpmで11.3キロという、ちょっと信じられないような数字(うちの駐車場に停まってるダイハツ・タントと比べると、タントは排気量660cc、最大トルク3200rpmで10.5キロ、車重890キロ)の、低速域で粘りのあるエンジンなので問題ないとされた。この、現在の目で見ると異様とも思えるエンジンスペックは全米の道路がまだ十分に舗装されていなかった時代の悪路に対応するためのもので、道路が整備されていくと共に低速重視のフォードT型は時代遅れな車となっていく。
装甲についてははっきりした数字が記されていないが、おそらくルノーFTと同程度で15ミリから22ミリ程度ではないだろうか。
最高速度は時速約13キロ(8マイル)。整地/不整地の記述がないが、ルノーが整地で20キロだから、おそらくフォードも条件が良い場合の速度だろう。燃料タンクは64リットル(17ガロン)。作戦行動距離は54キロ、と資料にあるが、これがどういう条件の数字なのかはちょっとわからない(ちなみにフォードT型の燃費はリッター約10キロだった)。

それではここで公式サイトの完成見本写真を……といきたいところだが、なぜか中途半端に組み立て途中の写真しかなかったのでそれを見ていただこう。

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足回りがまだ組み立てられていないお陰で、車体形状が良く分かる。一見不思議な形をしているように見えるが、ルノーが前に操縦士、後ろに砲手という縦の乗員配置だったのに対してフォードは車内から見て右に操縦士、左に砲手という横配置にしたお陰で乗員スペースが前後に詰まっており、またエンジンスペースもエンジンが前後に長いルノーに対してT型用エンジン2基を横に並べているために前後が詰まっており、全体的に前後を潰したディフォルメ・ルノーと言えるスタイルとなっている。
なお、2基のエンジンは右履帯、左履帯と独立していたわけではなく、同期して一本のシャフトを回しているようだがちょっと確証はない。

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正面から。車体の前の棒は車外装備品ではなく、なんと誘導輪のシャフト。ここは一番攻撃が集中する場所なんで、ちょっとぐらい車体が重くなっても車内に収めるべきだったではないかと思うのだがどうだろうか。
また、向かって左側、操縦士全面の装甲は一枚板の大きなハッチになっており、基本的に乗降はここから行う(砲手席天井も開くことはできる)。これまた、攻撃が集中する場所にこんな大きなハッチはいかんだろう、と思うがどうなんだろうか。第一、このレイアウトじゃ敵の前で故障したら脱出できないじゃないか(ルノーは砲塔背面にもハッチがある)。せめて操縦席前面は固定にして、天井を(必要ならキューポラごと)前開きで盾にできるようにすれば良かったんじゃないかと思うのだが、これまたどうなんだろうか。
他にも、操縦席前面で跳弾した銃弾が思いっきりキューポラに直撃するぞとか、ベンチレーターがないけど換気どうするんだ(これは第一次大戦型戦車のほとんどが抱えていた問題)とか、いろいろと不思議な戦車だ。
ちなみに、戦闘室背面、機関室の斜め左右上砲にピストルポートらしきものがあるので、背後から敵が迫った時にはここからコルトM1911でガバガバと敵を射つのだろう。

フォード3トン戦車の試作が進んでいた1918年11月、不意に全てがご破産になった。
第一次大戦が終結したのである。
完成した試作15輌のうち1輌、もしくは2輌がフランスに送られ性能を試験された(時期ははっきりしない)が、試験結果についても述べられている資料を見つけることができなかった。しかし、残されている映像を見る限りではフォード3トン戦車はやや起伏に弱く、アンダーパワーであるように感じる。また、塹壕戦で使用するには尾橇を入れても全長が少し足りないようだ。
問題は、ほぼ同時期により本格的な戦車であるルノーコピーのM1917が試作を完了していることである。戦時なら、すぐに数を揃えられるフォードを大量生産し、急いでフランスに送るという選択肢もあった。だが、戦争は終わった。
結局、1万5千輌の大量発注は全てキャンセルされ、フォード3トン戦車の生産は試作15輌で終わった。
かなり多数のフォード3トンが一斉に行動するフィルムが残っているので、フォード3トンはしばらく演習などで使用されたようだが、最終的には950輌が生産されたM1917に置き換えられている。
現在は2輌が現存しており、1輌がジョージア州フォート・ベニング基地の装甲・騎兵博物館に、もう1輌がヴァージニア州フォート・リー基地の収蔵品となっている。

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展開図と組み立て説明書のサンプル。テクスチャは弱い汚しが入っているようだ。

さて、今回は関連商品をもう一点。
併せて紹介させていただくのはポーランドのブランドSZKからの新製品、アメリカ軽戦車 Ford 3-Ton M1918だ。

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同じじゃねーか!
なんでこんなアイテムがバッティングするんだ。わからぬ。日本人の筆者にはとんとわからぬ。たぶん、ポーランド人にもわからない。
あるいはどちらかの美女スパイがお色気で現在製作中のキット情報を盗み出したのか。それにしても同じものをぶつける意味がわからん。それともポーランドではポーランド版ガールズ&パンツァーが放映中で、人気大爆発中のまま第一次大戦編に突入したのか。

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写真はSZK版の展開図見本。テープで留めてあるのは筆者が落っこちてた写真を貼って画像を作ったわけではなく、公式でもとからの演出。最初、あまりのタイミングの良さにModel-KOM版とSZK版、中身が同一なのかと思ったが、展開図が異なるので全くの別設計のようだ。

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こちらは組み立て説明書。
SZK版の特徴は、表紙にも小さな写真が載っているがなんと内部再現キットであること。ツインエンジンの様子や、前後にオフセットされた乗員配置などがわかって興味深い。必然的にSZK版の方が「上級者向け」と言えるだろう。
また、よくみると機銃周りのディティールが異なっており、SZK版は初期に装備していた液冷型ブローニング機関銃、Model-KOM版は戦後に換装された空冷型ブローニングを装備しているようだ。

なにがどうなったのか、なぜかバッティングしたアメリカ軽戦車 Ford 3-Ton M1918、2種。2キットとももちろん陸戦標準スケール25分の1でのリリースで完成全長約16センチというお手軽サイズ。難易度はModel-KOM版が4段階評価の「2」(やや易しい)、内部再現キットのSZK版が5段階評価の「5」(とても難しい)となっているので自身のテクニック、フォード3トンへの愛情と相談してキットを選びたい。定価はModel-KOM版が29ポーランドズロチ(約950円)、SZK版が39ズロチ(約1300円)となっている。
第一次大戦の戦車ファンなら、珍しい車輌を机上に飾れるこの機会を見逃すべきではないだろう。また、フォードファンなら2キットとも購入し、作り比べてみるのもいいだろう。



写真はそれぞれModel-KOM、SZKのサイトからの引用。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Ford_3-Ton_M1918
https://ja.wikipedia.org/wiki/フォード・モデルT
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘンリー・フォード
https://ja.wikipedia.org/wiki/M1917軽戦車
https://en.wikipedia.org/wiki/Tank_Mark_VIII
それぞれの英語版も参考とした。

https://www.militaryfactory.com/armor/detail.asp?armor_id=679
フォード3トン戦車についてはこちらの方がやや詳しい。
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