アメリカ 軽戦車 Ford 3-Ton M1918 2種(前編)

ここしばらく続いてい0たひどい咳がやっとおさまってきて、さーてそろそろ紙工作も再開させようか、と企む筆者のお送りする世界の最新カードモデル情報。本日紹介するのはポーランドModel-KOMの新製品、アメリカ軽戦車 Ford 3-Ton M1918だ。

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冷戦期の、割りとどうでもいい試作機やあんまり主流じゃない装甲車輌を素晴らしいクオリティで提供し続けているModel-KOMから、まさかの第一次大戦車輌のリリース。これはやはり大戦100週年を記念してのことなのか。ちなみに今から100年前の1917年9月は第十一次イゾンツォ戦の戦いの最中。イタリア軍がオモシロ砲艦ファー・ディ・ブルーノとか38センチ列車砲を投入して頑張ってたころだ。

「フォード3トン戦車」は以前にNHKの「映像の世紀」(旧シリーズ)で鉄条網を踏み越えようとしたら車重が軽すぎて鉄条網が潰れず、勢いで華麗な後転を決める斬新な挙動が日本中のお茶の間に放映されたことで、この手の戦車の歴史からこぼれ落ちてどっか行った車輌の中では比較的メジャーな車輌ということができるだろう。しかし、実際に生産された車輌としては意外なほど資料が少なく、その生産に至る経緯などはいまいちはっきりしない。
なお、表紙画像では、背後の木の大きさが怪しいせいで大柄な車輌に見えるが、実際には全長4.3メートル、幅1.8メートル、高さ1.8メートルしかない、かなり小柄な車輌だ。これは同時期のフランス軽戦車ルノーFT-17が全長5メートル、幅1.7メートルだから幅でほぼ同じ、全長で70センチ短い。逆に言うと、ルノーに比べてそれだけしか差がなく、登場時期はもっと後になるがポーランドのTKS(全長2.6メートル)など、いわゆる「豆戦車」に比べると意外なほどの大きさがある。これは、おそらくこの時期には機関の小型化が進んでいなかったからであろう(ただし、ルノー、フォードは全長を稼ぐための尾橇を入れた長さである)。
ちなみに小さい車輌と言えばソビエトにはППГ(PPG)という、乗員2名が寝そべって乗る戦車的な何かがあって、こいつは全長2.5メートル、幅1.7メートル、そして高さたったの86センチというヤケクソ気味な大きさだが、まだカードモデル化はされていないようだ。

1917年、ルシタニア号は撃沈されるわ、メキシコには「アメリカを南から奇襲攻撃してくれたら、テキサス、ニューメキシコ、アリゾナの三州をメキシコ君にあげちゃってもいいかなー☆」なんていう不埒な電報が送られるわで、堪忍袋の尾が切れたアメリカは4月に対独宣戦布告を行う。
しかし、宣戦布告したはいいがアメリカは戦争準備を全く行っていなかった。兵力は豊富な人口と整備された鉄道網、州兵システムなどを活用してそれなりの数を集めたが、武器はそうやすやすと揃えることはできない。ソーシャルゲームならここで潤沢に課金して生産時間をキャンセルしてあっという間に軍備を整えるところだが、さすがのアメリカも現実にそれはできなかった。
なによりも不足しているのが、飛行機、戦車といった第一次大戦の新兵器で、参戦時のアメリカの戦力は軍用機50~60機(確定的資料なし)、戦車ゼロ、という冬戦争のフィンランド軍の方が強そうな数字だった。
戦車が本格的に大量投入される「カンブレーの戦い(11月から)」はまだだったが、機械化大好きアメリカ軍は参戦の時点で陸戦を決するのは戦車であると見抜いており、陸軍は5月には早くも「勝利するためには戦車が必要! 戦車戦車戦車!」と言い出していた。

イギリス軍は以前からアメリカ参戦時にアメリカの工業力を戦争に役立てるために米英共通仕様の戦車を一緒にドンドコ生産するというアイデアを持っており、これに従い「マーク8(Mark VIII)」という、なんかインディ・ジョーンズの映画で見たような薄ら長い菱形戦車の究極進化形の開発が始まったが、こいつはなにしろデカいし、長いし、で完成まではまだ時間のかかることが予想された。
そこで、マーク8登場までの「つなぎ」としてアメリカは軽戦車を先に生産することとして、軽戦車といえばルノーFTだよねー、というわけで、「アメリカ製ルノーFT、期待してるザンスよ」とフランスからルノーFTの実車サンプル、設計図などの資料がどっさりとアメリカに送られた。
うふふー、新兵器の設計図もらっちゃったぞー、と届いた荷物の梱包を解いてワクワクしながら設計図を読み始めた担当者だったが、すぐにとんでもないことに気がついた。
そう、フランスはメートル法、アメリカはヤード・ポンド法だからネジ1本の製造にいたるまで、現在アメリカにある工作機械が全く使えないのだ。
これは大問題だった。工作機械が全て使えないのでは、「アメリカの豊富な工業力で」という前提が全て崩れてしまう。
やむを得ず、アメリカではルノーFT戦車の設計図を1からヤード・ポンド法で引き直し、「M1917軽戦車」という、間違い探し級にクリソツな戦車を開発・生産することとなった。ちなみに最も簡単な識別ポイントは、M1917は砲塔前面に外装防盾が追加されている点だ。
こんなことをやっていて予定に間に合ったら世界からブラック企業は消えてなくなるわけで、案の定生産は遅れに遅れた。フランス軍では1918年の春にはアメリカから300両程度のアメリカ製ルノーFTが届くよ! やったね! 戦車が増えるよ! と思っていたのに、最初のM1917が完成したのが10月。最初の2輌がフランスに到着したのは戦争が終わってからだった。
結局、フランスは逆に100輌以上のルノーFTを大陸に派遣されたアメリカ軍に供与する羽目になった。

生産が間に合いそうにないマーク8、それを補うつもりだったのにやっぱり生産が間に合いそうにないM1917、とツーアウトに追い込まれたアメリカ陸軍が次に立てた計画が、「もっと安価で、ドカドカ作れる戦車を手っ取り早く開発してドカドカ作ってドカドカ大陸に送り込もう」というものだった。
この、安い、早い、そこそこ強い、の三拍子揃った戦車の開発はアメリカ工業界の巨人であり、同時に世界屈指の巨大工業メーカーであるフォード・モータースが請け負うことになるのだが、どういうわけか、資料ではこのへんから開発経緯がひどく不明瞭になる。それが明らかになるとまずい連中がいたのだろうか。
なにしろ製作が軍からの依頼だったのか、それともヘンリー・フォードが見るに見かねて言い出したのか、それさえはっきりしない。
とにかく、フォードはまず試作15輌、そのテスト結果が良好なら続いて1万5千輌を1日100輌のペースで大量生産するという取り決めを行った。

(後編に続く)

参考ページは後編にまとめて記載予定。
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