Modely-vystřihovánky チェコ テレビ塔 Žižkovský vysílač (後編)

いまさらですが2017年、あけましておめでとうございます。
去年末のジシュコフテレビ塔前編の記事の記事番号が嬉し恥ずかし、「1000番」だったのをすっかり見逃していたが、よく考えてみりゃ「1000」とは言ってもエントリの大半は「今週更新できないや、ゴメンネ ☆ミ」って内容なんで、まぁ、別段大した数字じゃないな、と思い直した筆者のお送りする世界のカードモデル情報。ちなみに左カラムの各サブカテゴリの数字を全部足しても1000にはならないのは、書き損じたり更新ミスったりして破棄になった番号がいくつか含まれているからです。

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さて、前回なぜか赤ん坊の像がハイハイで登ったり下りたりしているという怪奇現象を紹介したっきりになっていたプラハのジシュコフテレビ塔だが、これが何かというと、チェコを代表する新進気鋭の若手現代アーティスト、ダヴィッド・チェルニー(David Cerny)氏の「作品」。
この赤ちゃん達は2000年に塔に取り付けられたが、当初は一時的な装飾となる予定であった。だが、翌年にそのまま恒久展示となることが決まり、取り付けられたままとなっている(資料では一時的に取り外し、取り付け直したようにも読めるが、ちょっと詳しいことはわからなかった)。

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デッキの窓や、デッキ天井に出るためのハシゴのディティールからわかる通り、この赤ん坊かなり大きい。縮尺の大きいキットなのでシルエットの切り抜きで表現されているが実物はこんな感じだ。

576px-Praha,_Žižkovský_vysílač,_detail_01

写真はWikipediaからの引用(この項、キット写真以外全て同様)。
なるほど、「醜い」と不評だったジシュコフテレビ塔もこの可愛い赤ちゃん達のおかげで一気に親しみやすく…………なってねーよ! むしろ怖いよ! 見た目に怖いし近づくと外れた赤ちゃんが上から降ってきそうで物理的にも怖いよ!
しかし、取り外し予定だったものをわざわざ残しているんだから、プラハの人にはきっと好評だったんだろう。よくわからないが。
残念ながら当キットのディティールアップパーツは発売となっていないので、ジシュコフテレビ塔に思い入れのあるモデラーなら、3Dプリンターで赤ちゃんパーツを自作し、立体の赤ちゃんをキットに取り付ける事でクオリティとなんだこりゃ感がぐっと増すことだろう。

この赤ちゃん像を製作したダヴィッド・チェルニー氏はデビューからして強烈であった。
共産政権時代、チェコスロバキアの首都プラハ中心部にはプラハに一番乗りした「解放軍」の戦車としてIS-2重戦車が5メートルの台座の上に載せられたモニュメントが飾られていたが、このモニュメントは不評であった。なぜなら、プラハに一番乗りしたソビエト戦車は第4戦車軍のT-34/85戦車であり、IS-2ではなかった。しかも、モニュメントの砲塔には「23」のターレットナンバーが書かれていたが、実際に一番乗りを果たしたI.G.ゴンチャレンコ(Ива́н Григо́рьевич Гончаре́нко)の戦車の番号は「24」だった。そもそも、プラハ市民にとってソビエト軍の戦車は「解放」というよりも1968年の民主化運動、いわゆる「プラハの春」を踏みにじった圧制者の象徴でしかなかった(「プラハの春」の写真では戦車はT-64が多かったようだ)。
1989年に「ビロード革命」でチェコスロバキアが民主化するとこのモニュメントは「道義的にも、歴史的にも維持する根拠はない」とされ、扱いは一層微妙なものとなる。
1991年4月28日朝、プラハ市民は仰天した。モニュメントの戦車23号が目がさめるようなドピンクに塗られていたのだ。
しかも、ハッチには巨大な中指の像がそびえ立っているという野卑なオマケつき。
このゲリラアートを敢行したのが、当時美術学校の学生であったダヴィッド・チェルニーであった。
ご丁寧に署名を残していたチェルニーは即座に「騒乱罪(共産政権下で不都合な人物を逮捕するのに良く使われた)」で逮捕され、戦車はすみやかに軍が緑色に塗り直した。これにはロシア政府からの抗議もあったという。
しかし、民主化によって新たに選ばれた市議会の15人のメンバーがこれに異を唱えた。「なんで緑でなきゃいけないの? 間違った戦車が間違った番号で飾られてるんだから、「正しい色」なんてないでしょ?」というわけだ。
そして、驚くべきことに戦車は公式にピンクに塗り直され、チェルニーは釈放となった。
いまやソビエトの圧政からの「解放」のモニュメントとなったこのピンクのIS-2、今はプラハ南方の軍事博物館にピンク色のまま飾られている(さすがに「指」は外されている)。

800px-Lešany,_Vojenské_muzeum,_růžový_tank

ちなみに「変な彫像」なんかのまとめでよく出てくるこの像、

576px-Cerný_Wenceslas

これもチェルニー氏の作品。逆さまの馬に乗ってるのはチェコの守護聖人、ボヘミア公ヴァーツラフ1世。
筆者は長い間、この像についてなにかこういう逸話があるのだろうと勘違いしていた。例えば、

ヴァーツラフ1世:ジシュカ殿~! 一大事でござる~! ローマ教皇グレゴリウス7世に教皇領に招かれたのでござるが、教皇は『馬の背から教皇を見下ろすなんていう不敬を働いてはならぬ。しかし、武人であるヴァーツラフ公は下馬してもならぬ』という無理難題をふっかけてきたでござるよ。
ヤン・ジシュカ:うーん、これは難題だぞ。ポクポクポク、チーン!
当日。
グレゴリウス7世:ぐふふ、これではボヘミア公は顔を出すことはできぬだろう……ややや、あれは!
ヴァーツラフ1世:これなら馬の背から教皇を見下ろすことも、下馬したことにもならないでござるよ!
グレゴリウス7世:なんというトンチ! ぎゃふん。
ヤン・ジシュカ:ひとやすみひとやすみ。

みたいな感じだ。ちなみに登場人物は活躍時期が百年単位でバラバラなので全部でたらめだ。
しかし、実際にはこの「逆さ馬」の像はプラハ中央広場にあるヴァーツラフ1世の像のパロディーで、民主化集会がこの広場で行われたことで民主政権のアイコンとなっている像を改変することで、「民主政権」という新しい「権力」に対する反骨精神を表現している……ってことでいいのかな? まぁ、芸術作品の解釈なんて一つじゃないんだ、筆者はそう思う、という程度で読み飛ばしていただきたい。

800px-Wenceslas_square_statue_daytime.jpg

↑もとねた。

さて、長い脱線となったが、キットの方はスラリとしたフォルムからなんとなく大味なイメージを受けるが、放送設備や通路などの細かいディティールもきっちりと立体化されておりなかなか手応えがありそうだ。

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Zizkovsky_vysilac_-_NK-2.jpg Zizkovsky_vysilac_02.jpg Zizkovsky_vysilac_04.jpg

こちらは組み立て説明書と展開図のサンプル。手書き時代のあらゆる余白にパーツを押し込んでくるすごい密度の展開図よりはましだが、やっぱりチェコキットの展開図は密度高め。
組み立て説明書もなんだかまとめて説明されてて大雑把に見えるが、パーツ取り付け位置に取り付けパーツの番号が書かれているチェコ式のカードモデルは展開図そのものも組み立て説明の一部なのでこれで十分だ。

Modely-vystřihovánky からリリースされたチェコのテレビ塔 Žižkovský vysílač はスケールは300分の1。難易度は5段階評価の「5」(とても難しい)、そして定価は200チェココルナ(約900円)となっている。
当キットはテレビ塔ファンのモデラーにとっては見逃すことのできない一品と言えるだろう。また、ダヴィッド・チェルニー氏のファンならピンクに塗ったMODELIKのIS-2と並べて飾ることでプラハ市民気分を味わうのもおもしろそうだ。
2017年もよろしくお願いいたします。


キット画像はModely-vystřihovánkyショップページからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Žižkov_Television_Tower
https://en.wikipedia.org/wiki/David_Černý
https://en.wikipedia.org/wiki/Monument_to_Soviet_Tank_Crews





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うさぎさんチームは体制に対して反抗心を抱いていた可能性が微粒子レベルで存在している…?

Re: タイトルなし

火炎瓶さん、コメントありがとうございます!
それを言ったら、ピンクに塗ったランドローバーに乗ってたSASの長距離挺身隊も反体制派になってしまいます(笑)
展開図公開中
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