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カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史 その2

来週はとってもとっても面倒な定期健康診断に行ってこないといけない筆者がお送りする世界のカードモデル情報。
引き続き年末大型特集企画、「カードモデルで辿るポーランド軍戦前装甲車史」の2回目。

1920年代中盤、ソビエトとの戦争も終わって一息ついたポーランドだったが、建国直後にガチャガチャやったせいで装備もガチャガチャで、装甲車だけでもロシア帝国軍、もしくはソビエト赤軍からぶんどったオースチン装甲車ガーフォード装甲車、国産のフォードFT-B装甲車、あと、フランス軍から購入したプジョー装甲車が少し、というカオスな状況で、しかもどれも第一次大戦型の旧式装甲車だったから早期の統一新型装甲車、それもできれば国産車両が求められていた。

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ポーランドの老舗、GPM社から2005年にリリースされたオースチン装甲車。写真はちっちゃいがGPMのショップページからの引用。
赤軍の「ステンカ・ラージン」号を鹵獲した車両だが、なぜかステンカ・ラージンの名前を残したまま「Poznańczyk」という新しい名前を書き込んでいる。「ステンカ・ラージン」と「Poznańczyk」の間に、小さく「28.5.20」と書き込まれているが、これはこの車両がバブルイスク(現在ベラルーシ領)でポーランド軍第14歩兵師団第55連帯に鹵獲された日付(1920年5月28日)。

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キットは簡易ながらも車内、シャーシ、エンジンなどが再現されている。その無骨なスタイルで大柄に見えるオースチン装甲車だが、完成全長約20センチと意外と小柄な車両だ。キットはカタログ落ちしておらず、難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は31ポーランドズロチ(約1000円)とおてごろとなっている。

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こちらはWikipediaからの引用で、1919年、フライコーアが使用するガーフォード装甲車。ガーフォード装甲車はヤケクソ気味なスタイルがおもしろいのだが、残念ながら筆者が知る限り現在メジャーなカードモデルキットは存在しない(過去にはMały Modelarzが1980年に一度リリースしている)。
写真は左端のやたら背が高い兵士と、隣の小柄なコートの兵士との対比がなんかおもろい。この左端の兵士、全く別の写真にも似た感じの人物が写っているのだが、同一人物かは不明。

1924年、ポーランドはトラック用に、フランスからシトロエン・ケグレスシャーシを購入する。当時、シトロエン社は革命前のロシアで皇帝の自動車を雪上で走れるようにする改造を請け負っていたフランス人技術者、アドルフ・ケグレス(Adolphe Kégresse)を迎え入れ、彼の開発した「ケグレス式履帯」(前後の大きなホイールとゴム履帯が特徴)を備えたハーフトラックでサハラ砂漠を踏破するなどの冒険で名を馳せており、ポーランドもその不整地踏破能力に期待したのだろう。

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これもWikipediaからの引用で、シトロエンの1924年型ハーフトラック。この車両は1924年10月28日から1925年6月26日にかけてアフリカ大陸縦断を果たした、通称「黒い巡洋艦隊」(Croisière noire)で使用された車両。もちろん、ボディは取り外されている。レーン自動車博物館の収蔵品。
なお、シトロエンはこの後1931年4月4日から1932年2月12日にかけてアジアを横断する「黄色い巡洋艦隊」(Croisière jaune)も成功させている。

ポーランド軍は百数十輌購入されたシトロエン・ケグレスシャーシのうち90輌を装甲車として完成させることとし、フランス軍が先に採用していたケグレス履帯のハーフトラック装甲車、M23とよく似た車体を載せた。
最初の試作車は1925年には完成していたようだが、なぜか全然生産は進まず、やっとそれなりの数が揃ったのが1927年。どういうわけか、それなりの数を作っちゃってから陸軍の試験が行われ、軍は1928年にこの車両を「wz. 28」として採用する。これで試験の結果、不採用だったらどうするつもりだったんだ。
ちなみに、「wz」というのは、ポーランド語で型式や年式を表す「wzór」の略なので、「wz. 28」だけだと、ただの「28式」であって、正しくは「装甲車wz. 28」と表記しなければなにがなんだかわからない(例えば、小火器にもブローニングM1918自動小銃を国産化した「28式手動機銃『ブローニング』」(Ręczny karabin maszynowy „Browning” wz. 28)という銃があった)。

最初の量産分90輌が完成したwz. 28は装甲厚最大8ミリ、武装はプトー37ミリ砲もしくはオチキス機銃という、まぁ、ありがちな武装だった(30輌が37ミリ砲、残り60輌が機銃装備車)。
装甲車なんでペラい装甲とかルノー軽戦車と同じ弱武装ってのは別にいいのだが、問題は肝心の走行性能がショボショボで、抵抗の大きいハーフトラック式と4気筒20馬力という貧弱エンジンががっちりタッグを組んだせいで、マイナスxマイナスが超マイナスになって路上でも最高時速は30キロ出るか出ないか、そのくせ不整地ではさらに速度は制限され、エンジンを強化しようにもそもそも車体重量のせいでゴム履帯の消耗がべらぼうに激しく、トランスミッションは故障しがちで、サスペンションは繊細で整備に手間のかかるシロモノだった。
ようするに、ケグレス式履帯は冒険旅行で不整地を走るのには適していたが、重い装甲ボディを載せるのには全く適していなかったのだ。事実、ほぼ同型のボディ+ケグレス式履帯の組み合わせだったフランス軍のM23装甲車も「性能ショボい」という理由で16輌で生産終了している。なんでそんな車両を参考にしたんだ。
結局、wz. 28も最初の生産分、90輌で生産終了した。

ケグレス式履帯は冒険旅行では好成績だったために、イギリス、ベルギーなどもケグレス式履帯のハーフトラック装甲車を試作したが、どこも「ゴム減りすぎワロチww」ということで少数の生産に終わっている。
(ソビエトはZis-5トラックの後輪をケグレス式履帯に交換したZis-42ハーフトラック(非装甲)を6千両以上生産している)
不思議なのはアメリカのM2/M3/M5ハーフトラックで、あれも後輪はワイヤー入りゴム履帯で一種のケグレス式履帯なのだが、車体重量9トンもあるのになぜか履帯の強度はあまり問題になっていない。これは「トラックがブロークンしたらニューとチェンジすればいいのさ! HAHAHAHA!」というアメリカンな物量万歳が背景にあっての評価かと思ったのだが、レンドリースで受け取ったソビエト軍も特に履帯の強度について問題には感じていなかったようなので、やはりアメリカのゴムの性能が群を抜いていたのだろう。灼熱の北アフリカから極寒のロシアまで、ゴムの劣化がなかったのだとしたら大したものだ。
ちなみにアメリカでは1950年代初頭に、B-36戦略爆撃機があまりに重くて離着陸できる滑走路が制限されてしまうので、履帯を履かせて接地圧を下げよう! とケグレス履帯を装備したことがあったが、機構がめっちゃ複雑になったせいで重たすぎてすぐやめた。

せっかく作ったけどまともに走らないwz. 28装甲車は、2006年にポーランドWAK社からリリースされている。

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画像はWAKのショップページからの引用。完成見本写真はない。なんかその辺の公園でぬかるみにハマったようなwz. 28が、この車両の路外走行性能のダメダメっぷりを余すことなく表現した素晴らしい表紙といえるだろう。
このキットもまだカタログ落ちしていないので、ポーランド装甲車ファンのモデラーならぜひ押さえておきたい。
難易度は5段階評価の「3」(普通)、定価は20ポーランドズロチ(約650円)と、こちらもおてごろ設定となっている。

なお、wz. 28の車体はボンネット前面装甲板が二枚の板を組み合わせたゆるい楔形で車体後面が垂直の前期型と、ボンネット前面装甲板が一枚板で車体後面が前傾して砲塔が前に寄っている後期型があるが、このWAKのキットは前期型である。
(その3へ続く)



*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Samochód_pancerny_wz._28

全体を通しての参考ページは最終回にまとめて掲載予定。
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