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GPM 米英共同 重戦車 MARK VIII "LIBERTY " 後編

先日、歯の治療が一本終わってご機嫌だったのに、わずか1週間にして以前治療済だった隣の歯の詰め物が取れてしまい、これ永遠に治療終わらないんじゃないかと戦々恐々としている筆者のお送りする世界のカードモデル情報。
本日はポーランドの老舗、GPM社からリリースされた新キット、米英共同 重戦車 MARK VIII "LIBERTY "の後編。

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デカイ。畑健二郎氏風に表現すると『トニカクデカイ』と言ったところか。
前回はアメリカ軍のアメリカンなノリにイギリスも巻き込まれ、前提全部忘れてこのグレートウルトラ菱形戦車の量産計画を米英一緒になってぶち上げてしまったところまで。

この戦車界のダイドーアメリカンコーヒー、「マーク8」はアメリカ製のエンジン+トランスミッション、イギリス製の武装+装甲板をフランスに新たに建設する工場で組み立てる予定で、量産開始当初(1918年春)の目標として月産300輌の戦車を生産(1917年の段階でイギリスの戦車生産能力は月産150輌)、これにより少なくとも1500輌の「重戦車」を調達(この数字にはフランス製の FCM 2Cを含む)し、J.F.C.フラー(John Frederick Charles Fuller)の提唱する大規模機械化攻勢、いわゆる「プラン1919」によりドイツ帝国を一気に踏み潰すという、もはやアメリカンを通り越してドリーミーな計画だった(それでもドイツ帝国が降伏しない場合にはさらに工場を拡張し、最終的に月産1200輌まで生産数を増やす計画だったという)。

なお、余談となるがこのフラーという人物、ドイツ軍が用いた「電撃戦」の基礎となる機械化戦闘の概念を提唱した人物として知られているが、19世紀末に有名な魔術師、アレスター・クロウリーの弟子になっていたり、戦間期はオズワルト・モーズリー率いる英国ファシスト党に参加していたり、かなりエキセントリックな人物だったようだ。

どう考えてもこんなもん絶対に間に合わないし、そもそも「アメリカ製のエンジン」って言ったって、戦車生産経験のないアメリカに戦車用のエンジンなんてあるのかよ、と思ったら第一次大戦参戦でテンション上がりまくってたアメリカ軍は1917年5月、民間エンジン設計士2人(パッカードの Jesse G. Vincent と ホール・スコット・モーターカーの Elbert J. Hall)を呼び出すと、「世界トップクラスのエンジン設計完了するまで家に帰さない」とホテルに缶詰にするというまさかのデスマーチ進行でわずか5日で排気量27リットル400馬力の新型エンジンの設計を成し遂げていた。まじかよ。

こうして開発された航空機用V型水冷12気筒エンジンリバティ L-12 (Liberty L-12)は出力重量比に優れ、第一次大戦中のアメリカ製航空機に搭載された。さらに重戦車マーク8のエンジンとしても問題ないことが確認され、嬉しさのあまりマーク8戦車はアメリカではエンジンの名前を取って「リバティ戦車」の名前で呼ばれることとなった(このエンジンは後にイギリス巡航戦車クルセイダーにも搭載されている。また、ソビエトのBT-5のエンジンМ-5はリバティ L-12のコピーである)。

やればできるもんだ。この勢いなら気合と根性でリバティ戦車の千輌や二千輌ぐらいなんとかなるだろう、と思ったが、やっぱりなんとかならなかった。というか、すでに3年も戦争しているヨーロッパの国々はもうヘトヘトで、アメリカのノリで量産を進めるなんてできるはずもなかった。
勢いでマーク8の装甲板をドンドコ作ると宣言したイギリスだったが、テスト用の車体がアメリカに到着したのが1918年の7月。早くも「春から量産開始」なんて楽観的目論見はどっかに消えた。やっぱりマーク5作るのが忙しくってマーク8の試作車体作ってる暇がなかったんだな。
アメリカ軍がこの試作車両にリバティエンジンなどを積み込んで組み立て完了したのが9月28日。
いろいろ調整して10月31日に車両のテストを開始したが、翌11月の11日に第一次大戦は停戦となった。
そもそもフランスに新しく建築された組み立て工場が完成したのが1918年11月だったので、テストなしで戦場に放り込んだとしても、やっぱり数を揃えることはできなかっただろう。

第一次大戦に間に合わなかったリバティ戦車だったが、アメリカは一応100輌を生産することとし、イギリスから100輌分の車体を購入し自国で組み立てている。評価用にこんな大量に購入する必要はないと思うので、完成分は引き取るという契約的なものがあったのかもしれない。
また、イギリスも一応マーク8を生産してみることとして、ロールスロイスのエンジンを積んだ軟鉄製試作車両約30輌が完成したが5輌がボービントンの戦車試験センターに送られた以外は全てがスクラップとしてそのまま売却された。よって、イギリス軍はマーク8を部隊配備したことはない。

アメリカで完成したリバティ戦車は第67歩兵(戦車)連隊(67th Infantry (Tank) Regiment、現在は第67機甲連隊となっている)という、変な名前の部隊に集中配備された。
原型でオチキス機銃を7丁積んでいたのがやっぱり多すぎるのでブローニング機銃5丁に減らしたり、いろいろいじってみたものの、基本的には菱形戦車の拡大版なのでやっぱりリバティ戦車も信頼性が低く居住性が悪かったという。そのため、リバティ戦車は1932年から段階的に廃止され、1934年に全車が予備となった。
なお、一部の資料にはこれらの車両がカナダ軍へ売却されたと書かれているが実際には売却のオファーは断られており、カナダ軍がマーク8を装備したことはないそうだ。

それではこの忘れられたデカ戦車、MARK VIII "LIBERTY "の姿をGPM公式ページの完成見本写真で見てみよう。

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まだ履帯を履いていないが、キットの雰囲気のわかる写真。
うーん、デカい。
このキットのデザイナー、MICHAŁ RAFALSKI氏はいつも作例をフルディティールアップしちゃうんで、この後に塗装してしまうともうキットがどんな構成だかわからなくなる。

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ほらね。

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展開図と組み立て説明書のサンプル。
スポンソンに書かれたフジツボが煙吹き出してるみたいなエンブレムはこの戦車が配備された第67歩兵(戦車)連隊のもので、第一次大戦で地雷により車両の損害が大きかった事を戒めるために火山の噴火をエンブレムにしたという記述を見つけた。ほんまかいな。
なお、このキットはA3版でのリリースだが、A3でも車体側面は斜めにレイアウトしないと収まらないというのが素晴らしい。

少数生産に終わったマーク8だが、見た目が強烈なのが幸いしたのか3輌が現存している。
・イギリスのボービントン戦車博物館
 これはおそらく軟鉄製車体だろう。
・メリーランド州フォート・ミード
 第301重戦車大隊(後に第17重戦車大隊に改称)に配備されていた車両で、この部隊は1921年から22年まで、後にアメリカ大統領となるドワイト・D・アイゼンハワー少佐が指揮していた
・メリーランド州アバディーンの陸軍兵器博物館
 この車両は屋外展示のために状態が悪く、かなり錆が進行していたが現在はジョージア州フォート・ベニングの国立装甲騎兵隊博物館に移され、修復が行われている。

なお、映画「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」にマーク8っぽい戦車(マーク8と違い、旋回砲塔を装備している)が登場するが、あれはマーク8を参考にしてパワーショベルを元に製作したオリジナル車両だとのこと。


GPMからリリースされた米英共同 重戦車 MARK VIII "LIBERTY "は陸モノ標準スケール25分の1で完成全長堂々の42センチ。難易度は意外にも控えめに3段階評価の「2」(普通)、そして定価は100ポーランドズロチ(約3300円)となっている。また、レーザーカット済のディティールアップパーツ、及び芯材用厚紙がセットとなった「小セット」が200ズロチ(約6700円)、さらにレーザー彫刻済履帯がセットになった「大セット」が300ズロチ(約1万円)で同時リリースとなっている。
こういう薄らデカい戦車ファンのモデラーなら、OrlikK-WagenModelikFCM 2Cと並べてみようと企んで作業台の上が収拾つかなくなるのもいいだろう。

画像はGPM公式サイトからの引用。

*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。



参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Mark_VIII_tank
https://ja.wikipedia.org/wiki/マーク_I_戦車
https://ja.wikipedia.org/wiki/マーク_IV_戦車
https://ja.wikipedia.org/wiki/マーク_V_戦車



おまけ。全然関係ないけどマーク8の写真捜してたら出てきた写真。

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Wikipediaからの引用で、「ワシントンD.C. キー・ブリッジを背景にした戦車」。撮影は1921年~1923年。
詳しい情報がなにもないので正体不明。なんだこれ。みんな笑てるがな。
写真タイトルの「戦車」ってのは、後ろのマーク8のことなのか、それとも手前の変な車のことなのか。
あと、左から三番目の顎がガッチリした右向きの人物はパーシング将軍

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