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JSC イタリア客船 "ANDREA DORIA"、 スウェーデン客船 "STOCKHOLM"・その1

7月最後の週は地元の神社の3年に一度の大祭で、2日目の土曜は各地区の山車が集合し舞を披露するとともにお菓子が振る舞われる日程だったのが台風で中止となり、けっこうガッカリしている筆者のお送りする世界のカードモデル最新っぽい情報。今回紹介するのはポーランドJSC社からリリースされた、イタリア客船 "ANDREA DORIA"、 スウェーデン客船 "STOCKHOLM"の2隻セットだ。

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この2隻の名前が並んでいるのを見ただけで「おいおい……やべぇキットが来ちまったぜ……」と悟った読者は海難史に詳しい方だろう。
逆に、表紙の客船を見て「あれ? アンドレア・ドーリアって、カイオ・ドゥイリオ級の戦艦じゃなかったっけ?」と思った読者もいるかも知れないが、今回のキットはあれとは同名で別の船。
名前の由来は15世紀の海の英雄にちなむものだが、なぜ客船にトルコ軍と戦った海軍提督の名前をつけてしまうのか。村上水軍にあやかって、瀬戸内海の遊覧船に「村上丸」と名付けてしまうようなものか。うむ、全然有りだな。
ちなみに和歌山県印南港を母港としている「村上丸」という釣り船が実在しているが、船長さんの名字由来だそうだ。
「アンドレア・ドーリア」はイタリア人お気に入りの名前のようで、カイオ・ドゥイリオ級戦艦と今回の客船の他にも19世紀の装甲艦、戦後建造されたヘリコプター巡洋艦にも同名の艦があり、現在は2007年就航の駆逐艦「アンドレア・ドーリア」が現役である。

戦前、豪華客船での旅 華やかなりしころ、アメリカ、フランス、イギリス、各国の旅客会社が名だたる豪華客船を次々に大西洋航路に就航させていたが、もちろん海洋国家イタリアも大西洋に豪華客船を保有していた。
イタリアを代表する客船会社だったのがジェノバ、トリノ、トリエストの三大港湾都市をそれぞれ拠点としていた3つの客船会社が1932年に合併した「イタリア・ライン(Italian Line、ただしこれは通称。正式名称は時期によってコロコロ変わる)」。そして、イタリア・ラインの中でも排水量5万トン、全長270メートル、最速で大西洋を横断した船舶に与えられる「ブルーリボン賞(西廻り)」を1933年8月に獲得している豪華客船SS レックス(SS Rex)はイタリア旅客船団のフラグシップであった。なお西廻りブルーリボン賞は1935年6月にフランスのSSノルマンディーによって更新されている(SSノルマンディーはJSCから400分の1でキット化されている)。

しかし、華やかな時代も長くは続かない。
1939年、第二次大戦が勃発すると英仏独は大西洋旅客航路を停止。そのため、順位が繰り上がってイタリア・ラインは大西洋最大の客船運行会社となったが半年後にはイタリアも参戦し、旅客航路を停止する。
戦時下のイギリスでは海軍が客船を徴用し、世界中の英軍に物資、兵員を送り届けるために迷彩色に塗り変えて毎日あっちへこっちへと働いていたことが知られているが、制海権のないイタリアがそれをやるとたちまち沈められてしまうのでイタリア客船は基本的に港でボンヤリとしていただけだった(イタリア・ラインのSS ローマとMSアウグストゥスは航空母艦に改装しようとしたけどゴチャゴチャやってるうちに戦争が終わった)。
結局、イタリアの主要な客船は全て連合軍の空襲で撃沈されるか、イタリア本土に上陸した連合軍に接収されてしまう。
ブルーリボン賞を獲得した豪華客船SS レックスも例外ではなく、連合軍の港湾攻撃を避けるためにジェノバ、トリエステ、そしてカポディストリア湾(現スロベニア領コペル湾)と追い立てられ、最後は1944年9月8日に英国空軍の空襲を受け沈没した。

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Wikipediaからの引用で、英国空軍第272航空隊のボーファイターから撮影された、攻撃下のSSレックス。
この攻撃で12機のボーファイターから発射された多数のロケット弾を被弾、さらに英国空軍第39航空隊、南アフリカ空軍第16航空隊のボーファイターによる追撃を受け総計100発以上のロケット弾を受け炎上したSSレックスは4日間燃え続け、横転沈没した。

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同じくWikipediaからの引用でまだ煙を上げているSSレックス。
目立たないようにせめて戦時塗装にするぐらいはしてやればよかった(煙突の三色塗装は消されているようだ)ような気もするが、それどころではなかったのだろう。
もうローマも占領されたこの時期にわざわざイタリア客船を攻撃しなくても良さそうなもんだが、接収したドイツ軍が黒海経由で東部戦線の戦力を移動させるのを防ぐためだったのだろうか。

戦後、イタリアラインには連合軍から”Conte Biancamano(約2万4千トン)”、” Conte Grande(約2万6千トン)”、” Saturnia(約2万4千トン)”、”Vulcania(約2万4千トン)”の4隻が返還され(接収された船の残りは戦争賠償金となった)、1947年から大西洋航路の運行が再開されるが、この4隻はどれも建造が1920年台中盤で、いささか旧式化していた。
やはり、旅客航路の激戦区、大西洋航路でやっていくにはSS レックスのようなイタリア旅客船団を代表するアイコンが欲しくなる(SS レックスを再浮揚、修復する案もあったが損傷が激しく、また沈んでいる湾がユーゴスラビア領となっていたため再生は断念され、スクラップとなった)。

そんなわけでイタリアラインは1950年2月9日、ジェノアのアンサルド造船所で新豪華客船、「アンドレア・ドーリア」の建造に着手する。日独みたいに主要都市が焼け野原となったわけではないが、それでも戦後5年で豪華客船建造に着手とは、イタリア人もなかなかたくましい。

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JSCショップサイトからの引用(以下、キット写真は全て同様)で、新型客船アンドレア・ドーリアの姿。これみよがしに煙突が林立する戦前の客船と違って煙突は1本にまとめられており、あまり大きな船には見えないがこれでも排水量約3万トン、全長約213メートルの大型船であった。
この大きさは戦前のレックスほどの大きさはないが、戦争からの回復期にあったイタリアでは、この船は最大、最速(最高速度26ノット、巡航速度23ノット)の船であった。
ちなみに当時の世界最大の大型客船は”RMS クイーン・エリザベス”、世界最速の大型客船は”SS ユナイテッド・ステーツ”である。
(ユナイテッド・ステーツJSCから400分の1でキット化されている)。

定員は乗客約1241人、乗員563人。客室は3等に別れており、1等船室(ファーストクラス)218人、2等船室(キャビンクラス)320人、3等船室(ツーリストクラス)703人となっていたが、それぞれのクラスに1つづつプールを備えていた(3等にまでプールがある客船は当時アンドレア・ドーリアだけであった)。もちろん、それぞれのクラスは厳密に区切られており、食堂、ラウンジ、甲板スペースも各クラスごとに用意されている。

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キットの細部をクローズアップ。もちろん3つのプールも再現されている。船室は一番上の階層が1等、その下が2等、その下3層が3等客室であった。
内装は著名な建築家ジュリオ・ミノレッティ(Giulio Minoletti)が手がけた豪華なもの。もちろん、安全性にも十分に配慮されており船内は11の防水区画に区切られており、これらのうち2つが満水となっても船は沈まない設計となっていた。
救命艇は当然、全乗客乗員を乗せるのに十分な数が準備されており、58人乗りの非常用連絡艇2隻、無線設備を備えた70人乗りのモーターボート2隻、146人が乗れるボート12隻を積んでおり単純計算で2000人が避難できる設計だった。

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上から見たアンドレア・ドーリア。定員を満たす救命艇をしっかりと載せると、どうしても舷側は救命艇で一杯になってしまい、なんだか「救命艇運搬船」みたいな見た目になってしまう。もちろんこれは仕方のないことなのだが、戦前の船舶が救命艇をケチって大惨事を繰り返した理由もちょっと分かる気がする。

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艦橋周辺とマストのクローズアップ。マストには当時まだ最新設備であったレーダーが装備されていているのが見える。

1951年6月16日。アンドレア・ドーリアはジェノア大司教、ジュゼッペ・シーリという、なんかiPhoneの中でボイパやってそうな名前の枢機卿から祝福を受けて進水。
審査で機械的な問題が発見され、処女航海は1952年年末から53年始めまでずれこんだ上に、処女航海では嵐に遭遇し最大28度というひどい傾斜を記録したものの1953年1月23日、市長を含む大歓迎の中をイタリア期待の新型豪華客船アンドレア・ドーリアは予定より数分遅れでニューヨークに接岸した。

(その2に続く)

キット画像はJSCショップサイトからの引用。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Italian_Line
https://ja.wikipedia.org/wiki/レックス_(客船)
それぞれの英語、日本語、イタリア語版を参考とした。

その他の参考ページは最後の回にまとめて掲載予定。
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