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SKLEJ MODEL ルーマニア 駆逐戦車 M5 "MAREŞAL"・前編

先日評価版を提出し、まだフィードバックだの不具合修正だのが残ってはいるもののとりあえず一息ついた筆者がお送りする世界のカードモデル情報。今回紹介するのはポーランドのブランドSKLEJ MODELの新製品、ルーマニア 駆逐戦車 M5 "MAREŞAL"だ。

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意外や意外、どうでもいいような無人機とかどうでもいいような試作機とかの話をダラダラと書き連ね、なんだか空ネタ寄りになっていた当ブログではたぶん今年初めての陸モノネタだ。
そんな久々な陸モノネタが、こんな試作で終わったドマイナー車両でいいのだろうか。まぁ、カードモデルってそういうもんだからいいのか。

"MAREŞAL"(「マレシャル」。英語風に「マーシャル」のカナ表記も時々見かける)はいかにも「ぶっはww ヘッツァーのパクリ乙www」な感じのスタイリングだが、マレシャルの最初のプロトタイプが完成したのが1943年7月30日、ヘッツアーの開発計画がスタートしたのが1943年12月なので決してヘッツァーのマネとかリスペクトとかインスパイヤではない。それどころか逆に、このスタイリングを見たドイツ人技術者が感銘を受け、ヘッツァーにデザインを転用したとする資料もあるぐらいだ。パクリとか言ってごめんよルーマニア。
名前の「マレシャル」というのは階級の「元帥」のことで当時のルーマニア総統イオン・アントネスク元帥のことを指している。だったらいっそ「駆逐戦車アントネスク」にしたほうがカッチョ良かった気もするが、なぜ「元帥」なんて名前になったのかはよくわからない。スパイと地雷以外には敵なしということか。ちなみにアントンネスク元帥は一人称が「アントネスク」だったそうだ。なんじゃそら。
なお、マレシャルは「Carul M」(M戦車)とも呼ばれていたらしい。これはマレシャルと名付けられるよりも前、試作段階での呼称のようだ。

東欧の国々はどこもドイツとソビエトにぶんぶん振り回されて第二次大戦に突入したもんだが、ルーマニアは特に振り回されっぷりが半端なかった。
第一次大戦後にトランシルヴァニアをハンガリーからもぎ取って(ぶっちゃけ勝利に全く貢献してないが、ルーマニアは戦勝国である)版図が思い切り拡大したルーマニアだったが、1939年に独ソ不可侵条約が結ばれた時にソビエトが「ルーマニアのベッサラビア地方をちょうだい」と言ったのを、ドイツはなんとなく「いいよ」と保証。1940年6月にソビエトは「もともとロシア帝国領だったベッサラビアを4日以内に割譲せよ。さもないと滅ぼす」と言い出してルーマニア東部ベッサラビア地方はソビエト領に。

1941年6月22日、今度はドイツがソビエトに侵攻すると、「アントネスクもドイツとトゥゲザーするぜ!」とルーマニアもソビエトに対して宣戦を布告した。心強いドイツを後ろ盾にベッサラビアを取り返し『大ルーマニアよ再び』という目論見だったのだろうが、そもそもベッサラビアをソビエトにあげちゃったのはそのドイツだぞ。
意気揚々とベッサラビアを取り込んで、さらにもともとのソビエト領へと攻め込んでいったルーマニア軍だったが、近代化が遅れてみんなWarThunder遊んでるのになんでお前だけBF1なの? 状態なもんだから、対戦車戦力を欠くルーマニア軍はソビエト軍が苦し紛れに投入してきたトラクターに装甲板貼っただけのオデッサ戦車相手に大苦戦する有りさま。
よーし、そっちが戦車ならこっちも戦車だ、と虎の子の第1装甲師団を投入したものの、保有してる戦車がルノーR35とかチェコのLT35(ルーマニア軍名称R-2。ドイツ軍の35(t)戦車とほぼ同じ)だったもんだから、ソビエト軍がTierを無視してT-34とかKV-1とか投入してくると全く歯が立たず、慌てて課金で3号戦車とか手に入れたものの、結局ルーマニア装甲部隊はスターリングラードで壊滅してしまう。

そんなこんなで1943年、第1装甲師団を再編中のルーマニア軍にとって、ちょっとマジヤバな感じの対戦車戦力の充足は最優先の課題であった。
とは言っても、急に重戦車が異世界から転生してきたりはしないので、とりあえずソビエトから奪ったT-60のシャーシにソビエトから奪った76.2ミリ野砲を乗せて、ソビエトから奪ったBT-7の車体を切り刻んで作った装甲板で囲った「TACAM T-60」が開発された。TACAMというのは「Tun Anticar pe Afet Mobil」つまり自走対戦車砲のことだ。

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Wikipediaからの引用でTACAM T-60。車体がT-60そのまんまでいかにもやっつけ感がある。
TACAM T-60は34両が制作され防衛戦に投入されたが、実際に戦果を上げたのかはわかっていない。ルーマニアが停戦した1944年9月にまだ一部が生き残っていたらしいが、どちらかというとあんまり使えないから使い残したんじゃねーの? という気がしないでもない。

なお、ルーマニアの「TACAM」にはもう一種類、もう持っててもしょうがないR-2(LT35)をモッタイナイ精神で改造した、「TACAM R-2」という車両もある。


TACAM_R-2.jpg

Wikipediaからの引用でブカレストの軍事博物館に現存するTACAM R-2。TACAM T-60に比べると、ぐっとマジメに作った感のあるスタイリングとなっている。
TACAM R-2は20両程度が作られたが対ソ戦には間に合わなかった(ルーマニアが連合側に寝返った後でドイツ軍に対して使用された)。

さて、TACAMを作ってはみたものの、やっぱり戦車の車体の上に対戦車砲を載っけるんじゃ背が高い。これは肝心の待ち伏せで不利である。また、車体は軽戦車のままなので下手すりゃ重機関銃で撃たれただけでスポスポ抜かれてしまう。第一、TACAMはオープントップなので榴弾喰らえば運が悪けりゃ一発で全滅だ。
もうちょっとまともな、密閉車体で、車高が低くて、できればそれなりの防御力がある対戦車車両は作れないものだろうか。

そんなわけで、新型駆逐戦車計画が始まった。
まず、ベースとなる車体はソビエトから奪ったT-60。他にネタがないのでしょうがない。ただし原型車両そのままではなく、キツい傾斜をかけた密閉車体として避弾経始による防御力に期待。主砲は車体前面を切り欠いて直接搭載し、車高を低くする。
ベースが軽戦車なので装甲は薄く10~20ミリしかない。こないだまで作れずに困っていた装甲板が突然国産できるってこともないだろうから、適当なソ連軍軽戦車をぶった切って調達したのだろう。
せっかくだから主砲はドーンとソビエトから奪った122ミリ砲を積んでみよう。これならさすがのソビエト戦車も耐えられまい。
ところでこの火砲、ルーマニア語の資料には「M1904/1930」と書かれているのだが、これに該当する火砲がソビエト軍には存在しない。これはスナイダー122ミリ砲をベースにした旧式火砲M1910/30の間違いではないかと思われる。

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Wikipediaからの引用でM1910/30。いかにも第一次大戦の野砲だが、実際帝政ロシア時代の砲でバルバロッサ作戦時に多数が失われたこともありソビエト軍では1942年中に前線から姿を消している。
おもしろいことにルーマニア語資料ではソビエト軍の122ミリ砲のことが「121.9ミリ砲」と書かれている。実際、ソビエト軍の122ミリ砲はメートル法が採用される前の帝政ロシア時代に制定された口径で正確には121.92ミリ(4.8インチ)なのだが、他の国では見かけない表記だ。

こうして1943年7月30日、鉄道車両の製造を行っていたMALAXA(現FAUR社)のロジファー工場で最初の試作車「M-00」が完成した。
「エム・オーオー」ではない、「エム・ゼロゼロ」だ。試作車両だからって「00」をつけてしまうセンスが素晴らしい。「オレはゼロ!オレを超える者はオレしかいない!!」 ということか。「M型戰車初號機」って言うと無駄にカッコいいぞ。

この斬新なスタイルの試作車両に関しては当初、「あんなちっちゃい車両から121.9ミリ砲撃ったらひっくり返るんじゃねぇの?」という意見もあったようだが、試験してみたら意外と大丈夫だった。とは言え、やっぱり砲架周りでいろいろと無理があって、各部を強化したM-01からM-03の3両が追加試作されることとなった。これらは車体幅が43.2センチ広げられ、全長も13.4センチ延長されている。
1943年10月23日、アントネスク総統立ち会いで増加試作車両の試験が行われたが、同日もう一つの兵器が試験を受けていた。
ルーマニア国産75ミリレシツァ対戦車砲である。

(後編へ続く)


参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/T-60_(戦車)
https://ja.wikipedia.org/wiki/軽駆逐戦車ヘッツァー

https://ja.wikipedia.org/wiki/TACAM_T-60
https://ja.wikipedia.org/wiki/TACAM_R-2
それぞれの英語、ルーマニア語ページも参考とした。

その他の参考ページは後編にまとめて掲載予定。
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