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無人航空機斯く戦えり・その7

そら豆の種まき時期を完全に間違え気落ちするも、その悔しさを糧にジャガイモ(2月末~3月始めに植え付け)を植えるために地面を掘り返している筆者と巡る無人航空機史。前回に引き続き、アメリカ陸軍の「ケタリング・バグ」空中魚雷の話。

完成したケタリング・バグは見た目はかなりアレな感じだったが、試験飛行は意外とうまくいった。まぁ、大抵の失敗飛行機も試験飛行だけはそこそこうまくいくもんだ(たまに試験飛行もうまくいかない飛行機もある)。
1918年、いよいよ陸軍高官を招いて画期的新兵器のお披露目が行われることとなった。
しかし、この飛行は立ち会った「アーノルド将軍」(資料には「General Arnold」としか書かれていないが、おそらく当時陸軍航空隊幹部だったヘンリー・”ハップ”・アーノルド (Henry Harley "Hap" Arnold)のことだろう。アーノルドは後に第二次大戦で陸軍航空隊司令官を努めたが、当時はまだ大佐)によると「急に動いたかと思ったら突然急上昇を始めた。600~800フィート(約200メートル)ほどでいきなりひっくり返り、高官たちの方へ突っ込んでくるように見えたもんだから、みんなで四方へ逃げた」という、散々な結果に終わった。

800px-Kettering-bug-1.jpg

Wikipediaからの引用で、エンジンを回して調整中と思われるケータリング・バグ。機体サイズが良く分かるが、この大きさなので爆薬は80キロしか詰めなかった。右端に爆音に耳をふさぐ軍人が写っている。後述の動画と周囲の人物が同一に見えるので撮影は1919年10月だと思われるが確証はない。軍人の前に立っている帽子の人物は、おそらく距離計測用の小プロペラをセットしているものと思われる。

「999回失敗しても、1回うまくいけばいい。それが発明家だ」と、含蓄のある名言を残しているケタリングは各部を調整し、2度めの試験を準備した。
2回目の試験飛行では、ケタリング・バグはうまいこと離陸後水平飛行に入ることができた。陸軍高官達は着地(墜落)の様子を見るために急いで自動車に飛び乗り、飛んでいく空中魚雷を追いかける。が、どういうわけか空中魚雷はだんだん進路を曲げ、ついに予定ルートを外れて市街の方へと向かってしまった。市街地に落ちたらヤバい。落ちることもヤバいが、ヘタすりゃ市民に紛れた某国のスパイが「ヤヴォール! こいつはダス・イッヒ・とんでもない秘密兵器だぞ! ザウアークラウト!」と、試作機を持っていってしまうかもしれない。そんなわけで必死に追跡するものの、市街外縁に沿うように飛ぶ空中魚雷を一行はついに見失ってしまった。

飛行距離から墜落地点を大まかに割り出し、回収チームが予想墜落地点へ向かうとそこにはケタリング・バグの残骸と、それを発見して興奮気味の農夫が待っていた。
農夫はてっきり通常の飛行機が落ちてきたものだと思い、飛行士を助けようとしたが、ところがどっこい、墜落地点をいくら探しても飛行士がいないではないか! これはなんたる超常現象! すぐさま学研の「ムー」に投稿だ!
なんとかして飛行爆弾の秘密を守らなければと思ったアーノルド将軍、追跡チームの中に偶然革ジャケットを着てゴーグルを持っている士官がいたのでこれ幸いと「彼がこの飛行機のパイロット。先にパラシュート脱出して助かっていたのさ!」とでっちあげた。
将軍によると、「幸いなことに、農夫が合衆国陸軍がまだパラシュートを配備していないということを知らなかったために、我々の機密は守られたのであった」とのこと。ちなみに世界で始めてパラシュートで航空機からの緊急脱出に成功したのは1922年10月20日のこと。アメリカ陸軍航空隊のハロルド・ハリス中尉(Harold R. Harris)が高度800メートルでの乗機の空中分解から生還している。それ以前はせいぜい観測気球からの脱出に使われる程度だった。

なんだかおかしな方向へ飛んでいったものの、ちゃんと飛んだのだからもう少し調整すれば、これはドイツ帝国軍を叩きのめす必殺兵器になるぞ、と踏んだ陸軍と政府はなんと2万機のケタリング・バグを発注したが、まぁ、大方の予想どうりにほどなくして戦争は終結した。終戦までに50機(Wikipediaでは45機)のケタリング・バグが完成しており、これらは試験飛行に使用されたようだ。
Youtubeで「Aerial Torpedo Tests 1919」と検索すると1919年10月に陸軍が行った試験の様子の動画を見ることができるが、まぁ、ぶっちゃけ2万機も作らなくて良かったね、という感じではある。特に滑走中に脱線しちゃった1機目なんかは、敵陣の前に見てる方の腹筋を破壊しかねない。しかし、動画終盤の飛行の様子を空撮で捉えた様はこの時期の無人機が危なっかしいながらもちゃんと飛んでいる貴重な映像と言えるだろう。組み立ての様子も興味深い。

さて、これまでカードモデル関係なく突き進んでいた当連載だが、ここへきてついにキットの登場だ。
ケタリング・バグをキット化したのはアメリカはアリゾナ州のブランド、Murph's Models

KIMG0014[1]-1

Murph's Modelsのページから完成見本写真を引用。
まぁ、もとがヘニョいんで、どうしても模型もヘニョくなる。でも、なんか向かって右側の支柱から上翼が浮いてない?
特徴的な上反角もちょっと足りない気がするので、よりリアルなケタリング・バグを欲するモデラーならデジタル販売であることを生かして自分なりの修正を加えるといいだろう。小柄な機体なのでスケールは25分の1で完成全幅約20センチ。販売価格は3ドルとなっている。
極初期無人航空機ファンのモデラーなら、このキットを見逃すべきではないだろう。陸モノスケールでのリリースなので、フォード3トン戦車と並べてみるのもおもしろそうだ。

商品ページ直リン:
http://murphs-models.webs.com/kettering-bug-torpedo


おまけ。
アメリカ特許庁からもってきたスペリーの無人航空機特許(US1418605)。

US1418605-0.png US1418605-2.png

これを見ると、ターンテーブル上からの発進も考えていたようだ。どういうわけか、特許申請が1916年12月、特許取得が1922年6月となっているが、戦時中は軍の機密扱いになっていたのかもしれない。また、申請者はなぜか息子の方のローレンス・スペリーとなっている。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケタリング・バグ
https://ja.wikipedia.org/wiki/チャールズ・ケタリング
それぞれの英語ページも参考とした。

https://owlcation.com/humanities/World-War-1-History-The-Kettering-Bug-Worlds-First-Flying-Bomb
多くの教育関係者、研究者が寄稿している学術情報サイト「Owlcation」からケタリング・バグのページ。
https://owlcation.com/
Owlcationには興味深い歴史記事も多く、読み物としてもおすすめ。
(英語だが、平易な表現なので機械翻訳でも十分読める)

https://airandspace.si.edu/collection-objects/depalma-v-4-engine
スミソニアン博物館の収蔵品紹介ページ。デ=パルマエンジンの美しい写真が見られる。
http://www.nationalmuseum.af.mil/Visit/Museum-Exhibits/Fact-Sheets/Display/Article/198095/kettering-aerial-torpedo-bug/
国立空軍博物館のケータリング・バグのページ。スペック表がやたらと過大。

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