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Murph's Models アメリカ 試作汎用輸送機 Burnelli UB-14・後編

先日の大雪で出社を一時間遅らせ、わっしょいわっしょいと家の前を雪かきをしたら2日ほど腰と膝が痛くてしかたなかった筆者のお送りする世界のカードモデル情報(しかもその夜にはほとんど雪溶けてた)。
ウィリアム・クリスマスの激ヤバ飛行機のことは早く忘れて、それよりも極厚の翼をぶった切って胴体にしたような「リフティングボディ機」で一世を風靡しようと航空業界に打って出たヴィンセント・ブルネリの飛行機列伝、いよいよ変な胴体の飛行機がぞろぞろ列をなしてやってくる後編。

レミントン・ブルネリRB-1が乗客30人とか、車そのままとかを飛行機の中に積んで当時としては桁外れの積載量を発揮したことで手応えを感じたブルネリは1928年、さらに洗練されたリフティング・ボディ機として、CB-16を設計する(RB-3でないのは、出資者が変わったかららしい)。

Burnelli_CB-16.jpg

写真はWikipediaからの引用(この項、全て同じ)。
CB-16は単葉引き込み脚の双発機(アメリカで初めて多発機で引き込み脚を装備した機体)で、尾翼はそれ以降の機体と同様、ブームの後ろに尾翼がつくようになっている。これは以前の形式では上下左右方向への操縦性に難があったためらしい。
キャビンの広さは長さ5.5メートル、幅3.5メートルと相変わらず圧倒的で、さらにキャビン内には小さなキッチンとトイレまで備え付けられていたというから、こりゃすごい。あとはシャワーがついてれば空飛ぶホテルだ。
キッチン・トイレ付きということもあり、どうやらブルネリはこの機体をRB-2のように「空飛ぶオフィス」としてエグゼクティブ層に使ってもらうことを想定していたようだが、折り悪くアメリカは大恐慌に突入してしまい、エグゼクティブ達もそれどころではなくなってしまった。なお、1930年にブルネリは別の会社でほぼ同型のUB-20を設計している。

大恐慌から世界が立ち直りつつある1934年、ブルネリは次なるリフティングボディ機として、Murph's Modelsからキット化されている当記事の主役、UB-14を完成させる。

800px-CunliffeOOA1.jpg

この機は1934年末に完成したが、1935年1月に早くも墜落事故を起こしてしまう。これはどうやら整備不良が原因だったようだが、着陸に入ろうとした際に大きく傾き片翼の先端が地面に接触、時速200キロで地面に叩きつけられるひどいクラッシュの仕方をしたが、乗員全員が大きな負傷をしなかった。これは、従来形式の機体胴体ができるだけ軽くしようと作られているのに対し、リフティング・ボディ機の胴体は浮力を受け止めるために頑丈に作られていたためだと考えられている。
2機目がすぐに建造されヨーロッパで売り込みが行われたが、結果は芳しくなかった。アメリカに戻ったUB-14は、デモンストレーションとして世界一周飛行が計画され機体も真っ赤に塗られ、太平洋無着陸横断飛行で有名なクライド・パングボーン(Clyde Edward Pangborn)がパイロットを務める予定だったが、これも戦争勃発で中止となってしまった。

アメリカで2機だけ生産されたUB-14だったが、イギリスのカンリフ・オーウェン航空機(Cunliffe-Owen Aircraft Ltd.)というところがライセンスを購入し、ほぼ同型機(機内レイアウトとエンジンが異なる)の製造を試みている。こちらも戦争勃発でゆったりスペースの高級輸送機を作ってる場合じゃなくなって、完成したのは1機だけだったが、この1機は英国空軍に徴用された後で自由フランス軍に譲渡され、最終的にはシャルル・ド・ゴール将軍の専用機となっているので、やっぱり偉い人のための特別機としては抜群のキャパシティを持っていたのだろう。
なお、前編冒頭のキット写真でUB-14はインベイジョン・ストライプが塗られていかにも戦争後期に活躍したような塗装になっているが、これはあくまでの実戦配備された時を想定した「架空塗装」だ。

その後、ブルネリは1943年に米陸軍のためにリフティング・ボディのグライダーXCG-16を設計している。
General_Airborne_Transport_XCG-16_--_2000-3085_(flight).jpg

特異な機体形状がよくわかる素晴らしい写真。
XCG-16は1機目が乱気流による荷崩れ(砂袋のダミーウェイト)が原因で失われたが、2機目は50回34時間の飛行を行っている。特異なスタイルの割に飛行特性は良好だったそうだが、軍の評価は「軍用に適さず」という理由で不採用だった。しかし、比較対象となったウェイコCG-13と比較してもスペック表上では大きな差がなく、なにがそんなに嫌がられたのかははっきりしない。もっとも、ウェイコの方は量産機のスペック、ブルネリの方は試作機のスペックなのでブルネリの試作機に防弾装備など実戦装備をしたら性能ガタ落ちになるのが目に見えているということなのかも知れない。
ところで似たような形状のグライダーとして、ドイツ軍が試作したユンカース Ju 322 「マムート」があるが、あちらの方が倍以上大きい(ブルネリ25メートル、マムート60メートル)機体だ。

ブルネリはこの後、リフティング・ボディ機CBY-3をカナダ・カー&ファウンドリー(Canadian Car and Foundry)のために設計している。
800px-Cancargo_(4859383840).jpg

この機体も良好な性能だったが、なぜか、と言うかやっぱり、どこからも追加発注はなかった。
その後CBY-3はカナダでさまざまな輸送業務に従事し1964年にリタイヤ。機体はアメリカのコネチカット州ニューイングランド航空博物館に引き取られた。

Vincent_Burnelli_1940_circa.jpg

ブルネリご本人。1940年ごろ撮影。
ヴィンセント・ブルネリは1964年、68歳で亡くなった。
最後までリフティング・ボディ機の利点を説き続けたブルネリの設計した機体は1機種たりとも大量生産はされなかった。
特に機体に不都合な点は見当たらず(タイミングが悪かったという問題はあったにせよ)、評価も悪くなかったにも関わらずブルネリの機体が大量受注に至らなかった理由はよくわからない。単に奇っ怪すぎる形状が嫌われた、というのもなんだか苦しい理由付けだ。リフティング・ボディ機は特に低速で従来機と操縦特性が大きく異なるといい、それが採用を妨げたのかも知れない。
今に至るまで、リフティング・ボディ、ワイドキャビンの実用旅客機というのは登場していないが、前述の通りに胴体の構造が強く、クラッシュに強いリフティング・ボディ機はコンピューター制御に期待できる今こそ完成させるべきだ、というムーブメントもあるそうだ。
ブルネリは未来を100年ほど先取りしてしまっていたのかもしれない。

800px-Burnelli_CBY-3_Loadmaster_at_New_England_Air_Museum.jpg

ニューイングランド航空博物館のCBY-3。野ざらしの状態展示されているために損傷がひどく(1979年に竜巻の直撃を受け、多くの展示機が損傷した)ほとんど残骸状態だが、ニューイングランド航空博物館では現在、ブルネリのリフティング・ボディ機最後の現存機であるCBY-3のレストアが進んでいる。まだまだ先は長そうだが、この特徴的な機体が空を舞う姿を将来また見ることができるようになるかもしれない。

Murph's ModelsのUB-14は太っ腹、無料での提供。無料キットのページから、各キットの写真をクリックでそれぞれのページへ飛び、「FREE」のボタンを押すと展開図のPDF(Googleドライブの共有ページ)が開く。
カラーリングは旅客タイプと架空の軍用塗装の2種類。スケールはどこにも見当たらないが、展開図を見る限りかなり大柄な仕上がりとなりそうだ。
Murph's Modelsの無料キットのページには単発複葉ジェット農業用機という、なにがなんだかわからないPZL M-15”ベルフェゴル”や、ブガッティの未完成レーサー機”モデル100”など、どうかしてるスタイルの機体ファンのモデラーにとって嬉しい機体がならんでいる。これらの機体を無料で机上に飾れる機会を提供してくれたMurph's Modelsから、これからも目を離すことはできなさそうだ。


*キットのダウンロードはフリーですが作者は著作権を放棄していません。データは個人での利用のみが認められており、販売などはできません。


参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビンセント・ブルネリ
各機体のページは省略。英語、日本語の双方を参照とした。
ブルネリの各機体については、なぜかドイツ語版が詳しい。

http://www.aircrash.org/
機体の安全性の面からリフティング・ボディを推す団体のページ。
ブルネリについての情報が非常に多い。
http://www.aircrash.org/burnelli/chrono1.htm
上記ページからブルネリ設計のリフティング・ボディ機一覧。
各機のリンクから、自動車を積んだRB-2など貴重な写真が多数見られる。

https://www.neam.org/restoration-cby3.php
ニューイングランド航空博物館内、CBY-3レストアのページ
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