Murph's Models カナダ 汎用機 Noorduyn "Norseman"・後編

カードモデルにハマって約10年、何も考えずにキットやら資料やら空き箱やらを積み重ね続けた作業台の周りがどうにもこうにも使いづらくなってきて、一念発起大掃除を始めた筆者のお送りする世界のカードモデル最新情報。先週に続きアメリカはアリゾナ州のブランド、Murph's Modelsからの新製品、カナダ 汎用機 Noorduyn "Norseman"の紹介。

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前回は1935年にノースマン最初の一機が初飛行したところまでだったが、この一機、いわゆる「試作機」ではない。と、いうか、ノースマンには試作機といえるものが存在しない。どういうことかと言うと、最初に飛んだノースマンは性能に全く問題がなかったために、製品一号として後に民間航空会社に売却されているのだ。世の中には試作機を飛ばしてみたら山ほど問題が明らかになったとか、そもそも飛ばなかったとか、とんでもない飛行機が多い中、ノールダインがいかに緻密にアイデアを温めていたのかを物語るエピソードだと言えよう。
ちなみにこの最初のノースマン、後に映画会社のワーナー・ブラザースがチャーターし、ジェームズ・キャグニー主演の映画「 空軍の暴れん坊」(”Captains of the Clouds”、邦題は「大西洋の翼」となっていることもある)で元気に飛び回っている姿を見ることができる。しかも、1942年の映画なのにテクニカラーの総天然色だ。その後もこの機体は戦中戦後を通じて飛び回っていたが1952年に墜落し全損。その残骸は今日もカナダ不整地飛行機記念館(Canadian Bushplane Heritage Centre)に展示されている。

1935年から52年まで飛び続けた最初の一機の例でも分かる通り、ノースマンはノールダインの意図通りに頑丈で性能が良く、不整地での運用に非常に適していた。しかし、意外と売上は思うように伸びず、1940年までに売れたノースマンはわずか17機(主な納入先はカナダ王立騎馬警官隊)。
しかし、第二次大戦で状況は一変する。一機でも多くの航空機を必要とする連合軍のために、ノールダインは最初ハーバード練習機(アメリカのテキサン練習機のイギリス向け生産型)のライセンス生産を行っていたが、カナダ空軍からの要請に応じて無線・航法練習機として一気にノースマン38機の発注を受ける。やったぜ、売上倍増だ。

そして、文字通り「桁違い」のビッグチャンスがノールダインに飛び込んできた。
アメリカ陸軍航空隊は、追い詰められたイギリスを支援するために物資、兵器、そして航空機を空路ガンガン送りつけていたが、荷物を渡したらパイロットは帰ってこなければならない。英国への行き来には枢軸軍の手が届かないグリーンランド経由のルートが使われていたが、このルートに最適な汎用機としてパイロットの送迎に選ばれたのがノールダイン・ノースマンだった。
この過酷な任務のために約1000リットルの燃料タンクを胴体内に増設した軍用のノースマン、C-64/UC-64が749機が生産された(うち3機は海軍が購入している)。また、カナダ空軍もさらに長距離型ノースマンを34機追加購入している。
当然、騎馬警官にちょこちょこ飛行機を作っていたノールダインにこの大量発注に応じる能力はなく、受注したうちの約600機は軽飛行機をバリバリ生産していたエアロンカ社でライセンス生産されている。

まぁ、任務が任務なのでノースマンには戦史に残るような派手な活躍はないが、一度だけ戦時中の大きな事件に名前が出てきたことがある。1944年12月15日、ドイツ軍のアルデンヌ攻勢が始まる前日、伝説的ジャズ奏者として現在にもその名を轟かせているグレン・ミラーがフランスの連合軍慰問のためにイギリスからUC-64で飛び立ちそのまま消息を絶ったのである。
当時すでに英仏海峡の制空権は連合軍が完全に掌握しており、ドイツ軍機の奇襲という可能性はない。一時はドイツ空襲から帰還したアブロ・ランカスターの編隊が着陸前に正常投下できなかった爆弾を英仏海峡上で投機したのに巻き込まれたのではないかという説もあったが、これは当日のランカスター編隊の航路を検証するとあり得ないらしい。
となると、残る可能性は機体の異常である。2014年、アメリカの新聞シカゴ・トリニューン紙は「UC-64はキャブレターに欠陥があり、しばしば低温でキャブレターが凍結したことによる墜落事故を起こしていた」としてUC-64欠陥説を唱えたが、キャブレターの凍結は当時のエンジンに共通する弱点であり、寒冷地に特化してその頑丈さが評価されていたノースマンを名指しにした評価としてはいささか不適当ではないだろうか。
なお、UC-64では他に31機を撃墜したカナダ空軍きってのエースパイロット、ジョージ・フレデリック・バーリング(George Frederick Beurling)が戦後にイスラエル空軍に従軍しようとしてローマからUC-64で飛び立ち、エンジントラブルで墜落、死亡している。エンジントラブルが墜落に直結してしまうのは単発機の宿命だが、ノールダインが整備されていない空路に投入されるノースマンをあえて単発としたのは整備性を重視したのだろうか。

戦後、ノールダイン社はカナダ自動車工場社(Canadian Car & Foundry)に買い取られ一時消滅する。CCFではノースマンの民間向けバージョンを再生産し、さらに金属製の主翼とより容量の大きい胴体を装備した新型ノースマンの生産も準備していたが、朝鮮戦争向けに既存の機体の生産に忙しくなって試作機を倉庫に入れておいたら火事で倉庫ごと燃え尽きた。
1953年にノールダインはノースマンの製造権利と工作用の治具を買い取りノールダイン・ノースマン航空機会社(Noorduyn Norseman Aircraft Ltd.)を設立する。しかし、ここでは新しいノースマンの製造は基本的に行わず(3機だけ作った)、既存のノースマンの修理だけを請け負っていた。
ロバート・B・C・ノールダインは1959年2月22日、65歳で亡くなった。ノールダイン社はその後大手企業グループに買い取られたりしたようだが、現在はNORDUYN("O"が一つ少ない)のブランドで活動している。ただし、業務内容は旅客機の内装用機器がメインのようだ。
ノースマンは総計で903機が生産され、現在、カナダでは42機が登録されている。特殊な用途の機体のために転売が繰り返されており世界中では何機が現役として飛んでいるのかは誰にもわからない。これら現存機は「ノースマンの聖地」を自認するカナダ・オンタリオで毎年7月に開催される「ノースマン祭り」に集まり親睦を深めるそうだ。

ノールダインの夢見た究極の不整地用汎用機、カナダ 汎用機 Noorduyn "Norseman"はいつもの空モノ標準スケールよりちょっとだけ大きいヨーロッパスケール32分の1でのリリース。難易度表示はないがディティールよりもフォルムを大切にするMurph's Modelsの作品なので、それほど高い難易度ではないだろう。定価はEcardmodelsで4ドル(ダウンロード販売のみ)。またEcardmodelsではハンティングやトレッキングをサポートしている「Renfro Alaskan Adventures」(アラスカ)、「Chimo Air Service」(オンタリオ)という小航空会社の塗装2種も扱っている。Chimo Air Service機はフロートを装備した水上機仕様となっているが値段は全て変わらず4ドルだ。

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ノースマン好きのモデラーならダウンロード販売の利点を活かして様々なノースマンを自作し、一人ノースマン祭りを開催するのも面白そうだ。そして、ジャズ好きなモデラーならグレン・ミラーに敬意を評し、不滅の名曲ムーンライト・セレナーデを聞きながらゆったりとした気分でノースマンを製作するのもいいだろう。

画像はEcardmodelsからの引用。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_B.C._Noorduyn
https://ja.wikipedia.org/wiki/ノールダイン_ノースマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/グレン・ミラー
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