GPM ドイツ帝国仮装砲艦 SMS GOETZEN・前編

帰りの電車の中でハッと目覚めたら降りる駅を2つも過ぎていた筆者がお送りする世界の最新カードモデル情報、本日紹介するのはポーランドGPM社からリリースされたドイツ帝国仮装砲艦 SMS GOETZEN だ。

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よく見ると「2015年18号」と書いてあるが、カタログに出てきたのが最近なんで新作ってことでここは一つお願いしたい。

当コーナーではよく、やたらと長持ちした装甲艦の話題が出て来るが、では逆に2017年現在、現役で最も古い船はなんだろう。
イギリスの戦列艦、HMS”ヴィクトリー”(1765年)は現役として登録されている船としては最も古いものだが、あの船はいわば名誉永久現役艦で、ここ100年はずっと乾ドックに入りっぱなしだ。アメリカの帆走フリゲート艦”コンスティチューション”(1794年)は時々航海に出てるが、あれだって普段は飾ってある「航行可能な記念艦」にすぎない。
ここで話題にしたいのは、もっとこう、毎日毎日普通に普通に使われていて、使ってる人たちも記念艦だなんて思っていないような「普通の船」として最古の船の話である。
この問に応えるのはなかなか難しい。どこか田舎の湖で、はるか昔に作られた汽船がいまでも渡し船として頑張っているかもしれないからだ。しかし、一般的に知られている範囲内での「世界最高齢の、普通に現役の船」は、おそらくアフリカ南東部、タンザニアとコンゴに挟まれた細長い湖「タンガニーカ湖」で週に一度貨客を載せて湖を行き来している「MV Liemba」(「リエンバ」現地古来のタンガニーカ湖の呼び名)であろう。

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ちっちゃい写真だが、2003年に撮影されたリエンバ。Wikipediaからの引用。
なんてことない普通の船だが、この船こそ現役最高齢の普通の船にして、ドイツ帝国海軍唯一の現存艦なのである。

ドイツは1871年に諸侯が統一し「ドイツ帝国(Deutsches Kaiserreich)」となったが、帝国ならやっぱり帝国らしく帝国主義に邁進したい。19世紀型帝国のトレンドはなんといっても「植民地経営」で、帝国たるもの植民地の一つも持ってないと、列強クラブでは相手にされないZO☆ という雰囲気だった。
そんなわけでドイツ帝国もアフリカに、アジアに、オセアニアに探検隊を派遣して勝手に旗を建て、「ふむふむ、つまり君たちはドイツ帝国の庇護を欲しているわけだね!」とドイツ語が通じない現地の人々から快く了承を得て植民地を獲得していった。
もっとも、植民地獲得競争にドイツ帝国が遅れて参加したころには世界地図の目ぼしいところはイギリス、フランス、スペイン、ポルトガルといった数百年早く世界へ飛び出していった連中によって押さえられていたが、探せば「空白地」ってのはけっこうあるもんで、ドイツ帝国は19世紀末までにニューギニア、西アフリカ(現在のナミビア)、東アフリカ(現在のタンザニア)、オセアニアのサモア、中国の青島などを占領していた。
しかしまぁ、そんな一方的身勝手な話が「めでたしめでたし」に終わるわけはなく、ドイツ帝国領東アフリカでは換金作物として綿花の栽培をドイツが推進し、無茶苦茶なノルマを課したことに対する反発をきっかけに1905年、極めて大規模な反乱が発生している。
この反乱に際し、現地軍は近代兵器で武装したドイツ帝国軍に立ち向かうために「不死身になる魔法の水」を祈祷師から分け与えられ、その効果を頼みにライフル銃火へと突っ込んでいった。このため、この反乱は現地で使われるスワヒリ語で「水」を意味する「マジ」から「マジ・マジ反乱」と呼ばれている。名前はオモロイが、3年に及ぶ反乱でドイツ人15人、帝国側アフリカ人兵士382人、そして反乱軍25万から30万人(反乱地域の人口の約3分の1)が死傷したとあっては、ちょっとネタにはできない。
反乱はあまりにも大きな流血を伴ったが、その結果としてドイツ本国は植民地経営者の怠惰、腐敗、無能力、そして現地住民に対する無理解によって植民地経営が破綻しつつあることを知り、これ以降ドイツ帝国領植民地の経営は大きく改善され、現地住民との軋轢も(比較的ではあるが)少なくなっていく。
タンガニーカ湖対岸のベルギー領コンゴではベルギー王レオポルド2世が「コンゴで天然ゴム作るよ! ノルマ達成できないやつは手首切断するよ!」とメチャクチャな事を言い出して、その統治下で人口が3000万人から900万人まで減ったというから、結果的には反乱はタンザニアの人々の命を救ったことになったのだと思いたい(もちろん、コンゴとの比較で「ドイツ人に感謝しろ」と言うつもりはない)。

さて、マジ・マジ反乱の惨禍からやっと東アフリカが回復しつつあった1913年、ドイツは東アフリカで鉄道建設を進めていた。やっぱり鉄道があれば移動も輸送も格段に楽になる。あと、反乱が起こったら鎮圧部隊の移動も楽になる。とは言え、なにしろドイツ本国から遠く離れた東アフリカの地ではレール1本だって調達には手間と時間がかかるので、できるだけレールを敷く距離は短くしたい。そこで、着目されたのが南北に長いタンガニーカ湖だ。タンガニーカ湖は一言で「湖」と言っても、なにしろスケールの大きいアフリカのこと、なんと南北の長さが670キロもある。湖の南端、北端に鉄道を接続し、湖では汽船に貨客を積み替えることとすれば、670キロ(日本で言えば東京-広島間の直線距離にほぼ等しい)の鉄道建設の手間が省けるんだからこりゃお得だ。
しかし、問題はタンガニーカ湖には当然造船所なんてないことだった。
仕方がないので、ドイツ植民地省は汽船をドイツ本国のマイヤー・ヴェルフト造船所(厳密には「ヴェルフト」は造船所のことなんで、「マイヤー造船所」)で建造した汽船を5000のパーツに分割して梱包、ハンブルグ港から船便で東アフリカに送りつけた。
東アフリカの主要港、ダルエスサラームで荷物を受け取った植民地側は5000の荷物をホイサホイサと鉄道に載せてどんどんタンガニーカ湖へと送り出す。鉄道はまだ建設中でタンガニーカ湖の約50キロ手前で終わっていたので、最後の50キロは現地労働者を雇って人力で運んだそうだ。単純計算で一箱300キロもあるけどね!(船体の竜骨なんか、どうやって運んだんだろう?)
タンガニーカ湖では3人のドイツ人技術者と現地労働者が13ヶ月の時間を費やして汽船を再度組み上げた。船は全長70メートル排水量約1500トン、上客にはシングルのベッドにソファーもある1等船室が7室と、2人相部屋の2等船室が5室準備してある。電気照明と空調完備で、さらに時間あたり3キロの氷を作る製氷機まで備え付けたなかなか豪華なものであった。いくら全パーツが工作済の状態で送られてきたとはいえ、これだけの船を大した工作設備もない状態で組み上げたのだからその苦労たるや相当なものだっただろう。
誰がつけたのかわからないが、汽船は「Graf von Goetzen」と名付けられた。マジ・マジ反乱を鎮圧した当時の東アフリカ総督の名前である。

さぁ、汽船も就航したし、これで東アフリカの旅もずいぶん快適になりますよ。よかったよかった。
と、思ったら、全然良くなかった。
G.V.ゲッツェンが就航したのは1915年2月5日。すでにこの半年前、ドイツ帝国は第一次大戦に突入し、タンガニーカ湖対岸のコンゴを支配するベルギー、タンザニア南北に国境を接するザンビア、ウガンダ、ケニアを領有するイギリスと開戦していた。
ドイツ軍はタンザニア西方から連合軍がタンガニーカ湖を渡ってくるのを防ぐため、軽巡ケーニヒスベルク(初代。開戦時にダルエスサラームに寄港していたが石炭不足で動けなくなっており、1915年7月11日に英軍の攻撃を受け自沈した。)から105ミリ砲1門、88ミリ砲1門をG.V.ゲッツェンに移し、仮装砲艦「SMS(Seine Majestät Schiff、「皇帝陛下の艦」) ゲッツェン」に改装した。

と、いうわけでGPM公式ページの完成見本写真でSMSゲッツェンの姿を見てみよう。

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「仮装砲艦」とは言ったものの、ほんとにただの船に艦砲乗っけただけだ。
もちろん装甲なんてないが、全然それでも構わない。どうせ敵対するイギリス、ベルギーはタンガニーカ湖に艦船らしい艦船を保有しておらず、ゲッツェンはこの時点でタンガニーカ湖最大の船舶であった。
このSMSゲッツェンと、他に長さ20メートル排水量60トンの「Hedwig von Wissmann」(ゲッツェンよりも前の東アフリカ総督、ヘルマン・フォン・ヴィスマンの奥方の名前)と排水量45トンの「Kingani」(由来不詳)という小さい小さい蒸気船に47ミリ砲や37ミリ砲を積んだ、まぁなんというか、いないよりはいたほうが幾分ましな程度の船2隻を合わせた3隻でドイツ帝国東アフリカ軍は長さ670キロのタンガニーカ湖を守ることとなった。


(後編に続く)

参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/タンガニーカ湖
https://ja.wikipedia.org/wiki/ドイツ領東アフリカ
https://ja.wikipedia.org/wiki/マジ・マジ反乱
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