paper-replika.com ソビエト 携帯対戦車無反動砲 "RPG-7"(後編)

さきほどまで、排水ホースが破れて床を水浸しにしてくれた洗濯機の修理をしていた筆者のお送りする世界のカードモデル情報。ちなみにホースはいろいろ試したものの、最終的にはシーリングパテで包んでダクトテープでぐるぐる巻きにするというアメリカンスタイルで修理しました。
今回紹介するのはインドネシアのペーパークラフト発信サイト、paper-replika.com から2013年にリリースされたソビエト 携帯対戦車無反動砲 "RPG-7"だ。

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前回は前身となるドイツのパンツァーファウストについて書いただけで終わってしまって、今回はその続きから。
まず「РПГ(RPG)」という名前についてだが、しばしばこの名前は英語の「ロケット推進榴弾(rocket-propelled grenade)」の略、と言われることがあるが、前回も書いた通りパンツァーファウストとその後継であるRPGはもともとはロケット推進兵器ではない。正しくはロシア語の「Ручной противотанковый гранатомёт」で、直訳は「携帯用対戦車榴弾」。なのでもともとの「РПГ」には射出兵器の意味はなく、1940年に開発された柄つき対戦車手榴弾(重さ1.2キロ)の名前も「РПГ-40」である。ちなみにソビエト軍はさらに威力を増そうと重さ2キロの対戦車手榴弾、「РПГ-41」も試作したが、そんなもん誰も投げられないので試作に終わった(さらに後継の「РПГ-43」はちゃんと命中すると話題のモンロー/ノイマン効果で敵戦車の装甲に穴を開ける成形炸薬手榴弾で、投擲すると柄が外れてリボンの吹き流しがピロピロすることで先端が当たるように工夫されていた)。

さて、日本では前回の最後に書いたように「ソビエトは戦後、パンツァーファウスト250の設計を拝借し、「RPG」を完成させた」と認識されることが多いが、英語版Wikipedia等によると、どうやらこれは正しくないようだ。
ソビエト軍はパンツァーファウスト250がまだ影も形もない1944年からRPGの開発を始めており、戦時中にすでに「ЛПГ-44(LPG-44)」という試作型を完成させていた。爆発物の専門家であるゲオルギー・ロミンスキー(Георгий Павлович Ломинский)が開発し、後に「РПГ-1(RPG-1)」と名前が変更されるこの兵器はピストルグリップの後ろに長い木の筒がついてるという、なんだか変な武器(木の筒は断熱用で、中に金属チューブが入ってる)で、あんまりパンツァーファウストと似てはいない。このランチャー部は再利用可能となっているが、同じような武器を作っても物量で押すイメージのあるソビエト軍がランチャーの再利用を考えており、物資の欠乏していたドイツ軍が使い捨てを選んだというのはちょっと興味深い。
とりあえず完成したRPG-1だったが、最良の条件で着弾しても150ミリしか貫通できない(パンツァーファウスト60なら200ミリ貫通する)という欠点があった。この貫通力ではうまいこと当たらないとパンター戦車は倒せないし、キングタイガーなんてもっと倒せない。
なんでこんなに貫通力が低いのかと言うと、弾頭が小さいからだが、直径70ミリ重さ1.6キロ(パンツァーファウスト60の弾頭は直径15センチ)しかない弾頭でもRPG-1は射程が75メートルしかなく、これ以上大きい弾頭つけたらドイツ戦車のところまで歩いていって直接弾頭を叩きつけなきゃならなくなるんで、こりゃダメだ、ということになって生産は見送られ、改良が続けられることとなった。

1947年、全然RPG-1の性能が向上しないのでГСКБ-30(GSKB-30)研究所に「RPG-1なんだけどさ、あれ、なんとかならない?」と、RPG-1の改良と並行して新型RPGの開発命令がくだされる。なお、GSKB-30は終戦に伴って管轄が軍需省か農業省に移管されており、農機具の開発に勤しんでいたが戦時中に対戦車手榴弾を開発してた経緯で依頼が来たようだ。
GSKB-30はRPG-1がとにかく小さすぎるのが問題であると判断し、発射筒の直径を30ミリから40ミリに、弾頭を70ミリから80ミリに拡大した。こうして開発されたRPG-2は射程が約150~200メートル、貫通力180ミリと性能が大きく改善されていた。
大きくすりゃ性能が改善するんだったら、RPG-1の開発チームは何年もかけて何をやっていたんだ、と不思議になるが、とにかくRPG-2が良好な性能を発揮したためにRPG-1の開発は1948年に打ち切られた。
以上の記述(主に英語版Wikipediaの翻訳)を信じるとすれば(RPG-1がパンツァーファウスト30か60の、RPG-2がパンツァーファウスト250の影響を受けていることは否定できないが)、「ソビエトはパンツァーファウスト250をコピーしてRPG-1を開発、改良型のRPG-2が大量生産された」というのは正しくないということになる。

なお、RPG-1を開発していたゲオルギー・ロミンスキー将軍は、別にその責任を取らされるようなことはなく爆発物の専門家として活躍を続け、最終的にはソビエトの核兵器開発にも関わっている。
せっかくなので、ロミンスキー将軍に関わる話をもう一つ。1970年代にスヴェルドロフスク(今のエカテリンブルグ)で政府機関の入った建物の前で車が爆発し建物が損傷を受ける事故(もしくは事件)があった。
すわ、反政府テロかと色めき立ったスヴェルドロフスクの党役員は(爆発の規模が大きいことから)ロミンスキー将軍の爆発物研究所に目星をつけたようで、電話をかけ問題の爆発物の出所ではないかと問いただした。すると将軍は「いいえ、我々の開発した爆弾ではありません」と即答、さらにこう続けたという「我々の爆弾が使用されたのでしたら、スヴェルドロフスクの党役員はきちんと一人残らず跡形もなく吹き飛んでいるはずです」

RPG-2で威力は増したが、そうは言ってもまだ貫通力は不足気味だし、なによりもやっぱり山なりにヒュルヒュル飛んでいく弾頭を移動する目標(戦車)に当てるのは至難の業だった。
そこで、発射後に点火されるロケットブースターが弾頭に追加された「RPG-7」が開発される。この改良によって射程は900メートルまで伸び、また近距離での命中率も飛躍的に向上した。ついでに「RPG」の意味が勘違いされるようになった。あと、ランチャーにも修正が加えられており、大きなところとしてはRPG-2が弾頭のロック機構がないために俯角をとって標的を狙おうとすると弾頭がポロリと落っこちて射手が飛び上がって驚く(安全装置があるので、滅多に暴発はしない)という欠点があったのが改善されている。

さて、それでは2週に渡る長い長い前フリを経て、携帯対戦車兵器の決定版、RPG-7の姿を paper-replika.com 公式ページのCGイメージで見てみよう。

RPG7_assembly_22.jpg

当キットには完成見本写真がないが、上のCGはキットデザインのためにおこしたモデルのようで実際のパーツ構成と大きな差異はないので雰囲気は把握できるだろう。
ソロバン珠を引き伸ばしたような形の淡いダークイエローっぽい部分が弾頭で、長い尻尾が発射筒の中に差し込まれている。発射筒(黒い筒)のすぐ前にある小さな突起が並んでいるのが内蔵ロケットブースターのノズルだが、発射直後に点火したら射手がヤケドしちまうんで、ちゃんと10メートルは飛んでから点火するように調整されている。

RPG7_assembly_1.jpg RPG7_assembly_2.jpg

組み立て説明書から弾頭の部分をピックアップ。一部はテクスチャで表現されるなど決して細かい構成ではないが、さまざまな太さの筒を綺麗に組み立てるのにはスケールモデルとはまた違ったコツが必要となりそうだ。
なお、この弾頭は対戦車成形炸薬弾だが、RPG-7は弾頭のバリエーションも豊富で(RPG-2までは対戦車成形炸薬弾のみ)、他に破片榴弾や照明弾、サーモバリック弾など様々な弾頭が準備されている。弾頭の種類が豊富なのでRPG-7の標的は戦車に限定されておらず、有名なところではソマリアで米軍の汎用ヘリコプター、UH-60「ブラックホーク」が撃墜されたいわゆる「ブラックホーク・ダウン」事件はRPG-7によるものである。

この素晴らしいRPG-7のキットをリリースしたpaper-replika.com はインドネシア在住のJulius Perdana氏の個人サイトだ。氏は20年前の中学生時代からペーパークラフトのデザインを行っている(もちろん当時の展開図は手書きだ)ベテランで、本業はWEBデザイナー(と、ペーパークラフト作家)らしい。
paper-replika.comのサイトには当キットのようなリアルサイズ小火器(RPG-7の他にはドラグノフ狙撃銃など)の他にも宇宙船、民間機、シャーマン戦車、ヴェスパスクーター、パトレイバー、ガンダムなど実に多様なジャンルのキット(一部、Julius Perdana氏デザインではないキットも含まれる)が掲載されており、さらに、その全てが無料という超太っ腹なサイトなので、ネットに接続できるカードモデラーなら間違いなく必見のサイトであると言えるだろう(PDFを開くのにパスワードが必要だが、キット説明のページに記載されている)。

なお、ネット上でRPG-7のペーパークラフトを検索すると、当キットをそのまま印刷したものを台湾のブランドなどが販売しているが、当の paper-replika.com は一切販売を行っておらず商用利用も禁じていることから無断で販売しているようだ。今後もJulius Perdana氏に paper-replika.com で良質のペーパークラフトの発表を続けてもらえるよう、これら怪しい印刷版には手を出さない方がいいだろう。そもそも、無料でダウンロードできるものをわざわざ購入する必要もないだろう。



画像は写真はpaper-replika.comからダウンロードできるキットからの引用。

*キットのダウンロードはあくまでも自己責任でお願いいたします。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/RPG-1
https://en.wikipedia.org/wiki/RPG-2
https://en.wikipedia.org/wiki/RPG-7
それぞれのロシア語版、日本語版も参考とした。
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