SZK ポーランド ディーゼル機関車 Sm02 (Ls40)

久々に本業が忙しいのだが、どうせ工作のはかどらない梅雨時だからまぁいいか、と思ったものの、よく考えてみたら普段からあんまり工作が捗ってない筆者がお送りするカードモデル最新情報。
今回紹介するのはポーランドのブランドSZKからの新製品、ポーランド ディーゼル機関車 Sm02 (Ls40) だ。

okladka050.jpg

キットの画像はこれ一枚で終わり。
油断していても油断していなくても、よくわからないアイテムを平気な顔してリリースしてくるSZKだが、慣れないうちはあらぬ方向から投げつけられるドマイナーアイテムに驚いて勢いで買ってしまわないように注意が必要だ。なにしろそれをやってると、リリースされるキット全部を買ってしまうことになりかねない。
今回紹介するSm02はポーランド国鉄(PKP)の構内入れ替え用ディーゼル機関車。「Sm02」というのはPKPでの識別記号で、「S」がディーゼル機関車、「m」が入れ替え用機関車を示す。なお、理由は良くわからないが「Sm01」は存在しない。
カッコ内の「Ls40」というのはこのディーゼル機関車を設計、開発したFablok社内での型番だ。

Fablok社はもともとの名称は「Fabryka Lokomotyw w Polsce S.A.」、すなわち「ポーランド第一機関車工場」で、1919年にロシア帝国から独立したポーランドが国策として設立した会社で、1947年から略称の「Fablok」が正式名称となった。
いくら国策といえども機関車は「つくります」「できました」でポコポコ生産できるわけはないんで、Fablokはまず工作機械はスウェーデンから購入、設計と部品の一部はオーストリアから供給してもらい、1922年に最初の蒸気機関車「Tr21」をポーランド国鉄に引き渡している(Tr21は1924年に国産化に成功している)。ああ、そうか、ポーランドは独立した時にロシア帝国から鉄道資産を引き継がなかったから軌間がロシア広軌じゃなくてヨーロッパ標準軌なんだ。
1930年台にFablokは設計局を立ち上げ、設計から全てポーランドで行った純国産蒸気機関車「Pt31」の生産を開始、ポーランドは着々と鉄道大国としての足元を固めていく。
1937年に製作された試作蒸気機関車Pm36-1は流線型カバー付きの高速機関車で最高時速140キロを記録。「近代生活における芸術と技術」をテーマに開催された1937年パリ万博で金メダルを受賞している。

produkty-244235-1-jpg-1900-1200.jpg produkty-244235-2-jpg-1900-1200.jpg

今回のキットに直接は関係ないが、写真が少なすぎて寂しいのでポーランドGPMから2002年にリリースされたPm36-1の写真を載せておこう。でも公式ページから引っ張ってきたのにどういうわけかやたら画質が悪いぞ。キットはHOスケールで、定価は15ポーランドズロチ(約500円)だ。
Pm36-1は世界最速の記録を持つイギリスのマラード機関車とパッと見の雰囲気が良く似ているが、製作時期(マラード機関車は1938年完成)から考えると単に高速出そうとして流線カバーかけて、ついでになんとなく青く塗ったら似たような感じになってしまっただけだろう。ポーランド国鉄の機関車といえば緑塗装が標準なのに、なんで青く塗ったのかは謎だ。
ちなみにPm36は2輌が製作され、2輌目のPm36-2は流線カバーをつけない通常型として製作された。これは、流線カバーによって得られるメリットとデメリットを明確にするためだそうで、結果はカバーをつけた方が時速約10キロほど速かった。

さらに脇道となるが、Fablokの流線型鉄道車両といえば無視することができないのが「Luxtorpeda」と呼ばれたエンジンカーだ。

800px-POL_Luxtorpeda.jpg

画像はWikipediaから引用した、ワルシャワ鉄道博物館所蔵の模型。
これは機関車ではなく、この1輌で運用されるレールバスに近い車両で、設計はオーストリア・ダイムラーによるものだが、Fablokは安全のために原型のガソリンエンジンをディーゼルエンジンに変更している。
Luxtorpedaは最高時速110から120キロで突っ走る、当時としてはかなり高速な鉄道車両だった。内装は非常に凝っており(いわゆる「ファースト・クラス」しかなかった)、その豪華さから「贅沢魚雷(luksusowy torpeda)」、略して「Luxtorpeda」と呼ばれた(正式な名前は単なる「エンジン式急行列車(Pociąg Motorowo-Ekspresowy MtE)」)。
ちなみに「Luxtorpeda」という名前のロックバンドが2010年からポーランドで活動している。日本で言えばロックバンド「新幹線」みたいなもんか。

第2次大戦でポーランドが占領されるとFablokはドイツのヘンシェルの下請け工場とされたが、技術者達はさりげなく技術資料を全て隠してしまいドイツ軍に引き渡さなかったので、1945年にドイツ軍が敗退した時に資料が持ち去られたり破棄されることがなかった。戦後にこれらの資料が、Fablokの速やかな活動再開、さらにはポーランド復興の大きな手助けとなったことは想像に難くない。

さて、そんなわけで復興の道をたどり始めたポーランド鉄道だったが、一つ大きな問題があった。
鉄道の引き込み線などで使う入れ替え用機関車が不足していたのだ。
蒸気機関車は動かすために石炭を炊いてお湯を沸かして蒸気を溜めなければならない。逆に言えば、動かす時間がどんなに短くても、すぐに動けるようにしておきたければ止まっている間も窯を炊いて温度を上げておかなければならない。これは、コマゴマと車両を入れ替える集積場ではロスが大きい。その点、ディーゼル機関車なら普段はエンジンを止めておいても必要な時にキーを回してブルルルルンで動き出せる。入れ替えに使うだけなんだから、巨大な機関車が持つような馬鹿力も必要ないというわけだ。
ポーランドでは戦前、入れ替え用機関車がドイツから輸入していた。そのドイツが廃墟になってしまったので、戦後は残された機関車をなんとかやりくりしていたがスペアパーツの供給が絶たれた状態では、そのうち立ちゆかなくなることは目に見えている。
そこでFablokは入れ替え用小型ディーゼル機関車の国産化に乗り出し、生み出されたのが今回リリースされたLs40だ。

Ls40は40馬力エンジンで動くポーランドで初の国産ディーゼル機関車だが(戦前のLuxtorpedaは機関車に含まれない)、やはり初めてということで不具合も多かったようだ。機械式の伝達系は騒音がひどく、非力なエンジンのために最高速度は時速11キロ止まり。ギアボックスは故障が多く、レバー2本をタイミング良く操作しなければならないギアチェンジには慣れが必要だった。
それでも小型のディーゼル機関車というのは需要が多く、Ls40は1961年までにトータルで581輌が生産され、ポーランド国鉄以外にもその手軽さを買われてポーランド各地の鉱山や工場などの構内線でトコトコと貨物を引っ張っていた。
1990年ごろまでに現用からは退いたが少なくとも8輌が現在も保存されており、そのうちの数量は走行が可能な状態。また、観光地などでいわゆる「トロッコ列車」を引っ張るためにレストア中の車両もある他に、どこかの工場の片隅で忘れられたままになっている車両はもっとあるだろう。

SZK からリリースされたポーランド初の国産ディーゼル機関車 Sm02 (Ls40) は小さいと言っても鉄道車両なので陸モノ標準スケール25分の1で完成全長約24センチ。難易度表記はなくて、定価は29.9ポーランドズロチ(約千円)だ。
戦後ポーランドの産業を支えた小さな力持ちLs40はポーランド鉄道ファンや、入れ替え用機関車ファンのモデラーにとっては見逃すことのできない一品と言えるだろう。

キットの表紙画像はSZKサイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。

参考ページ:
https://en.wikipedia.org/wiki/PKP_class_SM02
https://en.wikipedia.org/wiki/PKP_class_Pm36
https://en.wikipedia.org/wiki/Luxtorpeda
各機関車について。

https://en.wikipedia.org/wiki/Fablok
Fablok社について。

http://locomotives.com.pl/

ポーランドの機関車について英語で説明されているページ。非常に詳細なのでポーランドの機関車について知りたい時はここに来れば大抵事足りる。
スポンサーサイト

テーマ : 模型・プラモデル・フィギュア製作日記
ジャンル : 趣味・実用

展開図公開中
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
プロフィール

のとっちょ

Author:のとっちょ
カードモデル初心者が苦闘するさまをご覧あれ。

検索フォーム
リンク(順不同、敬称略)
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード