GPM 駆逐艦 USS WARD & 特殊潜航艇 甲標的

さて、勘のいい読者ならすでに気づいているだろうが、今週は本業の方でシステムのバージョンアップしようとしたらトラブル出してカンヅメだったので更新ができなかった。ほんと、すんません。
しかし、そんなことで足踏みをしていたら東欧カードモデル界名物、秋の新作ラッシュについていくことはできない。気を取り直し、さっそくアイテム紹介へと移ろう。
今回紹介するのはポーランドGPM社がリリースした ”USS WARD” と ”Typ-A” のセットだ。

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ん? typ-Aってなんだ? と思ったが、表紙を見れば一目瞭然、日本軍の特殊潜航艇「甲標的」のことだ。でも表紙の「M-20」が何を意味するのかはわからない。
戦記に詳しい読者なら周知の事かと思われるが、一応復習しておこう。甲標的は見ての通りの超小型潜水艦である。初陣は1941年12月8日、日本軍による真珠湾空襲の時で、近海までイ号潜水艦で運ばれた5隻の甲標的(潜水艦1隻につき甲標的1隻)が空襲を補助するために真珠湾へ向けて投入された。
ところが、このうちの1隻が哨戒を行なっていた米軍駆逐艦「WARD」に発見され、WARDは国籍不明の怪潜航艇に爆雷主砲で攻撃。対称周辺に重油が広がったためにWARD艦長は「撃沈」と判断した。
これを日本軍の攻撃と考えたWARD艦長は司令部に警報発令を要請したが、「んー、鯨じゃない?」という寝ぼけた反応しか得られなかった。鯨は重油を流したりしないと思うぞ。
WARDの怪潜航艇に対する攻撃から1時間も経たないうちに真珠湾には日本軍攻撃隊が轟々と押し寄せ、日米戦争が始まる。

今回は公式ページの完成見本写真が多いので、ここからは完成見本を見ながら紹介を続けよう。

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アンテナを継ぎ足して高さを稼いでいるのがなんだか無理やりっぽいぞ。
細長い煙突がヒョロヒョロと林立していることでわかる通り、WARDは太平洋戦争時にはすでに旧式化していた艦艇である。完成したのは1918年、第一次大戦末期のことで、111隻が建造された「ウィックス級」駆逐艦の1隻だ。
「ウィックス級」というのはあまり聞かない名前だが、他と一緒に「平甲板型」と一まとめにされていることもある~と、いう文章を以前に書いたことがあるぞ、デジャ・ビュというやつか、と思ったら、サン・ナゼール港のノルマンディードックに突っ込んで爆砕した駆逐艦「キャンベルタウン」がウィックス級の1隻だった。

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艦橋部分のアップ。キャンベルタウンではこの細長い煙突が2本の斜め煙突風に改装されているために印象がガラリと変わっている。
艦橋の窓の下のクサビ型の張り出しは、命中した砲弾が滑って思いっきり艦橋窓をぶち破りそうだが、いいんだろうか。
英軍にあっさりあげちゃった上に、巨大爆弾艦として自爆作戦に使われたことでもわかる通り、旧式化していたウィックス級は開戦と同時に次々に主任務から外されていった。
WARDも「高速兵員輸送船」に改装されたが真珠湾から3年目にあたる1944年12月7日、フィリピン沖で日本軍のカミカゼ攻撃を受け大破炎上。やむを得ず友軍駆逐艦の砲撃により海没処分となったが、この時、WARDを砲撃処分した駆逐艦「オブライエン」の艦長、ウィリアム・W・アウターブリッジは偶然にも真珠湾で甲標的を撃沈した時にWARDの艦長であった(日本語資料では、なぜか艦長の名前が「デービス少佐」となっていることがある)。

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こちらは艦体中央部。なにしろ全長100メートル弱、排水量約1250トンの小柄な体に100ミリ砲4門、76ミリ高角砲2門、53センチ魚雷発射管12基(3連装x4基)、さらに爆雷を一杯積まなきゃいけないんで艦上は足の踏み場もない有様だ。

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続いて艦尾の様子。日本軍甲標的を開戦前に撃沈し、米海軍戦果第一号(鯨だと思ったんで、公式には認められていない)を記録した主砲と爆雷のディティールに要注目だ。
この100ミリ砲は高速輸送船に改装される時に撤去されたが、そのうちの一門がミネソタ州立100周年記念となる1958年にミネソタ州都セント・ポールにあるミネソタ州議会議事堂の庭に記念品として据え付けられた。これは、甲標的を撃沈したとみられる砲の砲員が、このセント・ポール出身なのにちなむそうだ。

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そして、これが「オマケ」であると同時に、「主役」でもある甲標的。
なにしろ全長たったの24メートルの「ミジェット・サブ」、とってもちっちゃい。魚雷発射管の前にある「8」を折り曲げたようなものは、対潜防御用の水中網に引っかからないようにするガード。
時として艦首の魚雷で敵艦に体当たりする特攻兵器のように勘違いされる甲標的だが、実際にはちゃんと魚雷発射能力があり、体当たりを前提とはされていない。ただし魚雷を1本発射するだけで、50トンもない艇体から突然1トンもの重量が失われるので艦首が跳ね上がってしまって動揺が治まるのを待つのが大変だったそうだ。

知られざる真珠湾の「開幕戦」を戦った、米海軍駆逐艦 USS WARD と 大日本帝国海軍特殊潜航艇 甲標的 のセットは、海モノ標準スケールの200分の1でそれぞれ約50センチと12センチという小柄なコンビだ。
難易度は3段階評価の「2」(普通)、定価は65ポーランドズロチ(約2100円)となっている。また、真鍮製砲身セットがわずか10ズロチ(約300円)というお手軽価格で同時発売となる。

派手さには欠けるが、太平洋戦記の第1ページ目ともいうべき場所で独特の存在感を放つこの二隻は、日本海軍、米海軍、どちらのファンのモデラーにもおすすめできる一品だ。また、英海軍ファンなら、キャンベルタウンと作り比べることで、どこがどのように改装されたのかを確かめるのもいいだろう。



画像はGPM社サイトからの引用。


*定価はあくまでも現地で購入する場合の値段です。日本国内で購入する場合には輸送費などを考慮し、2倍~3倍程度になるとお考えください。
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