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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その8

この歳になって、ようやくジャガイモの皮を包丁で剥くことができるようになった筆者のお送りする世界のカードモデル情報。
去年から続いてるブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークト博士が手掛けたオモシロ飛行機のキットを探す旅も、いよいよ今回で完結。

まずは前回のおさらい。
大口径機関砲を積んだ新型戦闘機として考案された、無尾翼レシプロ戦闘機がP 208(超カッコいい)。
それをジェット化したのがP 209.01(そこそこカッコいい)。
さらに緊急戦闘機計画に合わせてそれに尾翼をつけて辻褄合わせたのがP209.02(カッコ悪い)。
*()内は個人の感想です。

P 209は上記の通り「緊急戦闘機計画」(お手軽ジェット戦闘機調達計画)に調整されたものだったが、根本的な問題が一つあった。この機体はハインケル HeS 011ジェットエンジンに合わせて設計されていたが、緊急戦闘機計画ではエンジンはBMW 003が指定されていたのである。
以前にBv 141で「単発」仕様のコンペに単発機を送り込んだら双発機に負けたフォークト博士としてはエンジンの違いなんて大した問題じゃないと思ったのかもしれないが、やっぱりエンジンが仕様と違うと相手にしてくれないのでP 209.01をBMW 003にあわせて改修したP 210が設計される。
P 210は2008年にMODELIKから2008年にリリースされており、これは現在もカタログに掲載されている。

BV210 okladka n

Blohm and Voss rys1 Blohm and Voss rys2
Blohm and Voss ark1 Blohm and Voss ark2

MODELIK公式サイトからの引用で、表紙、組み立て説明書、展開図サンプル。あくまでもパッと見の感想だが、組みやすそうな展開図である。
表紙の絵を見ていて気がついたのだが、もともと重武装を機首に集中するために無尾翼機の形態を選んだのに、機首にインテイクを開けたらやっぱり機種に重武装積めないじゃないか。
MODELIKのP 210は空モノスケール33分の1で完成全幅約35センチ、定価25ポーランドズロチ(約800円)となっている。
お手軽価格なのでOrlikの P 208と作り比べてみるのもいいだろう。

なお、やっぱり無尾翼の操縦性が気になったのか、フォークト博士はP 210でもP 209と同様に尾翼をとりつけて通常形態としたP 211をP 210と同時に提出しているが、翼は芸のない四角形だし(矩形を後退させた後退翼バージョンのP 211.01とストレートのP 211.02があった)、そもそもエンジンの排熱で尻が燃えるというP 209.02の問題が全く解決されていないというやる気のなさだった。

この雑さが「緊急!」って感じで返ってウケたのか、空軍省は「一応、P 211は研究しといて」と指示を出している。しかし、緊急戦闘機計画には後にハインンケルのHe 162「ザラマンダー」が採用され、ブローム・ウント・フォスの無尾翼機は全て設計段階で破棄となった。
結局の所、ドイツ軍が制式採用したジェット機、Me262Ar234He162がどれもエンジンをポッドに入れて独立させているのを見ると、当時の信頼性が低く寿命も短いエンジンを胴体に埋め込んでしまうというアイデアそのもの間違っていたような気がする。これじゃエンジン破損したら機体全部分解しなきゃならない。

さて、緊急戦闘機計画は上述の通りHe 162の採用で終了したが、もちろんドイツ空軍は「もうすぐ敗戦だし、He162で開発もおしまいだな」と思っていたわけではなく、1945年初頭には次世代の緊急戦闘機の設計提出が各メーカーに求められた。
戦争が続けば、すでに日本本土に飛来していたB-29がヨーロッパ方面に投入されることは間違いなく、この次世代緊急戦闘機にはさらなる高性能が求められることとなる。
また、今度の仕様ではハインケルHeS 011ジェットエンジンがたぶんモノになるだろう(BMW003よりも推力で勝っていた)、というフラグっぽい淡い期待でハインケルHeS 011がエンジンに指定されていた。
ブローム・ウント・フォスはこの仕様に沿って、P 209.01 を再度整理した P 212を提出する。

P 212はインドネシアのカードモデラー、tekzo氏のブログpaperhobby無料公開されている。

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paperhobbyかの引用でP 212完成見本写真。
HeS 011を積んだ無尾翼機って、P 209 01とどう違うの? とも思うのだが、どうやら戦略物資を節約したり、細かい差異があるようだ。
というか、ぶっちゃけ素人目にパッと見ではP 209 01とP210とP212の違いがよくわからないので、それこそ3機種作り比べてみるというのも有りだろう。

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ちょっとディティールはあっさり気味だが、デジタルデータなので徹底的にディティールを書き込んで仕上げるのもありだろう。

P1150666.jpg

キットは嬉しい情景付き。ドイツ軍ジェット機の地上情景にはケッテンクラートがよく似合う。スケールは35分の1。
*キットのダウンロードはフリーですが作者は著作権を放棄していません。データは個人での利用のみが認められており、販売などはできません。

さすがにそろそろドイツはヤバそうだと感じたのか、フォークト博士は審査を待たずに早々にP 212の風洞実験を終え、さらに試作に取り掛かったが、試作に着手したのが1945年の5月ではもう何もかも手遅れだった。
結局、エンジンのハインケルHeS 011も戦争には間に合わなかったので、「戦争に間に合いそうにないエンジンのために戦争に間に合いそうにない機体を設計したら戦争に間に合わなかった」という順当な結果に終わった。

一方、B-29撃墜を目指す高性能緊急戦闘機計画とは別に、とにかく数を揃える緊急戦闘機計画ってのもあって、こちらでは高価だからってターボジェットエンジンさえ諦めて、原始的で構造の簡単なパルスジェットエンジンのアルグス As 014V-1飛行爆弾のエンジン)を積んだ戦闘機を計画しており、これに応じてフォークト博士はP 213を提出する。

213image01.jpg 213image02.jpg

画像はZarkov Modelsからの引用。Roman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズからのリリース。
なんかもう、すごい悲しい感じのする戦闘機。
一応尾翼はあるけど垂直尾翼はなくて逆V字の水平尾翼で方向安定性を兼ねるつもりだったようだ。一応、排気ノズルの方が尾翼より後ろにあるので尻が燃える問題は解決した。
キットは48分の1で定価4.75ユーロ(約600円)となっている。

商品直リン
http://zarkovmodels.com/en/?pid=789

各社それぞれ悲しい感じの計画案を出してきたパルスジェットエンジン戦闘機計画だったが、よく考えてみたらパルスジェットエンジンって、前進する風圧で吸気するんで自力では発進できない(だからV-1爆弾はカタパルト発進か空中発進する)。もしこれが完成してもそれを発射するカタパルトを新たに作るか、あるいは空襲が始まったら母機が抱いて離陸して空中発進するしかなく、V-1の発射さえ空襲で不可能になりつつあるのにそんなことができるわけもなく1944年末には計画そのものが消えた。

その後、リヒャルト・フォークト博士はP 214、P 215とP 212の改修案を設計したがもちろん試作もできるはずもなく戦争は終わった。
戦後、フォークト博士はドイツの優秀な技術者を西側連合国に引き込むペーパークリップ作戦によってアメリカへ渡る。
博士はアメリカでアメリカ空軍、ボーイング社の技術者として働いたが、航空界への最大の貢献は翼の先端を折り曲げることで翼端の空気の流れを整形し、飛行性能を向上させるウィングレットの研究であった。このアイデアは現在でも多くの長距離旅客機で採用されている。
稀代の珍機、左右非対称機の開発者であったフォークト博士の残した最大の功績が長距離飛行の航続距離改善というのはなんだか意外な気もするが、博士が戦時中にも延々と戦後のために巨人旅客飛行艇を設計していたことを考えると、こちらの方が当人にとって希望する名の残し方だったのかも知れない。

1979年、異色の航空技術者リヒャルト・フォークト博士はカリフォルニア州サンタバーバラにおいて心筋梗塞により84歳で死去した。 現役引退後は、転覆しない安全なヨットの設計などを行っていたそうだ。



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローム・ウント・フォス_P.212
https://en.wikipedia.org/wiki/Blohm_%26_Voss_P_213

https://ja.wikipedia.org/wiki/リヒャルト・フォークト
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローム・ウント・フォス
それぞれ、各国語版を参考とした
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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その7

先日、草むらを歩いていたら背後でものすごい羽音がして思わず振り返ったところ、ほんの1~2メートル後ろでトビ(鳶)が獲物をかっさらって地面スレスレに飛び去る場面に出くわした田舎住まいの筆者がお送りする世界のカードモデル情報。

ブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークト博士のオモシロ飛行機終末旅行もそろそろ終盤。今回は、あまり知られていないが左右非対称機と同様にフォークト博士が力を入れていた無尾翼機とその関連機体について。

最初に紹介するのは前回のP 194からまた数が跳んで、 P 208
これは、つい最近Orlikからキットがリリースされている。と、いうか、もともとこのキットの説明をしようと思ったら関連事項が膨大になりすぎたのが当シリーズの発端なのであった。

29093_rd.gif

Orlik公式ショップからの引用で、P 208。なぜかgif画像だが別にアニメーションしたりはしない。
うーん、カッチョいい。
これは、別にノリで制式採用機を決めるウーデット(1941年11月17日に自殺)にアピールするためにカッチョ良さを追求してったらこうなったわけではなくて、

・頑丈な連合軍航空機を撃破するためには大型機関砲の装備が必要
 → しかし、大型機関砲は主翼内におさまらないし、ポッドを吊るすのはロスが大きい。機首に集中するために双発にするのは運動性が低下する。
  →そうだ、推進式にすればいい。推進式ならジェット化もしやすい
   → どうせなら尾翼をなくせば延長軸でプロペラを回すロスも防げる
    → エンジンが後ろにあるせいで重心が後ろに寄るので主翼は後退させる。このレイアウトは高速度性能も良くなる。
と、いう合理的な思考で導き出されたスタイルであった。

ただし、完全に尾翼をなくしてしまうと安定性が不足して操縦が目茶ムズになるので主翼の先に細く短い胴を取り付け、そこに垂直・水平を兼ねた尾翼がある。別の言い方をすれば、P.208はサーブ21のような推進式3胴レイアウトの左右胴体を極端に小さくし、尾翼中央部を外側へ移動した形式とも言えるだろう。こうすればプロペラ後流が水平尾翼に直撃してバタ付き(フラッター)が発生することもないし、いい事尽くしである。

フォークトはこのアイデアを確認するために、チェコのシュコダ・カウバ(Škoda-Kauba)というメーカーと連絡を取る。
このメーカーは航空大臣ヘルマン・ゲーリングの個人的知り合いだったオットー・カウバ(Otto Kauba)というエンジニアがコネで作ってもらったもので、無尾翼機やプッシャー機の研究をしていた(全くの偶然ながら当時日本で無尾翼機の研究をしていた萱場氏と名前が似ているのがおもしろい)。
シュコダ・カウバはŠkoda-Kauba V6という進式3胴機の尾翼を改修したSL6という機体を作成して飛行特性をテスト。結果ははっきりしないがダメダメだったらそこで試合終了だと思うのでそれなりの結果を得たのだろう。
余談だが、シュコダ・カウバは無尾翼機の欠点である安定性を補うために翼の後ろに小さい尾翼を追加するアイデアを盛り込んだŠkoda-Kauba V1という、なんかもうヤケクソ気味な飛行機も開発しており興味深いのだが、これを追っかけていくときりがないので今回はやめておこう。

そんなわけでシュコダ・カウバの協力を得て設計を完成させたP 208、Orlikのサイトには表紙画像しかなかったので、ポーランドの大手ネット通販ホビーショップ、super-hobby.comから画像を引用してキット内容を見てみよう。

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下段右の線画を見るとわかるが、めちゃくちゃカッチョいい。これだけカッチョ良ければ物理法則を無視して英国空軍の2つや3つ、軽く壊滅させられそうだ。
キット名の「P.208.03」というのは3種類考えられたP.208のサブタイプの一つで、エンジンがダイムラー・ベンツ DB 603を搭載したタイプ。他にユンカース Jumo 222を搭載する01、ユンカースJumo 213を搭載する02があった。

Orlikの P 208 はスケールは空モノ標準の33分の1、定価は31ポーランドズロチ(約1000円)となっている。
ところでこのキット、どういうわけか公式ページ直販ショップでもキット名が「Blohm & Voss BV P.205.03」と表記されている。P.205は高高度戦闘機Bv155の改修案だったようなので、表紙のP.208が正しい表記だろう。

せっかく推進式にしたら、これをジェット化したくなるのは世の常である。
というわけで次はP 208をジェット化したP 209
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画像はZarkov Modelsからの引用。
Roman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズからだが、なぜか48分の1、72分の1、100分の1と三種類のスケールでリリースされており、定価はそれぞれ4.75ユーロ(約600円)、3.75ユーロ(約450円)、3.25ユーロ(約400円)となっている。たぶん、中身は別設計ではなく縮尺変えだと思うが、商品画像が全部同じなので詳しいことはわからない。
P 209 は基本的にはP 208をジェット化したものだが、ジェット化に伴い胴体が完全再設計となっているのであまり共通点はない。
ぶっちゃけ、ジェット化でちょっとカッチョ良さ度は下がったな、というのが正直な感想である。

商品直リン(上から順に48分の1、72分の1、100分の1)
http://zarkovmodels.com/en/?pid=698
http://zarkovmodels.com/en/?pid=699
http://zarkovmodels.com/en/?pid=700

このころ連合軍の空襲が日に日に激しくなってきており、早急に航空戦力を高めるために1944年春、ドイツ航空省は「緊急戦闘機計画」を開始する。この計画で要求された仕様は、ジェットエンジン1基を装備し、できるだけ製造コストがかからず(町工場など、工作能力の低い工場でも生産できること)、性能はそこそこ高くて(最高時速750キロ以上)、戦略物資をあまり使用せず、未熟なパイロットでも操縦できる、というものだった。できるか、そんなもん!

この無茶振りに答えるため、各社はなんか思いつきか落書きみたいな飛行機をバンバン計画してすこぶる楽しいことになったのだが、ブローム・ウント・フォスは P 208 を単純にジェット化したのを P 209.01 とし、もっと取り扱いを容易にしたバージョンを P 209.02 の名前で提出した。

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同じく画像はZarkov Modelsからの引用でRoman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズから。
どうやら「未熟なパイロットに無尾翼機の操縦は難しいだろう」と尾翼を追加し、そしたらバランスが変わったんで後退翼を前進翼に変えてみた、ということらしい。
なんかもう、見るからに無理やり辻褄合わせたのがバレバレなやっつけ仕事で、どう考えてもエンジンの排気で尻が燃えるので没になった。
キットは48分の1、定価4.75ユーロ(約600円)となっている。
(その8へ続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローム・ウント・フォス_P.208
https://en.wikipedia.org/wiki/Blohm_&_Voss_P_209
その他の参考ページは最終回にまとめて掲載予定。

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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その6

新年あけましておめでとうございます。相変わらずのマイペースではありますが、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、今回からはブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークト博士の理想が地平線の向こう側へ行ってしまった計画機の数々を紹介。とはいえ、ブローム・ウント・フォスの計画機はどれも魅力的なのだが、全部に触れているときりがないのでカードモデルが手に入る機体に限定しよう。
計画機を示すブローム・ウント・フォス内のプロジェクト番号で若い方から始めると、まず最初にキット化されているのは寄生戦闘機「P 175」からになる(制式化された機体、例えば BV 141のP番号がいくつだったのかははっきりしない)。

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画像はZarkov Modelsからの引用。
Roman Vasyliev氏デザインの「Kampfflieger」シリーズの1機種だが、完成見本などはないのでキットについて語ることはこれ以上ない。
実機についてもP 175はWikipediaにも記事がなく詳しいことはよくわからないが、どうもアメリカ本土爆撃を狙った超長距離爆撃機に抱えられて行き、迎撃機が上がってきたら空中発進、迎撃機を片付けてまた空中収容されるというコンセプトだったようだ。
まぁ、もとの目的がおかしいんで、なんか変な形にまとまっているがそれほどぶっ飛んではいない。
スケールは32分の1で、定価は4.95ユーロ(約600円)となっている。しかし、母機がないのでP 175だけ作ってもなぁ、というのが正直なところではある。
(P 175は「空母 グラーフ・ツェッペリンで運用する艦載機だった」としている資料もあるが、どうみてもこいつを艦載機とするのは無理があると思う)

商品直リン
http://zarkovmodels.com/en/?pid=696

なお、175の前に、3胴でそれぞれの先端にプロペラがあるP 170のキットを以前にネット上で見かけたことがあるのだが、出所がよくわからなかったのでパスさせていただいた。
ちなみにP 170は、2000年ごろにリリースされた「Crimson Skies」というフライトシム風シューティングゲームに登場していた「Curtiss-Wright "Warhawk"」という機体とよく似ている、というか間違いなくP 170がWarhawkのモトネタなわけだが、このゲームには他にも左右非対称機も何種類か登場しており、フォークト博士の影響が感じられておもしろい。
あと、筆者がこのゲームの元となったボードゲーム版を所持しているというのは、さりげない自慢である。

お次は P 179。

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画像は同じくZarkov Modelsからの引用。
これもKampffliegerシリーズだが、やはりWikipediaなどに詳しい記述がなく、詳細や意図がよくわからない。
BV 141の戦闘爆撃型、といった感じなのだがBV 141の場合は視界を確保するために左右非対称としたものを、わざわざ戦闘爆撃機でこのスタイルにする必要性はちょっとわからない。P 177、P 178も非対称機なので、単にこのころフォークト博士の中で非対称ブームが来ていただけなのかも知れない。ナンバー1よりオンリー1を目指していいこうということか。
ちなみに主翼の先が前方向に丸く飛び出しているが、外側に引き込んだ車輪がここに収まる。車輪収納のために主翼の形を変えてしまうという発想が斬新だ。他にやりかたはなかったのか。
スケールは48分の1、定価3.95ユーロ(約500円)。

商品直リン
http://zarkovmodels.com/en/?pid=697

次は番号ちょっと跳んで P 194

P194.jpg

画像はE CardModelsからの引用で、Marek Pacyński氏デザイン。Pacyński氏はZarkov Modelsにもキットを提供しているが取り扱い商品には微妙に差がありP 194はE CardModelsでしか扱っていない。

以前にブローム・ウント・フォスが勝手に参加した急降下爆撃機コンペで破れたJu 57「スツーカ」がいよいよ旧式化してきたんで、求む! 新型高速急降下爆撃機! できれば戦闘機としても使えると嬉しい! という空軍の無茶振りに対し、フォークト博士がコクピットの後ろでプロペラが回るP 192みたいな、いや、ちょっとそりゃないでしょう、なオモシロアイデア集の1機として提出したのがこのP 194。
ちょっと上の画像ではわかりづらいが、コクピットのある短い方の胴体は後ろにジェットエンジンが埋め込まれており、レシプロ1発、ジェット1発の変形双発機である。やったぜ。これでレシプロ機とジェット機のいいとこ取りだ。
左右非対称になってるのは、別に面白いと思ったからではなくて、どうやらレシプロとジェットの特性の違いを左右非対称にすることで相殺しようということらしい。ちょっとうまくいくようには思えないが、Bv 141だってうまくいくようには思えないがうまくいったんだから、ひょっとするとうまくいくのかもしれない。
P 194はこのトンチを効かせたレイアウトで最高時速775キロの超すごい戦闘爆撃機を狙っていたが、新型高速爆撃機にはMe 262の戦闘爆撃機型が採用された。まぁ、順当に考えりゃそうなるわな。
キットはスケール33分の1、お値段7.95ドル。

商品直リン
https://www.ecardmodels.com/product/1-33-blohm-and-voss-p194-red-g-paper-model/

次回はいよいよ敗色濃厚となったドイツ空軍が提示した「緊急戦闘機計画」のために、我らがフォークト博士が高速空回りでデザインした「無尾翼軍団編」に突入!
(その7へ続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブローム・ウント・フォス_P.194
その他の参考ページは最終回にまとめて掲載予定。

今年からの試みでTwitterとの連携始めてみました。
よかったらそっちも覗いてみてください。

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2019年もありがとうございました。

2019年も残りわずかとなりましたが、本年も当ブログへお越しいただきありがとうございます。
今年は長年の懸案であったT-26をついにリリースすることができ、わずかながらもやっと一歩前進できたという感じです。

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ドーン。
展開図公開してますんで、よかったら作ってみてください。自分としてはけっこうデキがイイと自負してます。
次のデザインは順番ならT-28中戦車なんですが、もうちょっと効率的な進め方とか考えて大げさな期間かけずに進めたいと思います。思うにちゃんと進展報告しないから途中でどっか行っちゃうんだな。

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で、今年は製作の方もそれなりに進みました。上はMarek Pacyńskisi氏デザインの満州飛行機キ98(Zarkov Modelsで購入)。暇をみてチョコチョコ作ってるうちにここまで来ました。一見、完成してるように見えますが実はあと一息、ってところでピトー管をなんかにひっかけてヘシ折ってしまったので一応未完成です。

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うーん、カッチョいい。ピトー管なおしたらちゃんとした照明で写真撮って完成報告します。
製作過程も報告しようと思ったんですけど、「ちゃんと書こう」なんて余計な事を考えていたらなにも書かないうちに完成してしまいました。そんな気張らずに、来年は写真撮ってTwitterに放り投げるところから始めよう。

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こちらも同じく製作中のModelikの203ミリ榴弾砲B-4。うむ、これもカッチョいいぞ。カッチョいいは正義だ。
これ以外のHalinskiタイガーの足回りとか、GPMブルムベアの足回りとか、MODELIKコムソモレーツの足回りとかは改めて写真載せるほどでもないので省略。

さて、個人的今年の概観。
去年はMODELIKの急減速があり、そのまま大手がバタバタと店じまいしてしまうのではないかという懸念があったのですが幸いにも全体としては大きな動きはなし。MODELIKは19年は25ポンド砲とガントラクターのコンビでキットを出しており、旧作の再販は積極的に行っているので完全撤退というわけではなさそう。
個人ブランドの方では長らくリニューアル中だったEcardmodels.comが復活、続々とモデルが追加されており2020年は個人ブランドの盛り上がりに期待したいところ。
しかし個人的にはカードモデル系フォーラムが世界的に少し熱意が失われている印象を受けており、正直ホビー全体として先行きにはやや不安を覚えています。しかし、別段原因として思い当たる節もないので、単なるサイクル的なものであることを願うばかりです。

当ブログは今年で解説10年を迎えましたが、書きたいことを書く、というマイペースでなんとなく続けてくることができました。2020年もあまり力を入れず、立派な事を書こうなんて不遜な事は考えずに気楽に進めて行かせていただければと思います。
また、先程も書きましたが、2020年はポイポイTwitterに投げ込む感じで製作の進展なんかも積極的に発信していきたいとたくらんでおりますので、よろしければそちらも覗いてみてやってください。いや、インスタの方がいいのかな。まぁ始めてから考えればいいや。
それでは、令和の時代も全てのモデラーにとって実り多い年となりますように。
本年もありがとうございました。みなさん、よいお年を!

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カードモデルで辿るリヒャルト・フォークト博士の軌跡 その5

本年は無事に仕事納めがすることができて、どうもありがとうございましたな筆者のお送りする世界のカードモデル周りの情報。

今回はいよいよリヒャルト・フォークト博士といえばこれ、左右非対称機 BV 141 の登場。

Bundesarchiv_Bild_146-1980-117-01,_Aufklärungsflugzeug_Blohm_-_Voß_BV_141

こいつね(Wikipediaからの引用)

そもそも、なんでこんなことになったのかと言えば、決して伊達や酔狂ではなく、前回も書いた通り空軍が出した仕様が「単発三座で視界がめっちゃいい偵察機」というものだったからだ。
なるほど、エンジンが横にあるから前後方向への視界は抜群にいい。

実はこのアイデアは偵察機のために急に思いついたものではなく、フォークトは1935年にすでに左右非対称機の特許を出願している。この特許は別に「すごい視界がいい飛行機」ってわけではなくて、どうも単発エンジンのトルクモーメントをこのレイアウトで相殺するってことが目的だったようだ。
この辺の特許関係については、中川国際特許事務所さんのコンテンツ、「ネズ爺&ハテニャンの特許探偵団」の「Vo.17 非対称飛行機」で詳しく説明されている。このコンテンツ、他にも「Vol.11 フォンオハイン・ジェットエンジン」とか、「Vo.23 クリスティー式サスペンション」とかあって、ミリタリーメカファンなら見逃せない内容となっている。
この非対称機のアイデアが「単発で良好な視界」という条件にジャストフィットする、と気がついた時のフォークト博士の感激やいかばかりか。

BV 141 はトライアル相手のフォッケ・ウルフFw 189よりも速度、航続性能で優れていたが空軍省は「いや、ちょっといくらなんでもこれは……」とドン引きしてオーバーヒートの問題や油圧系のトラブルを理由にFw 189を採用してしまった。まぁ、気持ちはわからないでもない。でも、だったら「単発」っていう要求仕様はなんだったんだろうか。
しかし、ここへ来て酒と女とアクロバット飛行が大好きで政治力は雲の彼方に捨ててきたドイツ空軍きっての傾奇者(かぶきもの)、花のエルンスト・ウーデットが「左右非対称飛行機おもしれーじゃん! やってみようぜ!」とノリノリになってしまい、追加試作、さらに先行量産が命じられた。このひと、ほんと気分で空軍運営してるな。
ウーデットの後押しを受けてBV 141は試作3機、評価機(BV 141 A)5機、さらに改良型(BV 141 B)20機が製作されている。B型ではエンジンが強化されており、尾翼も右半分を削っているがこれはバランスの辻褄をあわせるためではなく後方銃座の射界を広げるためだったようだ(冒頭の写真はB型)。
とは言えいくらウーデットが傾(かぶ)いているからといって(「傾(かぶ)いてる」とBv 141が見た目に「傾(かたむ)いている」をかけています)、「おもしれーから」で量産機種を増やすわけには行かず、またB型で採用されたBMW 801エンジンがフォッケウルフ Fw190と被っていることもあり、生産は前述の通り8+10機で終了した(B型のうち2機は破損した以前の機体の再生機で、生産数は8+8の16機という資料もある)

Bv 141はおそらくブローム・ウント・フォスで最も有名な機体だが、カードモデルキットには恵まれておらず80年代ごろにFlyModelからキットが出版されたきりである。手書き時代のキットでデジタル再販されていないので現在は入手も制作もかなり困難だろう。
なお、FlyModelはFw 189もリリースしていたが、デジタル再販されておらずこれも入手は困難(Fw 189は1998年にMały Modelarzからもキットが出ているが、こちらも時期的に手書きだろう)。
もし、どうしてもFw 189のカードモデルが欲しいという場合にはウクライナOrel社のСу-12を購入し、「これはソビエト軍に鹵獲されたFw 189だ」と自己暗示をかけることでなんとかなるかもしれない。無理かもしれない。

Bv 141が凡打に終わった後、ブローム・ウント・フォスは主翼の取り付け角が電動でギコギコ変わる輸送機、BV 144(試作1機)とか、メッサーシュミットが空母艦載機として設計開始したけど途中で空母建造が中止になったんで高高度迎撃機にしようと思ったんだけどジェット機の開発でそれどころじゃなくなったんでブローム・ウント・フォスがなんとかしてよ、と言われて長大な主翼で1万6千メートルまで昇れる飛行機になりましたがもはやそれどころじゃなかったBV 155(試作2機)とかを作った。

かつて偵察飛行艇 BV 138 の採用でそれなりの存在感を示した飛行艇部門では、どういうわけかフォークトは軍用飛行艇ではなく戦後のルフトハンザに大西洋横断機を納入しようという腹積もりで巨人飛行艇ばかり設計しており(ドイツ軍に飛行艇・水上機の需要がなかったのかもしれない)、6発エンジンの巨人飛行艇Bv 22213機、さらに巨大(翼幅60.17 m)なBV 238を1機生産しこれらはドイツ軍で輸送機として使用された。

Самолет_БВБ

Wikipediaからの引用でBV 238。日本軍の二式飛行艇と比べると全幅で22メートル長く、最大重量で60トンも重いというとんでもない大きさだった(ただし最高時速ではBV 238の方が40キロほど遅い)。

ブローム・ウント・フォスではさらに翼幅80メートル、最大重量210トン、8発エンジンのP 200なんてのも妄想していたが、もちろん試作もされなかった。
ちなみにP 200は33分の1の空モノスケールでキット化すると完成全幅が2.4メートルになる。

戦後、ブローム・ウント・フォスの航空部門は解体され、ブローム・ウント・フォスは造船業に戻った。
なので、これでブローム・ウント・フォスとリヒャルト・フォークトのオモシロ飛行機物語は終わりなのかというとそうではなくて、むしろここからが本番である。
次回からは高性能を目指しすぎて大変なことになってしまったブローム・ウント・フォス計画機の数々を見ていこう。
(その6へ続く)



参考ページ:
https://ja.wikipedia.org/wiki/BV_141_(航空機)

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